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 遥か極北、氷の棺の中から目覚めた怪物は、そうして一人ぼっちの旅を始めました。


 でもどれだけ進んでも見えるのは雪景色ばかりで、ちっとも面白くありません。その上、吹いている雪が目に入って邪魔でした。体もあちこち欠けたりするので、動くのも大変です。


 それでも怪物は歩き続けました。ずっと長い間、少しも眠らずに歩き続けました。けれど、やっぱり景色は変わりません。ただただ白いだけなので、怪物も段々飽きてきました。疲れ知らずの体とはいえ、怪物も面倒になったのです。


 ばたり、と雪の上に倒れ込んで、怪物は瞼を閉じます。雪はふかふかのベッドのようで、とても冷たいけれど、怪物にはもう起き上がる気力も湧きません。


 でも、その時でした。雪の上に倒れた怪物を、小さな女の子が見つけます。


「あなた、だぁれ? どうして、そんなところに倒れているの?」


 怪物は頭を捻ります。そもそも、少女が何を言っているのか分からなかったのです。


「うーん、裸だし寒そう! ねね、私の家に来ない? 広くはないけど、ここよりあったかいよ!」


 差し伸べられた手と少女の顔を交互に見て、怪物は困りました。全く意味がわからなかったのです。なぜ手を突き出しているのかも分からなかったのですが、とりあえず握ることにしました。


 その時だったのです。

 その時に怪物は生まれて初めて、温もりというものを知ったのです。



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