∞1∞

∞∞∞∞∞


 その少女は、ずっと氷の中にいました。


 寝ても起きても冷たい氷の中、音もしないし目も見えない。普通なら嫌だと思うのかもしれないけど、少女にとっては当たり前のことでした。冷たいのが普通、寒いのが当然。氷の棺の中で、少女はずっと眠り続けていたのです。


 けれど、ある日のことでした。きっかけは分かりません。なぜそうなったのかはとんと思い出せないのですが、少女は氷から抜け出すことができました。最初はびっくりした少女ですが、初めて見る外の世界に、だんだんドキドキし始めたのです。外の世界には何があるのだろう。どんな世界が広がっているのだろう。少女は気になって気になって仕方なかったのです。


 だから、少女は歩き出しました。雪が体に吹き付けるのは寒くて堪りませんが、幸運にも少女は寒さに慣れています。人っ子一人いない氷獄の銀世界の中、少女は孤独な旅を始めたのです。


∞∞∞∞∞

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る