第6話
「もう一度プレゼンををすることは出来ませんでしょうか?」
「君か……」
俺は今生徒会室に行き、再び生徒会長と話している。
「昨日のあれを見せられてわな……、正直君に出来る事では無いと思うのだが? それこそ部長から説明させればいいことだろう」
生徒会長は昨日の醜態に対して苦言を呈している。
生徒会長の言う通りだ。けれど、俺はもう逃げることはしない。昨日、あの公園で決心したのだから。
「確かにそのとおりです。けど、もう一度俺に機会を与えてくれませんか?」
もうプライドなんてどうでもいい。俺は生徒会長に訴えかける。
「そこまで言うなら断らん。でも次はないぞ。昨日の二の舞いは勘弁してくれ」
呆れ半分、懐疑心半分といった感じで答えた。
生徒会長の反応も仕方ないといえる。昨日の醜態はそれほど酷いものだったから。
けれど俺も昨日よりも大きく成長したと思っている。また勘違いや自己満足ではないかという疑問が湧き出てくる。
しかしそれを昨日の出来事の記憶が塗りつぶしていく。
俺は一人じゃない、この苦しみを分かち合ってくれる人がいる。それだけで緊張がほぐれていく。
昨日と全く同じ状況だ。しかし、昨日のような体が震えるような緊張はない。
一度大きく深呼吸をする。
息を吐き終わる頃には緊張は全て吐き出せたようだ。あの時の緊張はない。
「それでは始めさせていただきます」
そうしてプレゼンの口火は切られた。
プレゼンは昨日と違って、スラスラと進行している。正直自分でも驚いている。
まるで他の誰かが自分を操作しているかのように、自然と口から言葉が溢れてくる。
そうして滞り無く、プレゼンは進行していく。
「それでは最後に質問はありますか?」
「それじゃあ私から質問だ」
プレゼン中はピクリとも表情を変えなかった生徒会長から質問が投げかけられる。
「企画自体は大変素晴らしいものだった。これはもう質問ではないが、昨日の君とは大きく変わっていると思ってな。何が君を変えたんだ?」
「何が変えたですか……」
質問に少し思考を巡らす。何が俺を変えたか、それは容易に説明できるものではない。けれど、一つだけ言えることがある。
「それは……。失敗を恐れるなって、友達が言ってくれて。そこから私は一歩を踏み出せるようになったのかもしれません」
そう言い切ると生徒会長は意外そうな顔をしていたが、すぐに納得に至ったのかすぐにさっきの調子に戻った。
「そうか……。いい友を持ったものだな。すまない。話が脱線してしまったな。私からはこれ以上言うことは無い」
「それでは私からも以上となります」
そうして、無事にプレゼンは終了した。
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