第9話 陽子視点 どスケベ心

 おねえのことが、ずっと好きだった。その大好きな気持ちが、普通の家族愛じゃないってことに気付いたのは、ちょっと遅かったけど、生まれてからずっと、おねえのことが嫌いだったことはない。

 おねえはずっと、私のものだった。私が声をかければいつだって、何をしていても振り向いてくれた。私がお願いすれば、何より私を優先してくれた。

 そうじゃない時がなかったわけじゃないけど、でもそれは特定の誰かではなかったから、全人類の中で私だけがおねえの特別で、おねえは私のものだった。


 恋愛感情がないのはわかってた。私はまだ子供だし、おっぱいもない。でもおねえは恋愛自体に興味もないみたいだったし、友達はいてもすごく親しい人もいないみたいだったから、私は安心しきっていた。

 いつか私が大きくなって、おねえに意識してもらえるようになって、そしたら告白して、家族なだけじゃなくて恋人としてもずっと一緒にいるんだって。もし告白できなくても、家族としてはずっと一緒にいられるんだって。そう思っていた。


「明日は……デートだから」


 だけどそんな希望は、当たり前のように崩された。おねえは私にだけ特別そうだけど、私に以外にも優しくて、おねえが好かれることは想像できた。でもまさか、恋人になるかどうかまでそんな簡単に決めてしまうなんて。

 おねえは押しに弱いけど、本当に嫌だったり無理なら暴力に訴えてでも断る手の早さと芯の強さがあるのに。


 突然のことに私はとにかく混乱していて、私の思いも伝えてしまったし、信じてもらえないのも悔しくて、私より先に告白されたのも嫌でたまらなくて、大人になりたいと思ってたのに、そんなどころじゃなくて、幼稚園児みたいにめちゃくちゃ我儘を言ってしまった。

 結局おねえはそれを形だけ受けて実際にはしなかったけど、口に出してしまってから、これは言ったら駄目なやつではないかと自分でも思っていた。


 それでもおねえは、本当に優しくて、私に呆れたりしててもその目の中の優しい光はいつものままだった。私の事、嫌いにはなってない。

 おねえは小梅さんと別れなかったし、私のこともばれてしまったけど、それでも、まだ、その目は私を見捨ててない。だから諦められない。


 小梅さんを見て、勝てないって思った。私と違って、大人で、おっぱいも大きいし。おねえのことが好きなのが全身から伝わってくるのに、全然私と違って攻撃的じゃない。私とどっちがいいかって聞かれたら、そんなの勝てるわけない。

 それでも、おねえはまだ小梅さんのことを特別に思ってないみたいだから、それだけが救いで、私は、諦められない。

 と言うか多分、おねえが本気で誰かを好きになっても、今、諦められる気がしない。だっておねえのこと好きで、好きすぎて、おねえのこと以外、なんにも考えられないもん。


 おねえを見てたらえっちな気分にもなるし、ドキドキして、着替えさせてもらう時もいつもドキドキして、ちょっと肩に触れられるだけで気持ちよくて、終わってからいっつも我慢できなくてしちゃうくらい、大好き。


 おねえは私の下心に気付いてしまったから、もう朝すら起こさないって言われてしまったけど、仕方ない。

 朝起きるの苦手って言うのも本当だけど、朝起こしてもらった時におねえの顔を見ながらお布団の下でちょっとだけ触るのも日課にしていたから、そう言うずるはもう駄目ってことだもんね。


 これから、おねえに認めてもらえるよう頑張るんだ。そう決めて、お風呂に入る時、またどきどきしてきた。

 昨日はおねえが小梅さんと別れたと思って安心して、一昨日のおねえとのキスを思い出してお風呂に入る前にいっぱいしたからお風呂は最後だったし普通に入ってすぐ寝た。

 今日はおねえが別れてなかったし、どうやっておねえに意識してもらえばいいのか考えてたら全然答え出てないのにお風呂の時間になってしまった。


 おねえの次のお風呂は、脱衣所にはいるだけでちょっとおねえの匂いがする。それだけで目が覚めるみたいにドキッとする。洗濯機をのぞきこむと、おねえのシャツが見える。

 毎日してる訳じゃない。申し訳ないって思ってる。それでも、ドキドキして、もうずっとばれてないのもあって、私はおねえの下着を手に取ってしまった。


 だって、おねえ、キスさせてくれて、胸も触らせてくれた。あれを思い出すだけでいつまででも興奮しちゃうんだ。こういうのも、家族だからのずるだってわかってる。でも、これが最後だから。前にした時は、最後って思わずにしちゃったから、これが本当に、最後だから。

 私はおねえの下着を持ってお風呂場で、シャワーを流しながら最後のお別れをすることにした。


「っ! はっ、はああああ!?」

「……」


 もういきそう、ってなったところで突然ドアが開いて、おねえがたっていた。おねえがいる? 見てる? 私がおねえで気持ちよくなってるとこ見てる!?

 と混乱する私を無視して、おねえはドアを閉めてしまった。


「……え?」


 な、何にも言わないの? 今度こそ、見放されちゃった?


 さーっと性欲が散っていく。なんてことをしてしまったのか。私は後悔で泣きながら、おねえの下着を手洗いして普通にお風呂にはいった。


 それからおねえの部屋を訪ねて懺悔した。おねえの目はまだ、他人を見る目になってないから。私はまだなんとなるはずと祈りながら、おねえに謝った。

 謝りながら、私の欲望をさらけだしている事実になんだかぞくぞくしちゃって、呆れた目をむけられるのもなんだかドキドキしちゃってきたけど、反省しているのは本当だ。


 おねえは優しくて、どこまでも私を特別扱いしてくれる。だから勘違いしちゃうのに。だからおねえを嫌いになれるわけないのに。そんな風に逆恨みして、一生とじこめて私のものにしちゃいたいくらいなのに。


「我慢できそう?」


 なんて風に、やめろって言うだけじゃなくて、私がちゃんとやめられるか、性欲のことまで気にかけてくれる。

 そんなに優しくされたら、おねえもするって聞いただけで想像して興奮してしまっているのに、もう、我慢できないにきまってる。

 今すぐしたい。おねえを思ってするところ、おねえに見られたい。馬鹿にされてもいい。おねえに、私をみて、ちょっとでもそう言う気持ちになってもらえたら。もしかして、おねえとエッチなことするだけなら、できるんじゃないか。そんな風にずるいことばかり考えてしまう。


「……部屋を汚さずに、静かにするなら、まあ、いいよ」

「えっ!? ほ、本当に!?」


 おねえは、優しすぎる。だから私みたいなのに、つけこまれてしまうんだ。そう思いながら、つけこんでしまう。


 おねえは私をうっとうしそうに、今すぐしたい私を邪魔そうに、ゴミ箱の場所においやっているけど、それで興奮がおさまることなんてない。むしろ、あのおねえにそんな顔をさせるのは私くらいだろうから、よけいに興奮してきた。


「お、おねえ、ごめんね。ごめん、見て、見て、もっと、見て」

「……」


 目を細めて、冷たいくらいの顔をするおねえ。テスト前に邪魔して投げ飛ばされた時みたいな顔。その瞬間で終わりじゃなくて、今、そのままずっと私を見てる。ぐっと閉じてるおねえの口。あの口とキスした。熱くてどろどろの舌とくっつけた。

 少なくとも今この世界でその味を知ってるのは私だけなんだ。そう思うとたまらない優越感がわいてきて、ざまあみろって思ってしまう。小梅さんなんて、どんなに素晴らしい人でも、おねえの妹じゃない。おねえの妹は、私だけなんだから。

 おねえのおっぱいに初めて触ったのも、なめたのも、私が最初なんだ。私の、私だけのおねえなんだ。


 ああ、見られてる。おねえの前で、馬鹿みたいに気持ちよくなってる。その事実がどうしようもなくて、ただ一人でおねえを想像するよりもずっとずっと気持ちよくて、私は普段以上に性欲を爆発させてしまった。

 自分の部屋に帰るのもつらかったけど、最後に私を心配してきたおねえの手の平の感触が気持ちよすぎて、もう一回したかったから頑張って部屋に帰った。


 翌日、案の定というか寝坊してしまった。初めておねえが起こしてくれないのに、いつもより頑張ったんだから、そりゃあそうなるだろう。今日の夜はちゃんとセーブしないと。

 私はおねえをどうやって私を好きにさせるか、全然何にも決まってないのに、どうやって今夜はおねえの前で気持ちよくなるか、そればかり考えてしまっている。

 それを自覚しても、どうにもならない。今日はもう、お昼休みにトイレでするのはやめておこう。朝起きてできなかったからもうすでに気になるし、おねえと選んだ下着を着てるからずっと体が反応しちゃうけど、おねえの前でした方が絶対気持ちいい!

 私は下着がぬれてしまわないよう、おりものシートを貼りながら夜のことを思った。

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