3話
--読む前に--
少し下品な表現はいります。
本当、こんな作者で申し訳ない。
では、お楽しみを。
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人生で一番の高揚を味わって「あぁ……これが幸せかぁ」などと宣った俺氏。
少し落ち着いて来た。
30年以上封印されし、魔法使いとしての力が、今っ! 覚醒するっ!
……ふっ。32歳にして、死んでもいいと思える日がこようとは!
訂正。全然落ち着いてないわ。
この場で、異世界妄想1000本ノックしてもいいんだが……
さすがに、このままというわけにはいかん。
天使 学がスキル、深呼吸を代理発動。(そんなスキルありません)
スゥ~ハァ~、スゥ~ハァ~。
さて、これからどうするか?
ニヨニヨしながら考える。
まずはダンジョンか? この近辺にあるんだろうか?
いやいや、それよりも冒険者ギルドだろ!
ダンジョンの入口に警備兵がいて、身分証の提示を求められたら困るしな。
それに冒険者ギルドって言ったら、絡まれた後に力を示して……なんて、テ・ン・プ・レっ!
似非ヲタク、涎の展開だぜ! 最高じゃねぇか!
いやいやいやいや、待て早まるな。
先に奴隷商館もありだ! 幸い金はある!
この異世界に関する知識を、美女や美少女奴隷から教えてもらう。
いいじゃないか、教師プレイもどき! 良きかな良きかな。
そして、優しい俺氏に絆され、行く行くは……
そんな変態妄想をしていた時だった。
頭に水がかかる。
しかも、バシャッではなく連続してだ。
まるで滝行をしているかのよう……
ふっ。雨か。
今の俺に相応しい、イキな演出じゃないか!
濡れた前髪をかきあげて、俺が思う男性の理想像みたいに、かっこよくきめる。
顔の角度は、45度から60度の間。もちろん上向きだ。
きまった。きまってしまった……
水が止まったところで、顔を右手で拭い、目を開ける。
そして、固まった。
向かいにある建物の2階、そのベランダみたいなところ。
そこに悪い笑顔を浮かべた子供が二人、柵越しに見える。
ズボンをおろして、こちらに狙いを定めていた。
ちょろちょろちょろ……
そんな擬音が聴こえた。ともに、左側の少年から勢いよく飛んでくる。
固まったままの俺氏。顔面で小水を受け止める。
いきなりだったため、目や口に入ったし、息が続かず鼻で思いっきり吸い込んでしまった。
「お、おぇぇぇ~?! ゴホッゴホッ。く、クセェェ……」
「よっしゃー! 見たかよ。クリーンヒットだぜ!」
「俺も含めて2連続かよ! だっさ! あいつのこと、皆に言いふらしてやろうぜ!」
子供の声が徐々に遠ざかっていく。
鼻の奥がツーンとする。
これは、鼻に水が入ったせいだ! 断じて惨めに泣いているわけではない!
そして、体の熱が急速に冷めていく。
うん。これまでもこれからも、底辺なおっさんだわ、俺。
悪臭を漂わせたおっさんが一人。
もちろん俺のことである。
アンモニアの匂いと濡れた服は、現状どうすることもできないので一旦無視だ。くさい。
あれから、30分ぐらいか。
ずっと、これからのことを考えていたが……
よくよく考えると、目立つのを避けるって、大前提だよな。
こんなヘンテコ野郎が、いきなり領内に発生してみろ。
俺だったら排斥する。日本じゃ、無視一択だろ。
とりあえず、今日の宿だな。
後、身分証。それと金か。
ESのゴールドが使えるのか、検証なしはリスクが高い。
そして、体洗いたい……待てよ?
魔法使ってどうにかできないか?
もう一度、ステータスウィンドウを確認する。
するとスキル欄によさそうなものを見つけた。
生活魔法:LvMax(new)
そして魔法一覧の中に『クリーン』を見つける。
効果は『汚れや臭いをなくして綺麗にする』の一文だけ。
だが、今の俺にぴったりだ。
魔法欄から選択して発動。
途端にアンモニア臭と服が貼りつく不快感が消えた。
……ハハ。マジでファンタジー。
でもESは、バフやデバフ、攻撃や防御に回復といった戦闘関連の魔法だけだったはず。
こんな、時間と清潔感に追われる日本人が、乱発しそうな魔法はなかったぞ。
やはりここは異世界。しかも、ゲームとは全く別と思った方がいいのか?
……今は分からんか。
ついでだ。魔法が使えたってことは、持ち物も行けるだろ。
そうしてインベントリのタブを開く。
そこには9年間、もったいなくて使えなかったアイテム群が、ズラッと並んでいた。
上から下までスクロールして、一通り確認した俺は、片隅にある『布の服』と『布のズボン』を取り出して着替える。
ジャージは、インベントリに入れておいた。
よしっ。切り替えて行くか! 冒険者ギルド。
……日雇いみたいな仕事があればいいが。
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