第1話 盲目の少女は夢を語れない

一年に一度の神の集会。国を無くし、友神に保護されている私も、何とかこの集会への参加券だけは残し続けている。


そんなこんなで、集会は始まった。それぞれ皆、自分の国の子供たちの話を自由に話す。後二柱で私の番だ。


―さて、私の番。何の話をしようか?祖国を失い、隣国に保護されて軍人として戦う隻腕の英雄の話か、それとも全く関係のない一人の少女が異世界転移した話か…と、考えたけれど、一つ思い出した。私が見つけた、希望と夢を諦めた盲目の少女。今日は、あの子の話をしよう。


あの子に出会ったのは、いつも通りの仕事の日。世界各地を飛びまわり、死んだ子供たちの魂を導いた私は、最後に自分が今住んでいる国で一人の少女に出会った。大きなバンダナと両目を覆う布、ぼろぼろでみすぼらしい少女だった。


彼女はどうやら、元捨て子で今はヤクザの鉄砲玉として使われているらしい。あいつの国でこんな子が生まれるなんて考えたくもなかったけど、それでもいるんだからしょうがない。


私は取り敢えず、仕事を片すことにした。少女のいる部屋には、大人の死体が四つ程。それらの身体に、大鎌をすっと刺しこむと、魂がするりと抜けていった。そして、最後の魂を回収したときに、あの子と目が合った。


最初は偶然かと思った。そもそも、この子は目が見えていないはず。なのに、目が合ったように感じた。もしかしてと声をかけてみることにした。


(こんにちわ)


彼女は、無言で私を刺しに来た。結構容赦なく、ナイフでグサリと。が、手応えが無いことに気づき、彼女は落ちてた拳銃を撃ってきた。反動で転がって行った。


その時は彼女が気絶し、私は別件があったので立ち去ったが、その後もそんな感じの事が頻発するようになった。


そしてそんなある日のこと、一段と過酷な殺人現場で魂の回収をしている時に、彼女は警察に保護された。ようやくだ。


そこで私は決めた。そうだ、この子に色んなことを吹き込んでやろう。私の声が聞こえて、見えてしまうなら、この子を新しい私の巫女にして、信者にしてやろう。と。


しかし、その考えが甘かった。非常に苦労したのだ。


まず彼女に私が何者か説明した。無視された。


次に保護施設に入った彼女に、他の子と遊んでみたら?とか言ってみたり、勉強を教えたり、護身術を教えようとした。無視された。


そう、マジで何しても彼女は私を無視した。驚くほど知らんぷり。しかも、その事がたまたま遊びに来てた別の神にバレて普通に怒られた。


そんな感じの生活が1ヶ月。そこで転機が訪れた。


彼女に、友達が出来たのだ。その子はとっても明るく、優しい女の子だった。盲目の彼女は、次第に心を開いていった。


これは好機だと私は彼女に声をかけてみた。無視された。なんでぇ?


が、それは無視しているわけでなく、どうやら私が見えず、声が聞こえなくなったかららしい。私は、とっても嬉しくなった。


そこから私は、こっそり彼女を守ることにした。といってもできることは無いから、見守るだけ。それでも、また彼女が私を見つけてくれるまで、一緒にいようと思った。


―それが、私が見つけた最後の信者候補。まぁ元の私の子供たちが少しづつ信者を増やしてくれているみたいで最近はちょっと調子がいいんだけれど、あの子を逃したのが惜しいなぁってなってる。以上、私の見つけた子のお話でした。

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