第115話 スキル検証
工藤が眠りについた後、大橋は揉めていた二人の肩を掴んでその場で座らせ、何があったのか話させる。
どうやら一人が『ショットストーン』を使おうとした時、もう一人がぶつかってきたせいでスキルを使う方向がズレ、女性に当たってしまったという。
二人は話をしていくうちにまたしても怒鳴りに合いになり、その都度松平の『メンタルヒール』で怒りを抑えさせた。
「内野君。もう数分で転移しちゃうし、その前に強欲を使ってみたら?工藤ちゃんみたいに無詠唱に一歩近づけるかもしれないよ」
「僕もスキルの練習がしたいから一緒に行こうよ」
内野の肩を後ろからトントン叩き、新島と進上がそう言う。
「そうですね、ここは松平さんと大橋さんに任せます」
「おう、強欲を制御できる様に頑張れよ!」
「ここは大丈夫だよ、いってらっしゃい」
二人に尋問を任せ、内野達三人は急ぎ足で先程のスキル練習場へと向かう。
さっきの事があってか、今度は皆安全にスキルを使う為に距離を取っていた。松野もテレポートの練習をしており、天井にあるシャンデリアに転移してそこから笑顔で手を振って来ていた。
スカイダイビングといい、松野って高い所好きなんだな~と思いながら手を振り返し、視線をスキル練習している者達の方に移す。
壁やステンドグラスに向かってスキルを使ったりしているが、どれも壁や床同様にほとんど傷は付いていない。
それを不思議に思いながらも進んでいると、ふとこんな声が聞こえてくる。
「なあなあ、さっきの傷の回復の仕方気持ち悪くなかったか?」
「俺もそう思ったわ。てか血やばかったよな」
「身体の肉が高速で再生する瞬間なんか見たくないわー気持ち悪すぎる」
そんな新規プレイヤー3人の声、話が盛り上がっているからかかなりの大声だ。それを聞いて内野と新島はその3人への不快感を顔に出す。
「なにあの言い方…」
「そう思っても口に出さないべきだろ…あの三人とも大人なんだし…」
二人がそう言うと、突然進上が進む方向を三人のいる方向へと変えて一人で歩いて行った。
進上は3人の近くに行くと、一人の肩に後ろから手を掛ける。
「え、え、あんただれ」
「ごめんね、話を遮るつもりは無かったんだ。ただ、クエストでは更にその気持ち悪さを上回るモノを見ることになるから気を下さいね。
…あ、見るというか、その気持ち悪いモノに貴方達がなるかもしれないですね」
「俺達が気持ち悪いものに…?」
「そう。例えば魔物に咀嚼されたらミンチ状態になりますし、身体を両断されて殺されたら死体の内蔵が外に出てきます。
貴方たちの基準じゃどちらも気持ち悪いモノだろうし、そうならない様に気を付けて下さい。じゃないとさっきみたいに他の人から「気持ち悪…」って言われちゃいますからね」
進上にそう言われ、三人組は顔が引き攣り何も返せなくなる。その反応を見るや否や進上は内野の元へと戻り「待たせてごめんね、でももう時間があまり無いから早く行こう」と言うので、二人は進上に着いて行く。
正直最近の進上さんは物騒な発言が多いし、最初の頃から少し変わった気がする。
まあ今のは少しスカッとしたし本当に起こり得る事だから特に何も言うつもりは無いけど…
「内野君、進上さんってああいう事言える人だったんだね」
内野がそう考えていると隣にいる新島が小声でそう話しかけてくる。
「なんかスライムの時の印象と違うからびっくりしちゃった」
「そ、そうですね。でもクエストを通して変わる人も沢山いるだろうしあまり珍しい事でもないと思うよ」
口ではそう言うが、内野は進上の変化には不安を感じていた。目の前に本人がいるからそれを口にはしないが、ここに進上がいなければこの気持ちを口にしていたかもしれない。
練習場に着いたので、先ずはステータス画面を開く。
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【スキル】
・強欲lv,4 ()
・バリアlv,4(50)
・毒突きlv,2(20)
・火炎放射lv,5(90)
・装甲硬化lv,1(5)
・吸血lv,1(10)
【パッシブスキル】
・物理攻撃耐性lv,6
・酸の身体lv,3
・火炎耐性lv,5
・穴掘りlv,2
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強欲を使うとMPが無くなるので、その前に毒突き・火炎放射・装甲硬化・吸血の最近手に入ったスキルから試していく。
隣では新島が『ポイズン』、進上が『炎斬一閃』の練習をしている。ただ、内野のスキルが気になるからかあまり手は進んでいない。
「毒突き!」
槍を持ったままスキルを使ってみると、身体が勝手に動いて槍を前へと突き出した。傍から見ればただ槍を前に突き出しただけ、槍にも変化はないし本当にスキルが発動したのか疑わしいほどであった。
これは実際に魔物に使ってみないと分からないか。それじゃあ次に行こう
「装甲硬化!」
スキルを使っても何も起こらなかったが、身体を動かそうとするといつもより関節を曲げにくくなっているのが分かった。新島に触れてもらう事で『装甲硬化』により皮膚が固くなっているのが判明した。
新島がドアにノックする様に内野の胸を叩くとコンコンと音がする。まるで亀の甲羅みたいだ。
動きにくかったのは関節部分の皮膚も少し固くなっていたからだと判明し、使い方に悩む事となる。
「動けない程では無いけど…戦いの最中に使うのは無理だな」
「青仮面の『フルメタル』ってスキルに似てるね。もしかすると無詠唱なら部分的に硬化出来るのかも」
取り敢えず今は使えない判明し、次は『吸血』の検証になる。
スキルを使ってみると歯に違和感を感じ、新島達に歯がどうなっているのか見てもらう。口を開けると内野の歯が動物の歯の様に鋭くなっていた。
「これ…嚙みついて血を吸えって事だよな…」
「魔物の血とか吸っても大丈夫なのかな?
でもまあ、そもそもこのスキルを使う機会なんて無いだろうしあまり考えなくもいいかもね」
「僕らみたいに前出て戦う場合はどうしても負傷が多くなるだろうし、吸った血を自分の血に変えられるなら使えなくは無いスキルかも。」
二人の評価通り内野もこのスキルについてはあまり使うつもりは無かった。
次にシンプルな名前で分かりやすい『火炎放射』の検証に移ろうとする。が、手を前に出してスキルを使う前に一つ疑問を抱いた。
もしかして…これってフレイムリザードみたいに口から火が出るのか?
サソリから手に入れた『毒突き』は、自分に尻尾が無いから槍に適応されたんだろうけど、今度のものは口だから…
内野の予想は的中し、なんとスキルを使うと口から炎が噴射した。炎が出続けて口を完全には閉じれず、始めて使うスキルなので炎の量の調整も出来ずにいた。
しかも火炎放射はlv,5になっており一度でMPを90も使うので、炎は内野の視界全てを真っ赤に染めるぐらい大きくなっていた。
スキル使用者の内野以外は離れていてもかなりの熱気を感じ、周囲の者は一旦離れて炎が止まるのを待つ。
「内野君!もう直ぐ転移が始まっちゃうよ!」
進上にもうそろそろ時間だと言われ、内野は最後に『強欲』を使おうとする。
まだ『強欲』を使ってないのに!こうなったらもう炎を吐きながら使うしかない!
「強欲!」
口を閉じにくいながらも強欲を使うと、いつも通り身体から闇が現れる。だがその闇が少し身体から出てきたタイミングと同時に青い光も現れた。
そして気がつけば内野は自分の部屋のベッドに横たわっていた。
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