番外編

第13話 受け入れたくない!前編

私とカルゼが結ばれ一ヶ月がすぎた。


あれから私は王城の早朝訓練に行かず、毎朝ドゥルド公爵邸でカルゼと訓練している。


まあいいんだけどね。

カルゼ、私より強いしドゥルドの私兵も実力は折り紙付きだし。


それから学園行って昼食は特Aで一緒に食べ一緒に図書室に行き、放課後は一緒にラゼントリオの経営している店を回るか、カルゼと一緒に行かないで一人で回る時は帰りにドゥルド邸に寄って夕ご飯を一緒に食べている。


·····私、何回一緒にって言葉使った?


「婚約者なら普通ですわよ。」


あれが普通なの?

婚約者ってアンコウなの?


私の自由はどこよ!


でもカルゼは毎日幸せそうだし、

「ちょっと離れてよ。」

って言ったら水色の瞳を潤ませて

「ごめん、今まで一緒に居られなかったから嬉しくて·····」

なんて言われたらそれ以上強く言えないヘタレな私。


「登下校を一緒にするのも昼休みを一緒に過ごすのも婚約者なら普通だと言っているではありませんか。

それより今まで婚約者を放置しておいてちょっと一緒に過ごした位で鬱陶しがる貴女の神経がわかりません!」


なんでフィーラ様が私のモノローグに、いちいち突っ込んでくるのよ。


「お口に出ております。

それと本当のヘタレなら本人に面と向かって離れろなんて言いませんわ。

貴女の償いってなんですの?」


口に出てたのね。


「フィーラ様、マリン様、ごきげんよう。

マリン様、償いって一緒に過ごすのが償いになると思います?

後、勝手に同じテーブルに座るのやめてくれません?」


一応許可は取ってよね。

これだから


「格上の横暴ではありませんわ。

朝お会いした時に放課後にお話したいと言ったではありませんか。」


フィーラ様、モノローグに突っ込むの止めてってば。


「お口に出ていると言ってますでしょ。

先程の償いですが、被害を被った方が望む事をするのが償いです。

加害者が勝手に相手を思ってする行為はただの自己満足ですわ。

奇特なカルゼ様はアーシア様とのお時間を求めているのです。」


マリン様は相変わらず辛辣で腹立つけど、貴族的な遠回しの嫌味よりこっちの方が好感はもてるんだよね。


「私の事はいいんです。

それよりお話ってなんですか?」


早く本題に入らないとカルゼが迎えに来ちゃうからね。


「あ、申し訳ありません。

あれからわたくし達の今後を話し合ったので、ご報告しようとお時間を頂きましたの。」


「いえ、別にフィーラ様達の今後は私には関係ありませんから律儀に報告してくれなくてもいいんですよ。」


他人の婚約どうこうなんて知っても仕方ないし、ラグナ達の泣き言で嫌でも聞くからね。


「ですが早く知っておかれた方がラゼントリオも商機を掴みやすいのでは?」


「是非お聞かせください!」


あ、思わずマリン様の口車に乗っちゃった。


そのドヤ顔した頬っぺを抓りたくなるわ~。


「ではわたくしから。

あれから王家とグラント公爵家で話し合い、婚約は継続になりましたわ。」


「許したんですか?」


まさかフィーラ様やグラント公爵家がラグナを許すとは思わなかった。


·····いや、あのニヤリ顔を見る限りただで許してないな。


「もちろん条件はつけましたわ。

今後ラグナ様が不貞をしたとわたくしが・・・・・判断したら即破談、ラグナ様の年間収入の3分の2を生涯に渡って・・・・・・わたくしに支払い続ける事になりましたの。」


それじゃあラグナが女性と喋るだけでもフィーラ様が浮気だって言ったらお終いじゃない。


しかもラグナの年間収入の3分の2って、王族の体面が保てるギリギリしかラグナに残さないって凄いね。


「両陛下がよくお許しになりましたね。」


「両陛下は難色を示されましたが、王太子殿下が説得して下さいましたの。」


出しゃばりの王太子が

「それぐらいのペナルティは必要だし、ラグナがフィーラ嬢を大切にすれば問題ない。」

と言ったそう。


まったく·····


「わたくしとシリル様の婚約は一旦白紙に致しました。」


マリン様は婚約継続にならなかったのか。


「そして不婚の誓いをして頂き、卒業後は国境守備隊に入り努力次第で再婚約致しますの。」


不婚の誓いって結婚しないだけで愛人、恋人は作り放題。

ただその相手との間に出来た子供は我が子とは認められない。


シリルが女性と関わらず真面目に仕事を頑張ったらマリン様ともう一度やり直す機会をもらえるのね。


「これはわたくしのお父様が良い顔をしなかったのですが、王太子殿下のお口添えで通りましたの。」


また王太子か。


フィーラ様もマリン様もわかってなさそう。


気づいてるのはマリン様のお父様、フォルツ侯爵だけなのかな?


「最後のお節介ですが、王太子が親切心で介入したと思わないようにして下さい。」


放っときたいけどラグナやシリルが真剣に償おうとしてるなら放っておけないからね。


「どういう意味ですの?」


フィーラ様は本当に気づいてないの?


「·····」


何も言わないマリン様は薄々何かあるとは思ったのね。


「仮定ですがもしフィーラ様がラグナ様と破談もしくは離婚となれば、王家が責任を取って王太子の側室として召し上げる話になるでしょう。

王太子は2人まで側室を持てますからね。

マリン様も同じです。

婚約が白紙になってもシリル様と婚約していた事実は変わりませんし、そんな中で王室が側室の話を出せば何年待たされるか、待ったとして裏切られるかもわからない男より、王太子の側室になる方が幸せだと周囲から言われるでしょうね。」


二人の顔色が変わった。


「何故王太子がしゃしゃり出てきたか考えなかったんですか?」


「わたくしは弟の不始末だからだと·····」


フィーラ様、ちょっと純粋過ぎません?


「わたくしは·····」


マリン様はフォルツ侯爵の態度と今の私の仮定でわかったよね。


「フィーラ様とマリン様が手に入り、ラグナ殿下は少ない支持者を手放し王族ですら居られなくなるかもしれない。

シリル様はラグナ殿下の幼なじみで親友で騎士団長の嫡子だから、国境で不慮の・・・事故・・があるかもしれない。

王太子にとって得するだけなんですよ。」


二人は青ざめて聞いている。


「王太子殿下は今でも地位は磐石ですわ。

敵にもならないご自身の弟にそこ迄なさる筈ありません。」


ですよね~。

普通ならそう考えるよね~。

だけど甘いよ、フィーラ様。


「そこ迄って言うけど、王太子がしたのは女性側を擁護しただけ・・

仮定の話でもそうなった場合、可哀想な・・・・女性・・に手を差し伸べるだけ・・

それだけ・・で自分の名声と強力な支持者と目の前の羽虫の始末ができる。」


フィーラ様はもう何も言い返さない。


マリン様は私の言った内容を吟味中かな。


「国王は三人まで側室をもてるけど、今上陛下は王妃陛下お一人しか娶っておられないからね。

そこまで考えられなかったのはわかります。

私が今言った事も仮定だし、後は其方で判断して下さい。」


マリン様が探るように私を見てくるけど、何よ?


「何故そんな助言を?

今のお話を聞くに王太子殿下は貴女と同類では?」


そうね、あれ王太子と似てるなんて鳥肌もんだけど、同類と思われても仕方ない。

だけどどうしても受け入れられない部分があるんだよ。


「王太子は自分の益になるなら敵でもない家族を平気で利用するの。

ラグナ殿下は自己中で頼りないし、シリル様は脳筋だけど幼なじみで二人とも反省して努力中なんだよね。

二人をただ自分の都合だけで利用されるのを見てるだけってのもね。」


私も同じ立場だし、他人王太子がしゃしゃり出て引っ掻き回すなって胸倉掴んで耳元で叫んでやりたいくらいだよ。

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