9話(閑話):きったねぇ花火システム

贄システム



それは、リリースされた当初から、『Second Life Online』に実装されている、システムの一つ。


プレイヤー内での通称は、『きったねぇ花火システム』


このシステムが、なぜ最初から実装されていたのか、未だに明かされてはいない。

だが、このシステムで放てる最終奥義は、2つの理由で、ES全プレイヤーの憧れでもあった。




憧れの1つは火力。


システムの仕様は、プレイヤーデータの何かを犠牲にして、最終奥義を放つ。それだけだ。


選べるのは全て。

ゴールド、所持アイテム、Lv、ステータス、スキル、称号、課金で拡張したインベントリ…etc

とにかく、ES内でプレイヤーが持っているデータ、全てが対象だ。


ゴールドの一部、アイテムの一部みたいな選択も可能。

ただし、こういった選択でのダメージは、たかが知れている。

倒せてもレイドの雑魚ボスぐらいだ。



こんな仕様だが、たった一つ。馬鹿みたいに、火力を出す方法がある。


……そう。プレイヤーデータの全てを捧げるのだ!

全てが無に帰し、真っ白な初期データとなる。


この時の火力は、大体のレイドボスを一撃で屠れる。


先に並べた魔神でも、1体当たり2~3発放てば、屠ることができる。

『忍耐の魔神』だけは、4発必要だったが……


それくらい、頭がおかしい火力をしていた。





憧れのもう一つは、エフェクトである。


この『きったねぇ花火』、花火とついている通り、奥義の最後に花火が打ちあがる。それも複数。

全プレイヤーが、ある花火を目指していた。



話は変わるが、花火が打ちあがる。その瞬間は大抵、決まっている。


システムバグではないか、と言われるぐらい強い装備の、改悪・デチューン。

明らかに、おかしいステータスをした、ボスの実装。

はたまた、ゲームに振り回されて、気が参ったプレイヤー。


以上の理由で、プレイヤーがゲームをやめる時、ゲーム内の空には、大量の『きったねぇ花火』が打ちあがったものだ。



そして本題、『きったねぇ花火』は一種のステータスだという、とち狂った廃人共もいた。

理由だが、この花火エフェクト、全データを対象とした場合だけ、通常とは違う演出が行われる。


通常の花火が全て打ちあがった後に、特大の花火が空に輝く。

絵柄はお札そのもの。顔のところはプレイヤーアバター。

そして金額部分には、対象プレイヤーの課金総額が、虹色に輝くのだ。



これをやりたいがために、アバターを増やす廃人が後を絶たなかった。

アバター1体の追加、10万円。


ここまでできるのは、課金廃人の中の廃人。

課金廃神たち、のみだろう。

こいつらは1体と言わず、常に十数体、しかもアイテムと装備も最高レアリティで揃えていた。

一体いくらつぎ込んだのか。想像したくない。






本当にESの運営は、頭のネジが何十本も抜けている。


ちなみに『大罪と美徳の魔神イベント』は、8周年の記念に実装され、9周年の前に一度、復刻開催された。

この時、前回の雪辱を晴らすためか、大量の花火が打ちあがったとか。

俺は、とある理由により参加できなかったが、その時の花火には、100億を超える金額も表示されたらしい。

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