第249話 二刀
柏原は補田ら暴食グループのプレイヤーと行動を共にし、話を聞きながらサボテンの使徒の元へ向かっていた。
サボテンの使徒の上部に花が生え魔物を呼び寄せているのは周囲の者からの報告で分かっているので、囲まれる前にサボテンを登らなければならない
「なるほどな。
サボテンの使徒の内部にはゴーレムがいて、中ではそのゴーレムと戦っていると。んで、そのゴーレムの核をぶっ壊せばサボテンも朽ちるって考えか」
「はい。ただサボテンの内部には光がなく真っ暗みたいです。
それで私達がサボテン上部の穴を広げ、光が中に入るのをサポートする事になりました。前回のクエストでそれらの情報を手に入れたので今回はそれを生かしてそのサポート役を数人準備させてたみたいですけど、穴の再生が想像以上に早く、人手が足りないのでレベルしていた私達も招集されました。
ちなみに、どうやら一度中に入ってしまえば『フライ』だとか『テレポート』を使わないかぎり出れないみたいなので、間違っても穴に落ちたりしてはいけませんよ」
「俺がそんなヘマするもんか。
それよりこの人数で足りるのか?サボテンの穴開けだけじゃなくて押し寄せる魔物の対処もしないと駄目なんだろ?」
「わ、私はただ連絡を受けただけなので詳しい状況については知らないんです…」
「ま、足りなかったら怠惰グループはいつでも手を貸すぞ?
後で川崎さんがどんな見返りを求めるかは分からないが」
サボテンへ走りながらそんな会話をしていると、周囲が騒がしくなってきた。
主に魔物の鳴き声、足音だ。
そして空には飛行型の魔物の影が多数見えて来た。赤い空を飛ぶ禍々しい大量の魔物達の姿は、並みのプレイヤーなら怖気づいてしまってもおかしくない程である。
だが精鋭メンバーに選ばれる程の実力を持ち、基本的に楽観的な柏原はそれでは止まらない。
「おっ、前回よりもクソ量が多いな!
行くぞお前ら!サボテンに登りながらこいつら蹴散らすぞ!」
「「なんでお前がリーダー面してんだ!」」
他の暴食グループのメンバーからそんなツッコミが飛ぶも、彼らが自信満々な柏原の姿に対して心強さを抱いていたのは確かだった。
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魔物がサボテンの使徒の元に一斉に動きだした事を観測し、川崎達もその魔物を追い駆ける様に動いていた。
今この場には『強欲』『色欲』『怠惰』の3人が揃っており、間違いなく現在の最高戦力部隊である。なので如何に魔物の数が多くとも、使徒にさえ遭遇しなければなんとかなるという判断で全員がレベル上げの為に動く。
「柏原からの報告で、暴食グループだけじゃ頼りないから来た方が良いとも言われたから来たが…確かにこの数は1グループ全員が集まっていたりしないとキツイ数だな」
空、横、後方、何処に目を向けても必ず魔物が数匹写り込むぐらい魔物の数が多く、暴食グループは厳しい戦いをしていると想像が付いた。
なので川崎達は、サボテンの使徒は暴食に譲るというスタンスのまま、押し寄せる魔物だけ殺して協力するというムーブをしている。これなら暴食とも不仲にならずに済むし、レベルを上げられるので効率が良い。
ただ魔物の数が多く激戦になるのは想像に難くないので、内野は『恐れ無き虫の鎧』という使徒を倒して購入できる様になった強力な装備を身に着けている。
『恐れ無き虫の鎧』は胴と脚部についており、靴は『ブレードシューズ』を身に着けている。そしてメイン武器は『黒曜の剣』、サブの武器は『哀狼の雷牙』
『哀狼の雷牙』は刃の側面に牙の様なものが生えていたりまともに剣として使う事が出来ないので、武器に貯まったMPで雷を放出するという能力だけを使うつもりだ。
使徒のアイテムを購入できるという事もあり、恐らく内野は強欲グループのプレイヤーの中では一番装備が整っているだろう。
次に内野は、自分のスキルを確認する。
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【スキル】
・強欲lv,9 ()
・バリアlv,4(50)
・毒突きlv,2(20)
・火炎放射lv,5(90)
・装甲硬化lv,5(25)
・吸血lv,1(10)
・独王lv,7(140)
・ステップlv,1(5)
・ストーンlv,3(30)
・マジックショットlv,10(200)
【パッシブスキル】
・物理攻撃耐性lv,7
・酸の身体lv,3
・火炎耐性lv,5
・穴掘りlv,10
・MP自動回復効率lv,4
〇第三者視点lv,4
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正直数が多すぎて、内野はいまだに自分の戦闘スタイルに悩んでいた。
(『バリア』『独王』でのサポート。
『ストーン』『マジックショット』での遠距離攻撃。
『バリア』『装甲硬化』『物理攻撃耐性』『酸の身体』での盾役。
俺なら一人でこれらを熟す事は出来るが…一番の問題は接近戦の弱さだな。これはスキルがどうこうって話じゃなくて、単純に俺の才能不足だ。
これだけステータスが高くても、模擬戦で同期の進上さんの身体に攻撃を当てられなかった。『剣術』ってパッシブスキルがあればかなり剣の扱いについては変わるみたいだが…『強欲』で手に入るか?
剣を使って戦闘を行っている魔物なんて見た事ないし、スキルガチャからしか手に入らない気が…)
内野がそんな事を考えていると、突然前を走っていた西園寺が振り返る。それは後ろにいるメンバーを見たのではなく、内野達の更に後方から迫ってきている魔物の方だった。
「…いる、強い魔物だ。他の魔物と争ってないからプレイヤーじゃないのは確実」
『魔力感知』で大きな魔力の反応を感じた西園寺は皆にそう警告する。
一同その言葉に更に警戒を強め、武器を持って足を止めて振り返る。
後ろには内野らを追い駆けてきている魔物が多数おり、距離が離れているからまだその強敵の姿は見えない。
「どのぐらいのレベルの敵だ?」
「う~ん…僕一人だったら戦闘を避けるレベルの敵だね。でも使徒程じゃないしこのメンバーなら問題ないと思う」
「なら今ここで仕留めるぞ」
西園寺の返答を聞いて川崎が指揮し、ここで足を止めてその魔物と戦う事となった。
先ず大して強くない魔物達は、ここのメンバーなら負傷一つ負うなく倒せるので、早急にその魔物達を片付けた。
そして気を抜く事なく直ぐにその強敵が居るという方向へと向き直る。
そこには数匹魔物はいたが、どれが強敵なのか一目で簡単に分かった。
一同の視線はその一体の魔物に視線が釘付けになる。
それは傲慢グループの恐怖を植え付ける使徒に似ている人型の魔物だ。
今回は男の身体で、傲慢の使徒の様に身体には装甲が付いている。中にはまた人がいると思われ、その中の者の血が装甲の隙間から垂れている。
顔に付いているカメラアイは恐怖の使徒と同じもの。スラスターが付いている個所も同じであった。
一番異なる点と言えば、両手に生えている刃渡り2メートルほどの刃だ。
「如何にも両手の刃で戦うって見た目してますね」
「笹森の時みたいに身体から他の機会を生やせるかもしれない。刃だけを見て油断はするなよ。
取り敢えず内野君、灰原、小町兄弟に周囲の魔物は任せる。残りのメンバーでコイツの相手をするぞ」
「「了解!」」
川崎の指揮で戦闘のメンバーが決めれら、一同それに従う。
だがここで内野だけ一言川崎に言葉をかける。
「すみません…もしかするとこの相手『剣術』スキルだとか持っているかもしれないので…」
「…ああ、『強欲』で呑みたいって事か。こんな所で我儘を言うとは、随分と大罪という立場も板についてきたんじゃないか?」
「川崎さん、その言い方だと僕含め大罪全員が我儘な人みたいに聞こえますが?」
「言い方が悪かった、自我が強いってニュアンスだ。誉め言葉だからな」
大罪3人でそんな事を言い合いながらも、迫りくる敵を迎え撃つ。
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