第250話 集う強魔

数話分の執筆データが消えた上に、現在他の小説の執筆も行っていたので中々投稿出来ませんでした。

ちなみに8月は出来るだけ週4,5回更新をするつもりです。

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両手刃の魔物も内野達と戦闘する気満々らしく、魔物の背に乗って接近して来ながら武器を前に構える。

下の魔物はチーターの様に細い身体だがスピードが速い上に、両手刃の機械の間もあのが背からスラスターを吹かしているのもあって、瞬く間に距離を詰めてくる。


「早いけど、そんな距離の詰め方をしたらこれ避けられないよね」


西園寺は素早く『色欲』で拳銃の様なものを生成すると、それを前に構えて撃つ。銃口は普通の弾に比べてかなり大きく、普通の銃ではない。

これは前回まだ未完成だったEMP弾と発射装備を西園寺は完成させており、通常の銃と同じぐらいの弾速でEMP弾を射出する。


相手はその弾を片腕の刃で切り落とすも、その瞬間に起爆し、使徒はスラスターを吹かせなくなった。


「決まった初見殺し!今だよ皆!」


西園寺の言葉で一同は武器を手に持ち前へと出る。

そして内野、小町兄弟、灰原は周囲の魔物へと飛び掛かる。


「ストーン!」

「大砲!」


飛び掛かりながら内野はスキルを使い、片栗はさっき内野に弾を込めてもらった大砲を魔物へと放つ。これだけでも数匹魔物は死に、そこに灰原と希望が詰めて更に追い打ちをかけていく。

灰原は前回持っていなかった杖を所持しており、素手と杖で魔物を撲殺していく。

希望は剣や槍など武器を切り替えながら、確実に魔物の息の根を刺して回る。しかも身体が小さく小回りが利くので、大人の灰原に負けず劣らず戦っていた。

それに川崎が数匹魔物を出してヘイトを分散していたので誰も負傷はしていない。だから4人で周囲の魔物を抑えるのはそこまで厳しくなさそうであった。



一方、両手刃の強敵は苦戦している様で、川崎・西園寺・二階堂・吉本でも中々攻撃を当てるのは困難であった。

スラスターを吹かせないとはいえ相手は素早く、梅垣や清水などの前線特化の者が居ないので攻撃を当てるのには苦戦する。だが相手もそこまで深く追えずにいるので、拮抗状態である。

だがここでの拮抗状態は川崎側からすれば優位と言える。ここで拮抗していても内野達が着々と周囲の魔物を倒しているからだ。


「攻めるのは周囲の魔物を倒して4人が加わってからで良い、今は全員避けるの重視で動け」


「「了解!」」

「りょ~」


怠惰グループの二人と違って西園寺は軽い返事だが、顔はガチ。『ウィンド』という風を起こすスキルを使い、梅垣が『ステップ』で行っていた空中機動の再現をしながら右腕に砲身を作り『ストーン』を放っている。

梅垣の程の三次元的な機動はスキル的にも、本人の能力的にも出来ないが、西園寺には西園寺の戦い方がある。


「フラッシュ!」


相手に距離を詰められた所で、西園寺の右腕の砲身に着いてあるライトが光る。一方西園寺はフラッシュの直前に色欲でサングラスを生成しており、その光の中でも相手を捕捉できる。


その激しい光に使徒は目を一時潰され怯み、西園寺はその隙を逃さない。

『エンチャント・フレイム』という武器や身体などに炎を纏わせるスキルと『ストーン』を併用し、炎を纏う岩を空いている手から発射する。

そして使徒はそれを腕の装甲で防ぐ。


わざわざ炎を纏わせたのは、今後もこの寄生機械の魔物が出現するかもしれず、この系統の相手の弱点を探る為だ。見た所、燃えている岩を弾いた腕も装甲が凹んでいるだけ。


(熱はダメか、次は『哀狼の雷牙』で雷…と行きたい所だけど、あれを使うのは流石に勿体ないか)


西園寺が使徒の注意を引き付けている間も、二階堂と吉本が魔物に攻撃を与えるので、特に西園寺は負傷する事なく色々と思考出来ていた。

うろちょろと動き回り、攻め過ぎず逃げ過ぎないムーブをする3人。その3人に対して両手の刃しか攻撃手段を持たない魔物は何も出来ずにいた。


だが途中で機械の魔物は一人足りない事に気が付く。さっき皆に指示を出していた者が。

そしてそれに気が付いた直後、機械の魔物は上空から降ってきた白黒の丸い球に当たり、魔物の寄生していた身体の頭が潰れた。


川崎と塗本が大きな鳥型の魔物に乗り、そこから嫉妬の使徒の本体を投げつけたのだ。

塗本という元使徒の高ステータスを持つ者が、嫉妬の使徒というとてつもなく硬い物をぶん投げたので、流石にこの魔物の身体は受けきれず地面に打ち付けられる。

ただ、潰れた頭には機械の本体はいない。ギリギリの所で頭から胴に本体が場所を移していたのだろう。


「当たる寸前で頭から胴に逃げられたな」


川崎はそう言いながら嫉妬の使徒の核から捕えていた魔物の首を出して、両刃の魔物の腕を食い千切ろうとする。

それを防ごうと両刃でその魔物の首を刎ねるも、嫉妬の使徒の核からは更に闇が発生し、その闇が魔物へと変化する。

それらの数匹の魔物は川崎の指示で機械の魔物の腕を重点的に破棄しようと噛みつき、殴り、炎を吐いたりする。


この猛攻に対し、両刃の魔物はがむしゃらに刃を振り回して抵抗し、『怠惰』で出現した魔物達を蹴散らす。

だが身体はもうボロボロ、外装を生やしてどうにか人の原型を保っているレベルにまで損傷する。


ここまでは順調、順調過ぎるぐらいだった。

だから川崎は…


「皆、一旦引け。そろそろ向こうも仕掛けてくる気がする」


川崎は3人を少し下がらせた。

理由は簡単で、そこそこ魔力がある強い魔物なのに一度もスキルらしきものを使ってないからだ。警戒せずにはいられなかった。


「この状況でもまだ魔力を温存しようとする…か、やりにく事この上ないな」


「切り札はまだ見せてくないって所でしょうけど、相手が何を企んでいるか分からないと攻めにくいですね」


「た、田村さんの『メテオ』みたいに広範囲過ぎて周囲の魔物も巻き込んでしまうからでしょうかね…?」


二階堂と吉本の考察に耳を傾けていると、川崎の耳に他の方向からも声がする。


「川崎さん!周囲の魔物は掃討し終わりました!」


それは内野で、他3人と共に周囲にいた20匹近い魔物を倒したと報告してくる。3分足らずで20匹倒せたのは大きく、これで8人でこの機械の魔物を囲む事が出来る。


「まだ相手の手の内が分かっていない状況だ、じっくり攻めるから前に出過ぎない様にしろ」


川崎の指示に皆頷き、機械の魔物を囲む。内野と西園寺が遠距離攻撃スキルを使えるのでさっきよりも離れた箇所からの攻撃が可能で、相手の刃の間合いに入る事なくスキルを当てていく事が出来た。


西園寺は『ストーン』を砲身から打ち出している。

砲身には適正距離のスコープ、目くらましに使えるライト、そして使徒の場所が分かる羅針盤が付いている。

それで西園寺は戦闘をしながらも二体目の使徒が出現したのを羅針盤で確認していた。


既に出現している2体目の使徒が誰なのかは判明していないが、さっき確認した時にはそこそこ距離が離れていたのでこの場の全員気にも留めてなかった。

だが西園寺がスコープを覗いていると、偶然目に入った羅針盤に異変を感じた。


(…さっき現れた方の使徒の針が動いてるな。3,4㎞は離れているのにこれほど針の動きが早いとなると、スピードがかなりある使徒っぽい…

…っ!)


どんどん速く動く様になる針、それを見て西園寺の頭に浮かんだのはプレイヤーにとって考えたくない様な考えだった。

そしてその考えが浮かんだと同時に、空に一筋の細い光が通る。その光の動きに合わせて西園寺の羅針盤の針も高速で動く。


この2つの事から、西園寺はさっき自分の中に浮かんだ最悪の考えの通りだと分かってしまった。外れていてもらいたかった最悪な考えが。


「あのサボテン…光の使徒まで呼びやがった」


空に現れた光の筋を見ている皆に西園寺はそう声を呼び掛ける。だがその直後には光の使徒は内野達の真上まで来ており、一筋の細い光は大きな鳥の形へと変化した。


「なっ…!」

「全員退け!」


西園寺の声のお陰で一同は機械の魔物の包囲を解いて退く。

内野も他の精鋭メンバー並みの反応速度で後ろにステップを踏むと、目の前に大きな光の槍が降ってくる。もしも少しでも反応が遅れていたら、即死とまではいかなかったが重傷を負っていただろう。


(嘘だろっ!

サボテンの使徒まで1㎞ぐらいだが、こんなに近くに2体も使徒がいるって…)


内野は初めて光の使徒に遭遇した時の様に、背が凍り付く様な感覚を味わうと同時に、心拍数が上がり身体が熱くなるという真逆の感覚を同時に味わう。


身体が訳わからない感覚に陥っているのは、今回のクエストは使徒二体を同時に相手せねばならないのだと察し、心が動揺していたからだろう。

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