第120話 ドキドキ!クエストクイズ!

川崎はゴブリンを膝の上に座らせ、その後も怠惰についての説明をする。


・闇や魔物を出すのにはMPを使う。しかも魔物が戦闘で消費するMPは本体の川崎のものなので、魔物に戦闘させるのには更にMPを使う。

・闇で魔物を吞み込んでも、その魔物を殺した判定になりレベルは上がる。

・仲間にした魔物は絶対服従。

・仲間の魔物が他の魔物を倒すと川崎のレベルも上がる。


一通り述べ終わると、川崎は一息つくように紅茶を一杯飲む。


「とまぁ…魔物を大量に出すのにはMPがいくらあっても足りないから、SPの大半をMPを増やすのに使っている。

仲間曰く『魔力探知』で見た俺の魔力は凄いことになっているらしい」


「ああ、貴方ほどの凄まじい魔力は感じた事が無い。敵でこんなのがいたら流石に俺も戦意喪失するな」


梅垣がそう言った事で、川崎は梅垣についての話へと移した。


「そういえば君は『魔力感知』を持っているんだったな。それに清水から君の動きが素晴らしかったと聞いているぞ。たった20回のクエストで身に付けられる動きとは到底思えないとな。

個人的には内野君と同程度にぐらいに興味がある、どうやって短期間でそれほどの動きを習得した?」


「使徒を殺す為に自分の全てを捨てたからだな。

生活や将来…それに人としての心まで全て捨て、奴を殺す為だけに前に進んだ。自分が生き残る為に見殺しにした命だって両手じゃ数え切れない程だ」


梅垣の話に耳を傾けていたこの場の者は、内野以外全員がクエスト歴の長い者。それ故にこの話だけでも梅垣がどんなことをしてきたのか想像が付いた者が多かった。


沈黙が流れるのを阻止するためか笹森が手を挙げ、川崎と梅垣の方を交互に見ながら質問をする。


「あの~『魔力探知』っていうスキルと『魔力感知』の違いって何ですか?

探知と感知の名前の違いで何が変わるのかあまり詳しくないので気になるのですが…」


「良い質問だね!」


笹森がそう質問を述べていると、店員の二階堂がハンバーグの乗っている皿をドッと机の上に勢い良く置き、明るく大きい声でそう言う。

そして間髪入れずに二階堂はカウンター席から数枚に重なった画用紙を取り出し、それを机に座っている6人に見せつける。(ゴブリン含めると7)


画用紙には大きな文字で『ドキドキ!クエストクイズ!』と書かれており、これから何が始まるのか大体の想像が付いた。


「これなら普通に話をするのより楽しめるでしょ?

ちょうど今の質問の答えもあるからやろうよ!」


「…二階堂、もしかして昨日の夜電話に出るのが遅かったのってそれを作ってたからか?」


「そうそう、ごめんね川崎さん!

強欲・傲慢・憤怒のメンバーが来るから盛り上げないと、って思って昨日頑張ってたんだ。簡単なものから難しいものまであるから退屈はしないはずだよ。

回答者は怠惰グループ以外の人で、優勝者には優勝賞品としてこの店の割引券を差し上げます!

あ、クエスト歴の短い強欲グループは二人相談して協力してもいいよ~」


二階堂は満面な笑みで皆の顔を見る。川崎はため息をつき、清水は賞品を見て「いらね」と言っていたが、案外その他の4人は興味を惹かれていた。当然優勝賞品に惹かれたわけでは無く、どんなクイズが出されるかに対してだ。


「面白そうですね、やってみたいです!」


「おお!それじゃあ早速やろうか!」


笹森が同意したことで、川崎の容認無く半ば強制的にクイズが行われる事となった。


「それじゃあ先ずは笹森ちゃんの疑問を除くためにこの問題!

『魔力探知』と『魔力感知』の違いはな~んだ?

分かった人は手を上げてね~ちなみにお手付きはこの問題での回答権がなくなるよ」


一枚の画用紙を表に出す。画用紙の真ん中には問題文、そしてその後ろに2ポイントと大きく書かれている。


当然この質問をした笹森は分からず、クエスト歴の短い内野も分からなかった。梅垣も少し悩んではいたが、答えが先に出たのは小野寺であった。


「スキルかパッシブスキルかの違い…だった気がします」


「正解!小野寺君に2ポイント差し上げます!」


二階堂に拍手され、小野寺は誇らしげな顔をする。周りの怠惰グループの者も「おお~」と言っており、昨日まで敵だった者とは思えない馴染み具合だった。

あまりに今日昨日でこれほど馴染んでいるのが不思議で、内野は小野寺に尋ねてみる。


「なんかお前凄いこの空間に馴染んでない?俺達よりも警戒されてないみたいだし」


「ああ。暴れられない様にされてるから、今の俺は警戒する程のものでもないって思われてるんだ。

テーブルの下からよく俺の足を見てみろ」


言葉通り内野は小野寺の足を見てみる。暗くてよく見えないが、小野寺の足はいたって普通だ。

だが小野寺が長ズボンの裾を少し上げると、小野寺の言っている意味が分かった。


なんと小野寺の両足にはスマホぐらいの大きさの虫が2匹張り付いていたのだ。それに驚いた内野を見て、川崎はゆっくりと解説を始める。


「そいつらは俺の出した魔物。小さくて弱そうな見た目だが、防御力150程度の者の首や脚なら簡単に食いちぎれる魔物だ。

今の小野寺はこの魔物を両足、胸、フードの中に入れているから、いつでも瀕死状態に出来る様になっている。だから誰も小野寺の警戒をしてないんだ」


内野は納得すると同時にゾッとした。昨日の小野寺への脅し方もそうだが、彼らの敵に対する容赦の無さに味方ながら恐怖を抱いた。


梅垣が「その魔物の魔力を感じない」と言った事で更に川崎からこの魔物の解説がされる。


この虫は魔力探知などに掛からず、相手の背後から多数で襲ってくる魔物。こいつに負傷を負わされる者、殺される者がかなり多かったと話す。

少しグロテスクな話へと移りそうになった時、川崎の話を遮る様に二階堂がクイズの第二問を出す。


「川崎さん、それ以上は食事時に言うのは辞めておきましょう!

それじゃ第二問行きますよ。プレイヤーの人数上限は何人だ?

4人の中で一番数字が近かった人が1ポイントね」


人数上限…なんだそれ?


内野と梅垣はこの質問内容が良く分かっておらず、その様子を見た二階堂が説明に入る。


「あ、強欲グループはクエスト回数が少ないから知らないか~

実はプレイヤーの人数がとある上限数までいくと、新規プレイヤーが現れなくなるんだ。その上限数がいくつかって質問。分からないなら当てずっぽうで言ってね」


「…梅垣さん、分かります?」


「これまでのプレイヤー最高人数は150人で、その時も普通に新規プレイヤー増えていたから150以上は確定だ。200とか300ぐらいじゃないか?それ以上の人数があのロビーに集まるのはキツい気がする」


「確かにそれ以上だと広間の人口密度が凄い事になりそうですよね…」


二人がそんな話をしていると、笹森が軽く梅垣の肩を叩く。


「ロビーって…もしかしてクエストボードが出てくる待機所の事ですか?」


「そうだ、俺達はそこをロビーと呼んでいる」


「それじゃあ…今言っていた広間って何ですか?」


笹森は頭を傾げながらそんな事を聞いてくるので、内野と梅垣も首を傾げる。何処かで話が嚙み合っていないのか両者の話の間には違和感があった。


「広間と言ったらあの大聖堂でクエストボードが出る場所しかないだろ?」


「…大聖堂って?」

「内野君、大聖堂って何の事だ?」

「…?」


内野の大聖堂という言葉を聞き、今度は梅垣以外の全員の頭の上に?マークが浮かぶ。


あれ?

何だこの反応…何かおかしい…何かが嚙み合ってないぞ…


周囲の様子に異変を感じ、必死に話が嚙み合わない原因を考えようとした時、川崎がゆっくりと口を開いた。


「…4人に質問だが、クエストボードが出るあの空間を一言で言ってみてくれないか?」


「「大聖堂」」

「真っ暗な所」

「焼け野原」



「「え?」」


内野と梅垣は同じであったが、笹森と小野寺が全く違う答えを口にした。そしてその後直ぐに、怠惰グループの者含めこの場にいる全員困惑の声を出した。

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