『古代のラジオ』 中
乗っているこの飛行機が、どんなものかは、まったく見えていなかったから、わかりません。
ただ、座席は普通自動車程度でありまして、運転席は、どうも、無さそうでした。
『どうも、アニーさんから、ご案内します。ヘレナさんから、あ、王国の教祖さまですよ。タルレジャ王国の創設者でもあります。もとは、火星王国の支配者でした。また、大統領は、現在、ハンナさんです。初代パルくんの、直径の子孫です。で、ヘレナさんから、ざっと話しておくように言われまして。はい。実は、時空間フィールドの実験をしていましたところ、どうやら、誤ってあなたの時代のあなたが立っていた一歩さきに、イレギュラーな、小さな穴が、一瞬、空いてしまいまして、そこに、うまい具合に、あなたが落っこちました。で、こちら現代に、うまく、落ちました。すみません。イレギュラーなもので、再現は難しく、場所の特定もなかなか出来なくて。はい。へたすると、あのカルデラの真ん中に落ちたかもしれないです。で、ヘレナさんが、お詫びの上、対応策をご相談したいと申しております。はいはい。』
『なんと。ききかいかいさねもりうどんげな。あなたは、どこにいるの? いまは、いつ? ここはどこ。』
『いちぶ、わかりませんが、アニーさんは、太陽系の惑星や衛星、その他の物質、偽物質から構成される、生きた宇宙生態コンピュータで、ヘレナさんが作りました。したがって、姿はありません。ここは、あなたも推定したように、あなたがいた時空の、8222万6543年と、125日前です。まだ、地球人類は、進化の過程にありまして、あなたみたいなのは存在しませんが、火星や金星出身の人類が、わが王国に住んでおります。地球の自然のなり行きを邪魔しないようにしながら、ヘレナさんは、生物進化の実験も行っております。はい。あなたは、まさに、貴重な、サンプルですから、大切にされますよ。なお、かつての地球超大陸は分裂し、さらに移動しつつあります。はいはい。』
『さ、サンプル。あの、お家に帰れますか?』
『そこんとこ、ヘレナさんと、ご相談ください。では、到着まで、あと30分、ラジオ・タルレジャ総合ちゃんねるをお楽しみください。』
じ〰️〰️〰️〰️🎵
『ぎょやははやまなしはくま。ちなちゃや。かは、バナタケ、ちゃ。じ〰️〰️〰️〰️〰️。さきほど、お知らせいたしました、なぞの通信については、発信源が特定され、発信者は保護されたとのこと。どのような発信者か、また、発見場所などは、明らかにされていません。タルレジャ中央大学の、マヤコ教授によれば、使われたのは、144メガヘルツ付近の電磁波で、王国では、研究用として使われるのみとのことで、通信装置も一般にはなく、不思議だと述べています。では、音楽をひとつ。懐かしいかたもいらっしゃるかもしれません。火星時代の伝説の歌手、パピナンの、『昼下がりの恋人』です。
〽️ はー、はー、はー、チュンチャナハヤヴレレやマィ〰️〰️🎵〽️
『これは、なんだろう。不可思議な音が連続してるけど、すごく、ハズレてます。ぼくは、絶対音感ないからな。でも、超アナログ。ちょっと、不気味。乗り物酔いしそう。』
まあ、無調音楽というところなのですが、旋律にはならない旋律は、非常に単純で、リズムはよくわからず、伴奏はハープのような音がする楽器だけで、弾き語りというところですが、どういう調弦なのかしら。
異界の音楽です。悪く言えば、めちゃくちゃな。
よく言えば、やはり、摩訶不思議な。
飛行機は、高速で、月明かりに浮かぶどんよりとした情景からは、どうやら海の上を越えたらしく、早々に、まだ夜の、どこかの空港に、垂直着陸したのでした。
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