第267話 最速の王様ゲーム

これから既存のキャラとかの登場が多くなりますが、久々に出て覚えて無さそうなキャラは一言だけどんなキャラだったのか捕捉を付けておきます。

それと最近気が付きましたが、236話で内野と進上は敬語を使い合う仲から卒業したのに、それを忘れてお互い敬語で話してる様になってしました。この話からは修正します

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しばらくぶらぶらして時間を潰していると、知人たちがそこそこやってきた。

遠方に住んでいる者達はまだ居らず、東京在住の者達でもまだ来ていない者はいるが、人が増えてさっきまで静かだったホテルのロビーは次第に賑やかになっていく。今日だけ100人近い覚醒者がホテルに着いた。


そして今晩の晩飯は6人テーブルに内野・工藤・進上・松野・梅垣・中村が座り飯を食べていた。

(中村は、元強欲グループのリーダー。一度死んで蘇っている)


運ばれてくる料理は全員同じものだが、普段のホテルの晩飯ぐらい豪華である。

中村は酒を飲んで酔っており、飯を食いながら笑っていた


「バイキング方式にしなかったのは、飯の取り合いでプレイヤー同士が喧嘩するのを防ぐ為らしいぞ!

いや~本気でプレイヤーが喧嘩したら建物なんかぐちゃぐちゃになるから良い判断だよな!」


「馬鹿、ここではプレイヤーじゃなくて覚醒者って言え。一応プレイヤーじゃない覚醒者達と俺らは同じって説明してあるんだし」


「すまんすまん!酒の飲むと口にブレーキが利かなくてな!」


食事を運んで来る者達は力を持たない一般人なので、プレイヤーという単語については隠さねばならない。

中村は酒を飲むと口を滑らせそうなので、梅垣は目を細くして彼を監視する事を今決意した。


「これはホテル内での飲酒は禁止にした方が良いかもしれないな。

…と言っても、多分俺はしばらくの間は酒でも飲まないと夜眠れないだろうがな」


「え?何か嫌な事でも?」


「そういうのじゃない。ここだと『魔力感知』が常に反応して、中々寝付けそうにないんだ。今までこのパッシブスキルを切ろうなんて思った事が無かったから、スキルを切る事に慣れてくなくてな」


梅垣の魔力感知は戦闘で大いに役に立つスキルである。梅垣が3次元的な動きをしながらも敵を見失わずに戦えるのもこのスキルの存在が大きく、このセンサーを敏感に反応させる事には慣れていた。

だがこれを消す事には慣れておらず、このホテルで暮らすのにはそこそこ苦労が掛かりそうであった。


そしてそんな梅垣を嘲笑う様にこのタイミングで、自称ライバルの柏原が登場する。彼は何故かやけに顔が赤くふらふらしており、そんな状態で梅垣の肩を掴む。


「よぉ!お前が困り顔とは珍しい!俺様はついさっき着いたところだぜ!

少しこれ食ってみたがここの肉はうめえな、俺超大好き。豚さんをぎゅって抱きしめてあげたいぐらいだ。

そうだ!王様ゲームでもやろうぜ!」


「何を言ってるのか全く分からん、気分が高まっているのか知らんが頼むから分かる言葉を…って、お前まさか酒飲んで酔っ払ってるのか!?未成年だろ!?」


梅垣が彼の雰囲気を見てそう言うと、柏原の後ろから佐々木がひょこっと現れる。

高校生の柏原よりもしっかりしている中学生の佐々木だが、彼も少しだけ顔が赤かった。


「じ、実は運転手の足立って人が間違ってクーラーボックスに酒を入れてて…それを間違って飲んじゃったんです、てかあの人自身も自分で買ったのがお酒だって気が付いていなかったみたいです。

アルコール度数が低くて普通に美味かったから僕ら二人ともがぶがぶ飲んでしまいこんな事に…」


「何やってんだあの人」

「あの人この前は4人しかいないのにアイスを10人分も買って来たから…これ聞くとポンコツ臭がしてくるな」


内野と松野は以前も足立がミスをしたのを見ており、彼がポンコツなのではないかと思い始めた。

そんな足立のミスのせいで酔っ払っている柏原は、テーブルに座らる6人に向かいある提案をする。


「んでよ、王様ゲームやろうぜ!」


「合コンかよ!でも面白そうだな!」


「おう、合コンの定番と言ったらこれだろ!合コン行った事ないから知らんけど」


酔っ払いの中村と柏原は気が合ってしまい勝手に話が進みそうになる。それを内野と松野がなんとか止めようとする。


「男5人女1人の席が合コンな訳ないだろ」

「多分王様ゲームって男女が混ざってるから楽しんだろ?今ここに女子なんて工藤しかいねえし、絶対悲惨な事になるからやめようぜ」


「じゃあ女子がいれば良いんだな!?良いぜ、連れて来てやるよ!」


二人の言葉を聞いて柏原はそう言い放つと、彼は知人の女性に話しかけに向かった。彼女達からしたら酔っ払いに絡まれる様なもので迷惑なものそうで、佐々木が後を付いて行って止めようとしている。

6人はポカーンとしたままその二人の姿を見ていた。

そして工藤が思った事を言う


「…佐々木の方がしっかりしてるってどういう事よ。二人とも酒飲んで対等に酔ってるのに…」


「悪酔いするタイプなのか、はたまた保護者(田村と川崎)がいないからって好き放題暴れてるだけか…だろうな」


内野の分析に工藤はなるほどと頷く。ここまでの会話に一切口を挟まず進上は食事をしていたが、一つ気になる事があり内野に尋ねる。


「王様ゲームって何?将棋みたいなもの?」


「いや…俺も詳しくルールを知らないけど、全員くじ引きを引いてそれぞれ番号が割り当てられ、くじで王になった人が何でも命令を出せるってものです。

例えば「3番の人と5番の人は手を繋いで」みたいな命令で、王も誰がどの番号を引いたから分からないからそのドキドキを楽しめるってゲーム…って漫画で学んだ」


「じゃあ勇太は『第三者視点』で王のくじも分かるし、誰がどの番号を引いたのかも分かるんだ!最強だね!」


進上のその言葉で内野は「確かに出来る!」とハッとする。

『第三者視点』の使用感を分かり易く説明すると、例えを出すと内野の1メートル以内の範囲内にドローンが浮かんであり、そのドローンの映像が頭の中に流れてくるといったものだ。

最初は黒狼の協力無くして使う事が出来なかったスキルだが、今はもうある程度その視点ドローンを自由に動かす事が出来る。だからくじ箱の中身を見る事など容易であった。


内野が「出来ない事はない…」と言うと、松野と梅垣が頼んでくる。


「…内野、もしも王様ゲームをやる事になったら柏原が王にならない様に王様の役を毎回引いてくれ」

「そうしてもらえるとありがたい。今のあいつがどんな命令を出してくるかは分からないし」


「…確かに、あいつが王になるぐらいなら俺が王になった方が良いか」


内野は二人のその頼みを受け入れる。そしてそのタイミングで柏原が4人の女性を連れて来た。

柏原が連れて来た4人はいずれも知人。

松野・内野と共に大臣達へ力の説明に行った明るい女性の二階堂と、同じく怠惰プレイヤーだが無口の物静かな原井。残りの二人は憤怒グループの笹森と牛頭だった。


彼女らは説明もされずに訳が分からないまま連れて来られた様だったが、そんのお構いなしに柏原は話を進める。


「先に言っておくが、王様が初っ端から「ゲーム終了」とか言っても俺は認めてないし、そうなったらホテル内で暴れてやるからな!

最低でも5ラウンドはやらんと気が済まん!それに王様の命令は絶対だからな!?

さあ今からくじを作るから一人ずつ引いていけ!」


柏原は適当にとってきた割り箸とマーカーでくじを作り始め、全て作り終わるとこちらに背を向けて割箸をシャッフルする。

内野はその直前に王様のマークのくじを確認しておき『第三者視点』でこっそりとシャッフルの様子を覗き見る。

そしてシャッフルが終わると柏原はこちらにくじを向ける。それぞれの番号は手で隠している。


「さあ早い者勝ちだ、くじを取れ」


「…じゃあ俺が一番最初に取らせてもらうぞ」


内野は自分が王になる為に最初にくじを引き、見事王を引き当てた。柏原は『第三者視点』のイカサマに気が付いてない様で、そのままくじを皆に回していく。

そして柏原は最後に残ったくじを自分の番号とした。準備が整い柏原はウキウキした様子でゲームを開始する。


「王様だーれだ?」


「俺だ」


「お、内野か!じゃあさっそく命令しろ!どんな命令でも絶対に従わないと駄目だからな!?」


「じゃあ…明日から訓練で外に出れるし、7番VS他全員で戦おう。手加減無しで」


王様の命令で7番となった者が徹底的にボコボコにされる事が確定した。そしてその7番のくじを引いていた者は顔から冷や汗が流れ始めた。

7番のくじを引いたのは柏原だ、当然これは偶然などではなく内野が『第三者視点』でカンニングしたものである。


酔っていてもその命令がやばいという事は分かり、柏原はたちまち焦り始める。そして焦りによって酔いのせいで働いていなかった柏原の頭が覚め始め、正常な状態へと戻って行った。


「お、おい。その命令は7番のやつがあまりにも可哀想じゃ…」


「王様の命令は絶対…だったな」

「ああ、確かに柏原がそう言ってたな」

「んじゃあ全員で7番ボコボコにしようぜ!」


松野、梅垣、中村が王様の命令にノる。そして3人声を合わせる


「「「7番だーれだ?」」」


「…すみませんでした」


迷惑な酔っ払いが開始した王様ゲームは最速で幕を閉じた。

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