『古代のラジオ』

やましん(テンパー)

『古代のラジオ』 上 (全3話)

『この、おはなしは、ギャグ的フィクションです。』


 ✳️ジャンル設定が、間違っておりました。修正しました。ラブコメ→童話など



 ラジオ好きな人たちは、いつでも、カバンにラジオを潜ませています。


 たまに、緊急事態の知らせが入るようなことも、まれですが、あります。


 大きな地震とか。


 なにかの間違いで、太古にタイムスリップしたときも、ゾニーの、SW-100を持っておりました。


 たぶん、あの、ほんの、一歩がまずかったのです。


 ぼくは、神戸を回ってから、さらに、赤穂市観光に行っておりました。


 定番の観光に加えて、最近話題の、赤穂コールドロン(カルデラ)の名残も見たいと思っておりました。


 でも、太古に行くつもりはありませんでした。


      🌋



 気がついたら、目の前に、黒い噴煙を上げる大火山がありました。


 あっけにとられました。


 あまりに、でっかいからです。


 噴火口といっても、これは、生きたカルデラです。


 ここは、そのカルデラのはしっこの崖の上、という感じです。


 阿蘇カルデラと変わらないくらいの規模がありそうでした。


 カルデラがあるならば、噴火がとりあえず、済んだあとなのでしょう。


 でも、お仕舞いではないかもしれない。


 まだ、噴煙はあちこちから、派手に上がっています。


 確かに、あのとき、あの一歩には、ちょっと違和感がありました。


 踏み出さなければ良かったのだろうな。


 なんて、呑気なこと言ってられますか。


 大体、ここが、太古だという証拠はないさ。


 何かの猛烈な気象現象で、どこかのカルデラに飛ばされたのかも?


 そうだ。


 ラジオ聴いてみよう。


 困った時は、ラジオさん。


 と、いう、わけで、ぼくは、小さな、でも、わりにずっしりとした、すでに時代からは取り残されている、SW-100ラジオさんを、カバンから取り出しました。


 小さいけれど、オールバンド・ラジオさんなのだ。今は、絶滅状態の、日本製ラジオさんであります。


 左側面の、メインパワーの緑色のスイッチをONにし、表面のパワースイッチを入れます。


 相生駅で合わせた周波数。


 なにも、聴こえない。


 スキャン・チューニングしてみます。


 所々で、ストップしたけど、みな、雑音ばかりで、放送ではありません。


 FMなら、どうかしら。


 ダメです。


 コミュニティ放送みたいなのも入らないです。


 短波なら、いかが?


 さっぱりダメ。


 これは、思ったよりも、非常にまずいかもしれません。


 突然に、行方不明になる人は、世界に、たくさんいるようだけれど、その中には、こんな理不尽な場合もあったのかしら。


 いやいや、こんなことが、実際に起こるはずはない。


 ならば、夢かしら。


 未来には行ける可能性があるが、過去に戻ることは、出来ないと聞いたことがあります。


 しかし、そのようなことが、起こるはずがありません。


 赤穂コールドロンが形成されたのは、8300万年前から、8200万年前あたりといいます。


 南北16キロ、東西21キロに及ぶカルデラの痕跡だとか。


 たしかに、それくらいはありそうです。


 これが、そのものかい?


 ちなみに、白亜紀末の大量絶滅があったのは、6600万年前あたりとか。


 それより前なら、まだ、恐竜さんがいるはず。


 お腹もすいたし、パンとお菓子と、水筒はあるけれど、ならば、食べられちゃう心配が先かしら。


 おお、スマホさんがあった。


 でも、案の定、圏外です。


 トランシーバーも、ありますよ。


 ちゃんと、局免もある。


 ツーメーターのほうが、遠くに飛びます。


 『メイン失礼します。こちら、J⚪⚪、⚪∇◻️。お聞きの局さんありますか。』


 しかし、なんべんやっても、反応なし。


 信号の確認もできません。


 カルデラの周囲に、植物があるから、爆発からは、時間がたってるのではないかと。


 ふと、思いました。


 とはいえ、ぼくは、植物はさっぱり分からないのですが、白亜紀は、温暖だったと考えられているようでしたが、たしかに、いまは昼間で、寒くはないです。


 しかし、夜は分からない。


 なにかと、夜は危険なものです。


 しかし、夜になると、星が出ます。


 すると、多少、なにか分かるかもしれません。


 なんて、呑気なこと言ってられませんよね。


 来たんだから、帰れるはず。


 ぼくが、出現してしまったあたりを、ぐるぐると回りました。


 なにも、起こりません。


 ああ、しかし、この光景は、呆れるばかりです。


 太陽の位置からしたら、たぶん、お昼は過ぎていて、夕方が近いのではないでしょうか。


 腕時計では、11時なのですが、たぶん、関係がないかと。


 それに、日本列島がいまの形になったのは、二万年くらい前でしたが、まだ、大陸と一部はくっついていたようで、一万三千年から一万二千年前頃には、ほぼ、現在のようなかたちになったような。


 だれも、見たわけではありません。


 ま、それは、いささか、桁外れに新しい時代です。


 でも、それが、なんの役に立つでしょうか。

 

        🌇

 

 やがて、夕闇が迫ってきました。


 太陽は、素人目には、さして変わりはないような。


 しかし、次第に現れてきた星空は、なんだか、妙です。


 夕べ神戸の山奥でみた星空とは、いかにも、違いますような。


 ぼくは、スマホを空に向け、内蔵の特別なソフトを稼働させました。


 空をスキャンすると、何時の星空か、教えてくれます。


 スマホさんは、しばらく考えて、回答を出しました。


 『測定範囲外。すいまへん。』


 『あらまあ。まあ、答えが出たようなものかあ。』


 これは、やはり、非常にピンチです。


 昼間のうちに、ぼくが現れた辺りを、いったり来たりしましたが、なんにも見当たりませんでしたし。


 さらに………


『うあお〰️〰️〰️、』


 とかの、怪しい声が響きだしました。


 恐竜さんでありましょうか。


 ああ、まさか、太古の時代で、人生、終わるとは。


 さすがに、想定外です。


 『そうだ。ラジオ。もう一度、ラジオ。』


 この時期に、同じような電離層があるかどうか、わからないけど、夜になったら、聞こえるラジオ放送があるかも。

 

 と、思いながら、ま、馬鹿馬鹿しいとは、思いました。はい。


 でも、ラジオさんのスイッチを、再度入れました。


 中波をスキャン。


 じ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️。ぷす。


 『TBC.TBC.こちらは、ラジオ・タルレジャ。タルレジャ王国から、世界の皆様に、お送りいたします。』


 『な、な、なんだこれは。タルレジャ王国てのは、たしか、現代にもある。え?

なんで?』


 『みなさん、ハロー。この放送は、あなたの言語に自動的に変換されて聞こえます。まず、おしらせです。今日、数時間前に、144メガヘルツで、呼び出ししたあなた。かなり遠かったし、短時間だったため、場所がまだ、特定できませんでした。宇宙衛星を、高感度受信体制に設定いたしました。もう一度、生きているなら、コールください。繰り返します。』


 『おわ。なんかわからないが、コールします。よいしょ。あら。よし。あああ、こちら、J⚪⚪⚪∇⚪、応答願います。』


 すると、なんと、無線機から声が来たのです。


 『はあい。こちら、アニーさん。場所特定しました。助けが必要ですか。』


 『アニーさん? もちろん。もちろん。助けてください。遭難中です。助けて。どうぞ。』


 『はい。では、ちょっとお待ちください。』


 やれやれ、と、思いました。


 しかし、なんだか、すぐ後ろに、荒い鼻息を感じました。


 ちらっとみれば、でっかい目があります。


 暗闇のなかで、明らかに、ぼくを狙っています。


 『うわ。たんま。逃げる。』


 ぼくは、たぶん、そいつの股の間を、走り抜けました。


 なんで、音もなく、やって来たのか?


 びゃわ〰️〰️〰️〰️〰️。


 と、何かが、頭の横をかすめました。


 たぶん、手でありましょう。


 山から、下向きに走ります。


 天は、火山の炎を反映して、赤く輝いております。


 『どぎゅわ〰️〰️〰️〰️〰️。』


 それは、叫びながら、なにやら、楽しそうに、追いかけてきます。


 早い。


 また、なにかが、背中を、かすめます。


 『こりゃ、だめだあ。ああた、喰われて終わりか〰️〰️〰️〰️〰️。』


 と、目をつむりかけた瞬間、ぼくは何かに掴まりました。


 空に引き上げられると、そこは、飛行機のようなものの、中だったのです。


 『いらっしゃいませぇ。アニーさんです。お楽しみの最中でしたら、ごめんなさい。』


 『いえ。しにかけでまじだ。喰われる寸前だったかと。』


 『いや、あいつは、人間は、食べないです。じゃれついてただけね。たまに、殴られて、大ケガする場合もありますが。』


 『はああ。なにがなんだか。』


 ぼくは、絶句しました。


 『まあ。まず、王国に飛びます。あとは、それから、お楽しみ。』


 それで、ぼくは、さらに、訳のわからない場所に運ばれましたのでありました。


 

           つづく


 


 


 

 

 


 


 

 


 


 

 

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