第6話 紛い物たちの狂騒劇

 このお話を読んでいる方々にお伝えしなければならないことがあります。今まで語ってくれた2人の神は、とても楽しい話をしてくれた。神々の集会でも毎度人気のある2人だからね。


 でも、私がお話するのは醜い人間のお話。沢山の神にブーイングをくらい、2度と話すもんかと決めた話です。


 ―私の国の子供たちは、何不自由なく暮らしていました。当然のように、他の国と同じだけの資源があって、他より少し科学力が高くて。


 ある日のことでした。子供のひとりが、労働力としてクローンを作ろうと言い出しました。もちろん、他の子供たちは止めたし、私もダメよと声をかけました。でも、その子は諦めませんでした。


 そこからすぐ3年の時が経ち、クローンを作ろうとした子が、自費で大きな研究所を建てました。表向きは生物のDNAの研究と題し、確かに新しく、安全な移植手術の方法を考案し、医療の現場に沢山の革新をもたらし、多くの人が助かりました。しかし、その裏ではこっそりと患者の遺伝子情報を集め、クローンを作っていたのです。


 そして長年の研究で、自由に、沢山のクローンを作る術を編み出してしまったのです。


 もちろん、国の子供たちはそれをやめて、生み出したクローンを自由にするよう要求しましたが、悪用としようする人もいて、次第に泥沼の政治戦争が始まってしまいました。


 その結果、勝ったのは悪用しようとする人たち。彼らは、隣国と手を組みあるひとつのことを思いつきました。


 クローンを使い戦争ごっこをし、ギャンブルをしよう。と。


 当然そんなことは許されません。私は必死に止めましたが、相手が悪かったのです。


 相手の国の神は娯楽と悦楽の神。むりやり私を抑えつけ、ギャンブルを始めさせました。


 人造戦線と名付けられたこのギャンブルは次第に、国民全体に受け入れられ、誰もがこれを楽しむようになってしまいました。


 …正直、もう諦めています。私。


 このギャンブルに参加させられたクローンは、粗末な武器を握り、防具も付けず国を守るべしと必死に戦うのです。それを見て子供たちは楽しみ、お金を賭けてはお酒を飲んでいました。


 さらに酷いのは、クローンは例え勝って生き延びても、処刑されてしまうのです。そしたらまた新しく作って、戦わされます。


 あるクローンは母の為にと戦い、再開した母の胸の中で毒殺され、またあるクローンは培養不良で目が見えないことを利用され、沢山のクローンを処刑させられ、その後無理やり回復させられた目で、自分の手で沢山のクローンを、それも若い少年少女を模したクローンを殺す様子を見せられていました。


 ―これが私の国で行われている残虐非道な、人造戦線の実態です。話すことも無く、助けを求めるようにしたこの話は神々に受けいれられず、むしろ私が非難されました。


 皆さんは、どう思いますか?

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