5話

「はぁ……」



これは、非常に頭が痛い問題だ。

考えたくもない。

だが、放置はできない。


俺は、目前に積まれた書類の一枚を、手に取って見る。



「税金……」



会社に勤めていた時は、気にしたことがない。

せいぜい、11月とか年始とかにある年末調整が面倒! と思ったぐらいだ。

それが統治をする! となった瞬間、目の上のたんこぶに早変わり。


いったい、どうしたらいいんだぁ!




仕方ないので、まずwikiで検索してみる。

税金の一覧を。そして驚いた。


ん? 意外と少ない?


思ったよりも、検索結果を占める文字が少ない。

良く聞く、国税と地方税。

これは、大まかな区分分け。

この町風に言えば、バートニア王国の税とパンタラント伯爵家の税。


その後は、所得・資産・消費の種別。

これは一旦無視。

細かい単語はあれど、たったこれだけだった。


んん? でも、これだと判断できねぇ……

反対だな。税金の使われ方を知ってから、どんな税金が必要か、考えるべきか。



結果はこちら


======================================

福祉と保険

教育と文化

労働と経済

生活環境

都市の整備

警察と消防

企画・総務

公債費・税関例経費など

======================================


なるほど?

これを基準に、必要な使用目的を選定っと。

国へ支払う分は、確実に確保しないといけない。これは必須。


小1時間考えて、俺が必要と思ったのは以下。


======================================

国税

教育費(保留)

都市環境整備費

リスク対策費

パンタラント運営費

======================================


まずは、将来のために教育を実施したい。

この世界、例に漏れず識字率が低い。

識字率を上げるだけでも、大分できることが増える。

これは、町主導で行うべきだろう。

ただ、一つ思い出したことがあるので、一旦保留で。


次、生活環境と都市の整備を一つにまとめて、都市環境整備とした。

城壁の補修やその賃金支払い、他にも墓地の管理など。

町を維持するために必要な費用だ。

これはこれで重要度が高い。

城壁がなければ敵に蹂躙され、死体を放置すると疫病の元になってしまう。


それから、リスク対策費。

これは、警察と消防に税関例経費などを、混ぜた。

今、町はダンジョンの資源で潤っている。

町外からの支援は、あまり必要としていない。

小麦とかの主食は必要だが、ぶっちゃけ農地の復旧もほとんど終わっている。

一時的にしのげれば十分だ。


だから、外から入ってくる物に関する税、関税は不要と判断。

しかし、関税がなくなったことで、外国や他領から低価格な不法薬物などが、入ってくる可能性が出てくる。

対処のためには、警備費用が必要だ。


ついでに、災害もあるだろう。

巨人のような、ダンジョン災害も考えられる。

ここまで含めた、リスク対策費だ。


最後、パンタラント運営費。

企画と総務の名前を変えただけ。

税金の管理に、イベントの開催など、町の活気を維持するために必要と思う。

それから、貴族の見栄だな。




上記以外は不要と判断。


福祉と保健は、今までになく、治療院に支払った経歴もない。

そのため、領民の自己負担。

日本の保険は手厚い! と聞いたことがあるので、海外と同じ感じかな?


文化は……必要か悩みどころ。

重要文化財とか、残す気持ちはわかる。

だが、生活に直結するかは微妙だ。

必要だ! と主張する人もいるだろう。

そういう人が出た時に、個別に支出する感じでいいと思う。

そんなに多くないと思うし。


労働と経済に関税などは、先ほどの通り。

ダンジョンが優秀すぎて、町中で経済が完結してしまっている。

珍しいモノがあれば、別途取り寄せるだろう。

だが、それだけだ。

税金を取ってまで、政策をする必要がないと思う。

失業者も、ダンジョン低階層には潜れるし……。


公債費

パンタラント伯爵家の借金。

これは……どうすれば?

この世界で、貴族が借金するってあるのか?

とりあえず、一旦白紙へ。




こうやって見ると、意外と必要な費用が少ない。

領民の負担は最小限にしたいし、自分たちのお金がどう使われるかも知ってほしい。

俺は、クリーンな統治をしたいのだ。


1年の免税はいただいているから、必要な費用をこれからまとめるとして。

一旦の方針は決定。みんなと共有して詰める。



「これでは、パンタラント伯爵家を維持することができません」



話した文官の第一声がこれだ。

やっぱりそうだよなぁ……


そこは俺も思った。大部分を削ったからな。

貴族自ら働くのはどうか? とも考えている。

だが、政務でその時間も取れないのだ。


はぁ、どうするか?



「では、騎士団が討伐したモンスターの売却金、これを使いましょう」



騎士団長のロイが提案してきた。

彼は、ミゼルの右腕なのだが、ミゼルから町を守るように、勅命を受けている。

代々、パンタラント伯爵家に仕えている家の出身だ。



「それは不公平にならないか? 騎士は危険な職業だ。体を張っている。なのに貴族から掠め取られるなど――」

「ダイガク殿。それは違います。騎士はパンタラント伯爵家のためにあるのです。我が身、我が心、その全てでお支えする。それが騎士道」

「……」

「我々は、主君が正しくある限り、身命を賭して仕えます。そして、ミゼル様とダイガク殿は、我らが仕えるに相応しい」

「他の騎士たちもか?」

「はい!」



……ここは、ロイに甘えるか。

この場は、騎士団の売却金。

それから、パンタラントの町外に販売する商品について、何かしらの税を設けることになった。

それを、パンタラント伯爵家の運営費とさせてもらう。


冒険者や騎士・兵士は、パンタラント伯爵家からの税金はなし。

なし崩し的に、裏の人間もなし。

町を守る観点から、彼ら、彼女らには頑張ってもらう必要があるからだ。

その代わり、町でお金を使ってもらおう。




………………

…………

……




大体形にしたものを紙へ書いて、コピーしてもらう。

それから、光魔法と幻影魔法が使える魔法使いを集めて、俺が思う資料を、投影する魔法を開発。

数日後、領民を集めて説明した。


これは、この1回だけでなく、週1を基準に定期開催する予定だ。

領民の意識は高い方がいいし、自分たちに関わることだから、ちゃんと理解して欲しい。

俺のエゴだが、反応は良かった。



そのついでだ。説明してしまおう。



「皆には申し訳ないが、手伝って欲しいことがある」

「何でも言ってくれ! ダイガク様のお陰で、毎日が楽しいんだ! 協力するぜ!」

「私もよ! 新しい発見があって、面白くてたまらないの! 恩返しさせて!」

「もちろん、俺たちもだ!」



良かった。

俺のやり方に文句が出てくると思ったが、全体的にいい雰囲気だ。

もちろん、驕ることなんてしない。

これは俺の考え出したことではなく、先人たちの模倣の失敗作。

著作権なしに使用している、後ろ暗い行為だ。

誇れない。

それに、不満な人間もいるだろうしな。



「皆には、1~2か月ほど、貧民の生活をしてもらう」



俺の宣言に、変な顔をした民衆だった。



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税務署の『税の種類に関する資料』


それから


『税金の使われ方』でググった結果


興味ある人は見てみ?

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