夏の日の四人
結果としては史上稀にみるレベルの寒波を記録した冬が終わって。暖かいんだか冷えるんだかよくわからないまま、いつの間にか訪れていた春を見送って。バケツをひっくり返したような豪雨が続いた雨季が過ぎ去って久しい。
この世の終わりとでも思えるような猛暑日が続いている今年の夏である。
「なんでこう毎日暑いかなあ」
「夏だからだろ」
「花霞はもっとこう、ウィットに富んだ発言を心掛けるべきだと思うよ」
「お前に比べたら幾らか知的だろうよ」
「気の利いたことを言えってんだけどわかんないんだよねこの男は」
「橘花みたいに思いついたことを馬鹿みたいにすぐ口に出さないあたり気が利いてるよな俺って」
「本当に気配りの出来る人はそんなこと自分からは言わないと思うけどね」
「気を配る相手を選んでんだよ」
「二人とも格ゲーやりながらよくそんなに喋れるな」
「器用だよねえ」
麦茶を飲みつつ、のんびりと呟く咲花と天花寺。勉強会の名目で集まって、今はその休憩中。とはいえ勉強会の主役は咲花であり、俺と天花寺がメインで教え、橘花は茶々入れたり本を読んだり。
そんななか「格ゲーで花霞をボコボコにしたい」という要望に応えて相手をして、そろそろ一時間くらい経つ。だんだんと舌戦がメインになりつつある。
モニターの中では俺と橘花、それぞれが操作するキャラクターが蹴ったり殴ったり、それを避けたりと忙しく攻防を繰り広げている。
確かにゲームをしながら話すというのはそれなりに難しかったりする。会話にリソースを割き過ぎるとプレイが疎かになるし、逆もまた然り。ストリーマーやゲーム実況者、配信者というのは凄いよなあと感心する。
と、そんな思考を巡らせている間に、橘花が操作するキャラクターが怒涛のコンボ技を叩き込んでくる。
初撃をガードし損ねた結果、俺のキャラクターは体力ゲージを一気に削り取られてそのままノックアウト。敗北である。
「ふふ、どうだ参ったか!雑魚、ざーこ!!」
「お前三勝十六敗くらいでよくそんなこと言えるよな」
「負けた方がアイス奢りー」
「勝率だと俺のが上だろ。橘花が奢れよ」
「花霞、俺はあずきバーがいい」
「花霞くん、私はハーゲンダッツのバニラでお願い」
「ふざけんなお前ら」
せめて咲花は一緒に来いよ。
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