第121話 ドキドキ!クエストクイズ! 2

※この話以降は他グループの者もクエスト待機所の事をロビーと言います。



4人の答えがバラけて何かを察した川崎は腕を組みながら話す。


「これで話が嚙み合わなかった理由が分かったな、どうやらグループ事にロビーの場所が違うみたいだ。

二階堂、一度そのクイズはお預けだ」


「ええ~昨日頑張ったのに~」


「こうもグループ事に違いがあると、そのクイズの答えもそれぞれ違うかもしれない。それじゃあクイズは成り立たないだろ?」


「う~ん。ならクイズを出しながら、モノによっては他グループはどうなのかとか聞いていくっていうのはどうでしょう?」


「…そうするか。

ならロビーの話の前に、先ずはクイズの答えを聞こう」


川崎が話し合いの方針を決め、取り敢えずクイズの答えから聞こうとする。(プレイヤー上限人数のクイズ)

内野と梅垣は答えを300人と予想し、全員同時に答えを言う。


「「300人」」

「「200人」」


「正解は200人でした!傲慢と憤怒の二人も答えが同じって事は、これに関しては全グループ同じっぽいね」


笹森・小野寺は200人と答え正解した。これで全グループでプレイヤー上限人数が200人だと分かり、話はロビーについての事に移っていった。



強欲グループのロビーは大聖堂。

ステンドグラスや大きなシャンデリア、広間の側面には10個の石像、そして広間の奥には巨大な竜の石像がある。その巨大な竜の石像近くにクエストボードが現れる。


怠惰グループのロビーは玉座の間。

前方には一つ玉座があり、悪魔の顔の様なものが刺繡されている紫色の旗が壁に複数立てかけられている。クエストボードは玉座の前に現れる。


傲慢グループのロビーは焼け野原。

焼け野原と言っても戦争後の様に血だらけで、剣や鎧、ゴーレムみたいな岩の像の残骸、潰れたテントがあったりする。

透明な壁があるので行ける範囲には限界があり、中央にクエストボードが現れる。


憤怒グループのロビーは真っ暗な空間。

50回目のクエスト終了後に送られた白い空間が黒くなった様な場所。透明な壁があるので行ける範囲には限界があり、中央にクエストボードが現れる。



途中までは良かったが、笹森から憤怒グループのロビーについて説明を受けていると、笹森が他のグループの者が理解できない事を言い出した。


「ほら、真っ黒な場所ってクエスト範囲にもたまにあるでしょ?あれの中にいる感じですよ」


この笹森の発言から話を掘り下げていくと、どうやら憤怒クエスト範囲内には偶に真っ黒な空間があるという。ゲームの裏世界からマップの端に行った時に辿り着く様な真っ黒な空間らしい。

内野達は勿論のこと、傲慢・怠惰の所でもそんなのは見たことがなかった。謎は解けていないままだが、しばらくすると「一旦ロビーの話へ戻ろう」と川崎が言って強引に話を戻した。



全グループの聞くとどれも全く違うロビーであるように思えるが、話していくと一つの共通点が見つかった。

それは新規プレイヤーの現れる石レンガに囲まれた部屋がどのロビーにも存在している事だ。

大聖堂と玉座の間は普通に扉があるが、焼け野原と真っ暗な空間では透明な壁越しに石レンガで出来た直方体があるそうだ。木製のドアや部屋の広さから、どれも全く同じ部屋だと判明した。


「以前から玉座の間にあるとは思えない不相応な扉だとは思っていた。だがこれで何となく分かったな。

このロビーの違いに何の意味があるのかは分からないが、あの石レンガの部屋は新規プレイヤーを呼び出すために黒幕が無理に設置した部屋なんだろう。

やはり他グループと話し合う事で判明する事もあるな」




そして川崎がクイズを進めて良いぞと二階堂に言った事で、第三問目が出される。


「それじゃあ第三問!スキルで出した炎で炎色反応は起こるでしょうか?

一斉にYESかNOか答えてもらうよ。二択だけど難しいからポイントは3ね」


二階堂が難しいと言った通り、この問題には全員が頭を悩ましていた。怠惰グループの者も分かってない者が多く、あちこちで相談の声が聞こえてくる。

内野も頭を抱えて真剣に考えていた。


炎色反応って確か特定の物質を炎で加熱すると炎の色が変わる奴だよな。スキルで出したものでも化学反応が起きるのかって事だろうが…どっちだ?

多分炎で物が焦げるのも化学反応だし、スキルの炎でも物を焦がせるはずだ。これを考えると化学反応は起きるって考えになる気がする。


答えが出ずに悩んでいると、梅垣が小声で内野に話しかける。


「俺は起こると思うな。

確か炎色反応って燃やした原子にある電子が起こしている反応だった気がする。だから電子を刺激出来るなら、魔力から出来た炎だとか関係無く炎色反応は起こるはずだ」


「おお~そうなんですね、もしかして理系の大学通ってました?」


「一応はな」


二人の話が終わったタイミングを見計らってか、二階堂が手をパンと叩いて思考時間を締め切る。


「それじゃあもう答えは出せたかな?私の掛け声で同時に言うよ~

せーのっ!」


「「YES」」

「「NO」」


「正解はYESでした!強欲チームに3ポイント追加ね!」


綺麗に答えは割れたが、見事内野達は正解出来た。怠惰メンバーの予想も二つに割れていたようで、嬉しがる者・悔しがる者に半分程度分かれていた。

中には納得していない顔の者もおり、川崎はその者の方を見ながら口を開く。この時の川崎は頬を緩めており、何だか少し楽しそうであった。


「俺からも一つクイズだ。

酸素が無い空間や水の中で、スキルの炎は出せると思うか?」


「…今の答えから現実世界の炎と変わりなく化学反応が起こるのは分かりましたし、その理論でいけば炎は出せないんじゃないですか?」


「残念、実はどちらの状況でも炎は出せるんだ」


え?っという声が全員の口からこぼれたが、川崎はそのまま話をする。


「色々実験してきて分かることがある。少なくともMPさえあればどんな状況でもスキルは発動出来るみたいだ。

酸素が無い空間・低温の水の中でも炎は出せるし、岩を生成するスキルを太い木に対して使うと岩は木の中に生成される。

邪魔な物があっても必ずスキルは発動するというのは安心出来るな」


「あまり想像が付かないのですが、水の中で炎を出したらどうなったんですか?」


この内野の質問に対し、川崎は少し早口で答え始めた。説明をするのが好きなのか全く嫌そうに話しておらず、むしろ喜んで説明をしている様に見えた。


「大きいビニールプールに炎を出せる魔物を入れて実験していたのだが、魔物が炎を出した瞬間に水蒸気爆発が起きて大惨事になった。

人里離れた山の中でやっていたから良かったものの、公園とかでやっていたら爆発時に石とかが高速で飛び散り人に当たっていたかもしれない。

一応それ以降は大きな実験をするのを控えているが…やはりスキルや魔力とやらがどんなものなのか解き明かしたくてな、暇な時間は異世界や魔力の考察に時間を充てている。

ステータスやスキルだとかいう不思議な力を俺達は普通に扱っているが、魔力が一体何なのか、どういう原理なのかよく分かっていないだろ?

俺はその謎を謎まま残しておくのには抵抗があって居ても立っても居られない。科学の範疇を超えているものなのは理解しているが、それでも俺は少しでもこの力や異世界について知りたいんだ」


確かに俺達はこの力を使いこなしているが、結局のところ何も分かっていないまま使っている。

現に俺はスキルだとかを『不思議な事が出来る力』としか認識していなかった。最初は困惑していたが、最近はそういうものなんだと考え疑問にも思わなくなっていた。

川崎さんにそう言われると確かに気になるな、この力の正体が。


内野がそんな事を考えている間、川崎は一度深呼吸して落ち着きを取り戻す。


「…正直これらの話なら何時間でも話せてしまうから一度止めなければならないな。

さっきの笹森の訳が分からない発言についてもおおよその検討は付いてるし、今は二階堂のクイズを進めていこう。だが話したい事がまだまだ沢山あるし、逆に聞きたい事も沢山あるだろうからペースは上げるぞ」




これ以降はハイペースで二階堂のクイズは進んでいった。


・四問目

『交通事故で障害を負い両脚を動かせなくなった者にヒールを使った場合、障害は治るのか』


この問題の正解は『治る』だった。だが生まれつき障害を持っている者は直せなかった。



・五問目

『どのクエストでも同種の魔物のQPは等しいか』

例えば、とあるクエストでゴブリン一匹当たりのQPが4だったとする時、それ以降のクエストでもゴブリン一匹当たりのQPは4なのかという問題だ。


正解は×。どうやらクエスト範囲内でその魔物がどれだけの強いのかによってQPの値は変わるらしい。

とあるクエストではゴブリンは強い魔物ポジションで、一匹当たり4QP貰えていた。だが以降のクエストでゴブリンが居ても、他に強い魔物がおり、弱い魔物ポジションになっていると貰えるQPは2ぐらいになっているという。


そもそも知っておかねばならないのは、異世界にも食物連鎖があるという事だ。ゲーム終盤みたいにエリアに強い魔物しかいないだとかいう事は無いそうで、基本的にどのクエストでもそのエリアにおける食物連鎖の下にいる魔物は存在する。だからさっきのゴブリンの例みたいな事は何回もあったという。



・六問目

『同じ物理防御力の値の者が二人いたとする。一人はブヨブヨな太った体で、もう一人は筋肉ムキムキな者。その両者に対して同じ者が同じ力で槍を突き刺した時、負傷が大きいのはどっちか』


正解は太っている者。

そもそも、物理防御力を上げても身体の部位ごとに防御力は違う。例えば物理防御力30の者が一般人に腹をナイフで刺されても、多少跡が出来るだけで刃は全く刺さらないし痛くもない。だが目とか口の中みたいな急所・柔らかい所を刺されると無傷では済まない。

川崎曰く、物理防御力100であっても身体の柔らかい所などはそれが半減して50になっていたりするのではないかという。

だから物理防御力が高くなっているのは筋肉>脂肪であり、筋肉ムキムキで硬い部位が多い者の方が負傷はせずに済む。

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