元刑事と江戸っ娘

「よぉカオル、久しぶりだな」

「かおりだよっ!相変わらずの格好つけ野郎だねっ」

「はっ、カオルこそ相変わらずの喋り方じゃねぇか」

木下は相変わらずのサングラスにソフトリーゼント、香はやっぱりちょんまげだ。

「行っちゃったね、佐藤。浪曲弾きになるんだろ」

「まあな…、そんなとこだ」

「頑張ってほしいよね!」

「どうだろうな、夢を叶えるのは難しいぜ」

「あんたの夢ほどじゃないよっ」

一見噛み合わなそうな二人だが…


ポツ、ポツ、ポツポツポツポツ


二人揃って上を見上げた。


ザァーーーーーーー


「…あ、雨じゃねぇか!おいカオル!」

「かおりだよっ!」

そう言いながら香は屋根の下に行った。木下は雑誌束をすでに持っている。

「投げるぞ!おらっ」

「はいよ!」

パシッ

「おら!」

「はいよ!」

パシッ

「おら!」

「はいよ!」

パシッ

「ふぅ…」

息ぴったりの二人は同時にため息をついた。

「雨にカオルか…、なかなかの組み合わせだぜ」

「はあ、それはこっちのセリフだよ…」

隣同士だが目を合わせることなく、二人は空を見上げていてた。


「相変わらず不思議な二人だねぇ」

そっと見ていた大家さんが呟いた。

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