第136話 4防衛クエスト 横浜
内野らは田村の数歩後ろに位置して行動していた。工藤は魔物が多くいる方向を田村に教え、それによって進行方向を決めていく流れだ。
その様に数分程行動していると、内野は周囲と比べて自分の足が遅い事に気が付く。
内野は敏捷性を上げていなかったので田村の足に追い付くのに精一杯で、息を切らしながら全速力で走っていた。だが他の3人はそんな辛そうな様子ではなく、田村に追い付くのに息は切らしていなかった。
内野は取り敢えずステータス画面を開いて値を確認する。
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【レベル23】 SP30 QP32
MP 254
物理攻撃 85
物理防御 87
魔法力 56
魔法防御 84
敏捷性 55
運 6
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「なぁ…3人とも今の敏捷性どれぐらい?」
「俺は152」
「私は175」
「私も新島と同じでぐらいで178」
工藤らは既にほとんどのSPを振っており、松野は152、新島は175、工藤は178になっていたのだ。
それに比べて内野は55、辛くない訳がなかった。だが内野だけは何故かSPでステータスを上げようとすると1ずつしか上がらないので、上げようにも上げられないのだ。
「田村さん、実はSPでステータスを上げようとすると1ずつしか上がらないんです…なので…」
「…あ、そういえばそんな報告を受けていたのを忘れていました。その様子だと我々に追いつくのはキツそうですね…でも君が敏捷性にSPを使うのは勿体無い…
田村は隊列の後方に向かって誰かを呼ぶ。すると田村が声を掛けた瞬間に何者かが猛スピードで最前線までやってきた。
「はい…分かりました…」
美海というのは先程のオドオドした口調の女子中学生だったようで、駆け付けて来るとすぐに内野の前へと回り込み、内野の膝を手で掴んでをおんぶする。
内野の身体は高校二年生にしては小さい方だが、流石にこの女子中学生に比べると内野の身体は大きいので、内野はおんぶされながら慌てふためく。
「ちょちょ!おんぶしてもらえるのはありがたいのですが…」
「ご、ごめんなさい…私の背中の乗り心地悪いですよね…頼りない背中でごめんなさい…」
「え、あ、いや…別に乗り心地は悪くないですけど…ちょっと恥ずかしいので…」
横からは工藤と新島の視線、それと松野の「ほう…乗り心地が良いとな…」と言わんばかりにニヤニヤしてくる視線が刺さってくる。
後ろからも「あいつ女子中学生におんぶさせてるよ…」みたいな視線を少し感じてくる。
視線は痛いけど…正直乗り心地はかなり良い。
走っているのに軸がぶれないからほとんど身体が揺れないし、それにちょっと良い匂いがする…
「彼女はまだレベルは60代ですが、戦闘の才はかなりあります。常に広い視野をもって戦えるので、内野君を背中におんぶしたままでも多少戦えるでしょう。少なくともその状態でも敵の攻撃に当たること無いと思いますよ」
「ご、ご期待に沿えるように頑張ります…」
こうして内野は美海に背負ってもらい、少し良い思いをしながらクエストを受けていった。
休んでいた間に魔物が少し増えたからか先程より高頻度で魔物に遭遇した。怠惰メンバーの敵になる様な魔物は現れず順調に進んでいき、グループ内に少し余裕が生まれてきていた。
そして怠惰メンバーと強欲メンバー同士の会話も増えてきていた。松野は魔物が居なくなったタイミングで田村に質問をする。
「あの~敏捷性でどれぐらいあれば良いんですか?全て敏捷性に振るのは後々困りそうな気がするので念の為聞かせ下さい」
「ん~確か今ここにいる怠惰グループのメンバーで一番敏捷性が低い者が250程度だった気がするので、それに合わせて250にしましょう。それ以降は自由にステータスを振って良いですよ」
「敏捷性が一番低くても250…やっぱり今ここにいるメンバー皆レベル高いんですね」
「ええ、平均レベルは75~80程度ですよ。あくまでここにいるメンバーだけですがね…
残りの150人の方達は戦力として数えられない者達なので、各々自由にして良いと言ってあります。ですが今回のクエストに参加しているのは半数も居ないでしょう。
内野君は今回選出しなかった方達に何か指示を出していたりするのですか?」
「今回のクエストの新規プレイヤー達には自由にして良いと言ってあります。
飯田さんという元リーダーの方が今回のクエストで現れる魔物の強さをグループで言ってあるので、それを聞いてクエストに参加するか決めてもらうといった感じですね。基本的に行かない方が良いとは言ってありますが…多分無視して参加している人もいます」
「なるほどなるほど、彼らに自己責任で判断してもらうと。誰の心が痛まない良い方法ですね」
そんな会話をしている間、絶えず内野達のスマホはチャットグループからの通知が鳴り止まない。
クエスト開始から20分以上経過し、魔物に関する報道がテレビでされ、SNSでも広まってきたのだ。
〔マジで魔物いるじゃん!俺達はどうすれば良いんだ!?〕
〔今家にいるのですが、参加した方が良いのですか?返信お願いします〕
〔あんたらこの変な生き物と戦っているのか!?〕
〔ごめんなさい、忠告を無視してクエスト範囲に来てしまいました。場所は○○ショッピングモールのラウンジ、助けに来て下さい〕
〔腕を斬られて血が止まりません、あの傷を回復させられる金髪の女子高生の方来てくれませんか。場所は~〕
〔何故か一般の方々に無視されて手当て誰も手当てしてくれない。ガチ助けに来て〕
こんな具合にグループの通知は鳴り止まない。飯田がクエスト開始5分辺りで〔強い魔物がいるので来ない方が良い〕と言っていたが、忠告を無視してクエスト範囲に来てしまった者が数名いた。
だが当然助けに行ける者などいない、一般人からは姿が見えないし手当てもしてもらえない。もはや一人で負傷してしまった者が生還するのは絶望的に思える状況だ。
この人達の助けにはいけないな…そう言えば清水さんグループの方はどうなっているんだろう…
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