第107話 仮面の情報
その後は通常通り授業があったが、授業の内容はほとんど頭に入らない。頭にあるのはさっきの戦闘や仮面達関連のものばかりだ。
それにしても…梅垣さんと清水さん、あと紫仮面の戦いぶりは凄かったな。
やはり梅垣さんは他のグループにも通用する強さを持っている。黄色と赤仮面と戦ってもかすり傷一つ付いてないし、ステータスの差がなければ圧勝だったはずだ。
そして槍使いである清水さん、あの人の動きも凄かった。まず『独王』で強化されていた赤仮面にも普通に攻撃が通用するほどステータスが高い、そして動きも梅垣さん並み。あんな人が敵にいたらと思うとゾッとするな…
相手の紫仮面もかなり強かったが清水さんには敵わなかった。でもあいつのスキルは閉所で真価を発揮しそうだし、場所が違えば結果は変わってたかもしれない。
頭に浮かんだ3人の戦闘センスを思うと、内野の中の自信はみるみるうちに小さくなっていた。そしてそれによりマイナス方向への考え方へと変わっていく。
もしが大罪スキルを持っている人が俺じゃなかったらどうなってたんだろう。梅垣さんみたいに強い人が持っていればもっと有効活用出来るんだろうな。
そして大罪スキルが無い俺は…
内野がここで思い浮かべたのは、フレイムリザードの時に木村と言い争っていた名も知らぬ青年の事であった。(46話)
『誰しもがお前のような考えを持ってると思うなよ!
俺からしたら先ずは自分の事を第一に考えるのが当然だし、誰かのためにあの場に残るなんて考え浮かんでこねぇからな!』
俺が大罪スキルを持っていなかったら…きっと彼みたいになっていたんだろう。
仲間の為に動いたりする余裕なんて無さそうだ。どうして大罪に選ばれたのが俺なんだろう…
ッ!?
とある事に気が付き、内野は急いで頭に浮かんだものを授業のノートに書いてみる。
〈クエスト回数〉
〈1回目〉本当の初クエスト
〈29回目〉前の『強欲』所持者グループ全滅
〈30回目〉梅垣さん達の初クエスト
〈46回目〉俺の初クエスト
〈50回目〉黒狼討伐
やっぱりそうだ…おかしい。どうして前の『強欲』所持者が死んでから期間を空けて『強欲』が現れたんだ?
おかしいのは大罪のいない空白期間が出来た事。どうして全滅した次のクエストで『強欲』が復活せず、こんな中途半端な時に現れた?
白い空間で、クエストの黒幕は大罪が復活した事への質問に対して「詳しく教えられないけど……システムの穴を突かれたって所だね」と言っていた。そのシステムの穴を突いたって奴が関係しているんだろうな…
特にヒントなどが無いので、やはりこの段階でいくら考えても答えは出なかった。
そんな疑問を抱えながら授業は終わり、鞄を持って松野と校舎裏にへと向かう。その間に学年主任の先生にされた話を松野に話した。
「内野が二つの件に関係しているのがバレたらどうなる事かと心配してたんだ、でもこの感じだと大丈夫そうだな。
外壁を伝って4階から1階に降りていたとかいう普通なら考えられないアリバイが出来たから一先ずは安心か。屋上には監視カメラが無いし、俺達が転移した所も廊下の監視カメラには映らないのはさっき見ておいた。少なくとも屋上の方のものに俺達が関与しているとバレる事はないだろう」
「そうだが…間違いなく今後は学年主任の先生に目を付けられるな。俺を守ろうとしてくれるから助かるけど、そうなるとまた学校で襲われたりした時に言い訳のしようが無くなるかもしれない」
今回は上手く誤魔化せたけど次以降はそうはいかないと思う。相手がこれ以上学校で問題を起こさないでくれると助かるのだが…
内野はため息をつき少し肩を落とすが、校舎裏に着く頃には気を引き締め直し、川崎達から届いていたメッセージを確認する。
先ずは仮面達のメンバーについての詳細。川崎達はスキル・レベルなどを聞き出していた。
赤仮面も全てのスキルを覚えている訳では無いらしいので、以下に書かれているのはその者が頻繫にクエストで使用しているスキルや有用なパッシブスキルのみ。そして全て赤仮面から見てのものだから不確かな情報もある。
(※それぞれの名前は覚えなくて構いません)
〇黒仮面
『
【スキル】
・テレポート
・独王
・千里眼
遠くの景色が見える
【パッシブスキル】
・MP自動回復効率上昇
MPの自動回復速度が上がる
レベルは102。独王を手に入れてからは魔物を倒す効率が上がり、急激にレベルが上昇した。クエストで誰かに遭遇する度にこっそり独王でステータスを奪っていたという。
元々は少し雰囲気が暗めの物静かな青年。この頃の黒沼は自分の才能の無さを嘆くような発言をしていた。
独王を手に入れても、最初のうちは特に何も変わりなかった。自分のステータスを仲間に与え、自分は瀕死の魔物に少し攻撃するだけというスタイルで行動していた。
だが暫くするとそれが一変し、ただ独王で他人を利用して強くなろうとするようになった。仲間に危害は加えないが、以前よりも過激な発言や行動が増えた。そして遂には『強欲』さえも欲する様になってしまった。
〇赤仮面
『
【パッシブスキル】
・跳躍
跳躍距離が上がる
・剣術
・動体視力向上
レベルは78。スキルも幾つかあるが基本は使わない。笹森の動きを封じた毒は『毒蛇の剣』という剣の効果、仮面達が持っている数少ないボスアイテム。名前がバレないように紅というコードネームで呼ばれていた。
『強欲』を手に入れれば黒沼が少しでも元に戻ってくれると信じ、仲間の中でも内野を襲うのに積極的に行動していた。
〇青仮面
『
【スキル】
・フルメタル
身体が硬くなって防御力が上がる
【パッシブスキル】
・バックシールド
不意打ちの攻撃を防ぐ。時間経過で再度発動出来る
レベルは82。基本は殴りで相手を倒すorフルメタルを使い盾役になるのどちらか。高校まで色々な武術をかじっており身のこなしは良い。性格は短気だったが、黒沼が変わってからは少し落ち着いた。コードネームは青。
黒沼についてはあまり言及していなかったが、そこまで今の黒沼に対する不快感を感じていなそうである。
〇緑仮面
『
【スキル】
・ウィンド
・ヒール
・幻影
特定の相手に幻を見せる
レベル65、サポートに徹しているので仮面の中でも一番レベルが低い。おちゃらけておりムードメーカーみたいな存在だが、直ぐに油断する悪い癖がある。コードネームは翠。
黒沼が変わってからも態度をほとんど変えてない。
〇黄仮面
『
【スキル】
・ツインスピア
二つの槍が飛ぶ。
・ロックオン
これを当てると、スキルや弓がその対象にホーミングするようになる。
【パッシブスキル】
・弓術
・視力向上
レベル86で弓を使って戦闘をする。翠と違って基本的に冷静で、どんな魔物と戦う時でも先ずは遠くから急所を狙う。コードネームは黄金。
今の黒沼に不信感を抱いており、内野を襲うのを一番最後まで拒否していた。
〇紫仮面
『
【スキル】
・シャドウウェポン
壁や床から武器を出す
【パッシブスキル】
・空間把握能力
周囲の物との距離や状況を見なくても理解出来る
レベル96で短剣を使い戦闘する。戦闘をするのが好きで、よく島之上(黄仮面)の制止を無視して魔物に突っ込んでいく。戦闘センスは傲慢グループの仲間でも飛び抜けている。ちなみに全員のクエスト歴は40回だが、薫森(紫仮面)に張り合えるのは恐らく傲慢グループでも片手で数えられる程度の数人しかいない。コードネームは紫苑。
黒沼が変わってもいつもの調子。大罪と戦えるという事を黒沼に言われると、内野を襲うのにノリノリになった。
先に全てを読み終わったのは松野で、口を開けて少し驚いた様な表情をしていた。
「へぇ~黄色の仮面の奴ってこの計画に乗り気じゃなかったんだ。それに赤仮面が内野を襲うのにやる気満々だったとは思わなかったな」
確かに内野もそこを気になったが、一番気を引いたのは薫森(紫仮面)の説明であった。
戦闘好きで魔物に突っ込む…か。進上さんもこんな感じだな。
いや、別に戦闘好きなのは良い。積極的に魔物を狩ってくれれば助かる人だっているしそこは悪くない。でも…
内野が思い出したのは、紫仮面と対面した時に言っていた進上の言葉。
『しつこくてごめんね。でも内野君の所に貴方を行かせるわけにはいかないから、何としてでもここで殺すよ』
『それよりも早くトドメを刺しに行かない?まだ死んでないかもしれないし』(99話)
進上の行動が自分の為のものという事は分かってはいたが、平気で人を殺すという発言を出来た進上に、内野は微かに進上に対して恐怖心を抱いていた。
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