手紙
「多華子ちゃん!多華子ちゃーん!」
子供のような声をあげて大家さんが嬉しそうに走ってきた。
「どうしたんですか?!大家さん」
「ほら、読んでみなさい!」
大家さんが封筒を渡してきた。綺麗な字で宛名、宛先が書いてある。
「大家さん!これって…」
笑顔の混じった驚き顔をした多華子を見て、大家さんはこくりと頷いた。
封筒を開けると中には手紙と写真が入っている。
「こんにちは、大家さん。ご無沙汰しています。突然出ていったことについてはご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。私はつい最近、地元で会社を起こしました。一つお願いがあります。大家さん、どうかこの手紙を多華子さんにも渡してください。
こんにちは多華子さん。あなたに話をして頂いた日からしばらくの間、自分はどうするべきか考えていました。私の最終的な夢は自分の会社を持つことです。しかしまずは会社に入らなければいけないのではないか?と思っていたのです。しかし多華子さんと話したことで迷いを振り切ることが出来ました。本当にありがとうございました。
そのうち、もう一度ゆーかり荘に戻ってきます。その時にまたたくさんお話したいです。その時まで大家さん、多華子さん、皆さん、どうかお元気でいてください。
浜井佑」
メンバーと撮った写真だろうか、笑顔の浜井の姿があった。多華子は嬉しそうな、安心したような、そんな顔を浮かべている。大家さんもそんな多華子をニコニコしながら見ている。
「…本当に良かったです。見てください!彼の楽しそうな顔。…本当に良かった」
「そうね、だから言ったでしょう。あなたが他人事みたいに考えずにしっかりと答えたからこその、彼の今の姿なのよ」
多華子は力強く頷いた。そしてまた笑った。
「私、額縁買ってきます。この写真飾らなきゃ」
多華子の後ろ姿を見て呟いた。
「これなら、大丈夫そうね」
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