第93話 怠惰との協力
取り敢えず新規プレイヤー達の騒ぎは収まり、飯田と松平の誘導により話は内野が襲われた事へと移る。
内野から何があったのか簡単に説明し、学校の場所も教えた上で緊急時に駆け付けられる者がいるか尋ねた。
ほとんどの者が離れているので無理であり、駆け付けられると名乗りを上げた者はわずか数名であった。
近場に住んでいる工藤と松野。
電車で数駅の所にいるという大橋。
職場がそこそこ近い川柳。
グループに居ないからこの場で発言は出来ないが、梅垣も来れる。
緊急時に駆けつけられるのはこの5名のみとなった。木村などの知人達は内野に申し訳ないと謝ってき、特に木村は
〔内野先輩に助けてもらった恩を返すため、学校サボってでも向かいます!先ずは近場の泊まれそうな所でも探そうかと思います〕
などと言ってきていたので、内野は流石にそれは断り気持ちだけ受け取っておいた。
グループでの話はそこまでだったが、松平から個人チャットが届く。
〔さっきも言った通り慎二君のお陰で『怠惰』の川崎賢人さんと接触出来たんだけど、どうやら君と話したいんだって〕
おお…これは俺からしても願ったり叶ったりの提案だ。
正直言って川崎さんはあそこで会った大罪の中でもかなり好印象の人。そんな彼と協力関係を結べればどれだけ助かる事か。
松平から川崎の連絡先を送られてきたので取り敢えず連絡をしてみると数分後に返信が帰ってきた。
〔先ずは君に礼を言いたい。
慎二が君の世話になったそうだな、俺の弟を守ってくれてありがとう。
君達が新規プレイヤー達を騙してでも使徒を倒そうとしていたのは聞いている。その中に慎二がいたと聞いた時は少し憤りを覚えたが、君に助けられて生還できたのも事実であるし今では感謝の方が大きい。本当にありがとう。
これも何かの縁だし、次のクエストが来る前に会ってみないか?
君達とは違ってこっちは50回クエストを経験しているわけだし、君達にとって何か有益な情報を出せるかもしれない。是非とも色々な情報を交換したい〕
内野がこの提案を断る理由は全く無いので、二つ返事でこの提案を受け入れる。
その時に仮面の者達の話をして向こう側の出方を確認してみる。あわよくば協力関係を結べないかと思っていると返信が来た。
〔そんな輩を野放しにしていたらいずれ俺達の方にも被害が及ぶかもしれない。それに君がそんな輩に連れ去られるのは俺も困る。
緊急時に君の所に向かえる者がいるか探してみよう〕
え、もしかして協力してくれるのか!?
(数分後)
〔君の生活圏近くに住んでいる者が1人いる。彼は仲間の中でもかなり腕が立つし、きっと君の助けになるはずだ。もしも何かあったら俺に連絡をくれ、彼には俺から通す〕
内野は川崎に礼を言った後、自分の思っていた通りに事が運んだので小さくガッツポーズをする。
まさかこんなにも早く協力してもらえるだなんて思ってもみなかった。至れり尽くせりに色々してくれて本当に助かる。
その後の話し合いで、襲われた時はグループと川崎にGPSで現在地を送る事となった。咄嗟にメールやメッセージを送るのは難しいという心配はあったが、とあるアプリのお陰でその心配は無くなる。
アプリを起動して画面中央をタップするだけで、予め設定しておいた送信先に今の自分の現在地が送れるというものだ。
それだけでなく、安否確認の為に8時・12時・17時・22時に内野がグループと川崎に何かメッセージを打つという決まりができた。
そして最後に今週の土曜日に川崎と会う約束をして話は終わる。(今日は火曜日)
本当は正樹のサッカーの試合があったが…優先すべきはこっちだ。本当は早くあいつと仲直りしたいし試合の応援に行きたいんだけどな…
今日は色々あって疲れたからか、話が終わると眠気が内野を襲う。だがまだ内野にはやっておきたい事があったので、頬を強く叩いて眠気を痛みで誤魔化す。
「ステータス」
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【レベル19】 SP34 QP42
MP 220
物理攻撃 85
物理防御 87
魔法力 56
魔法防御 84
敏捷性 55
運 6
【スキル】
・強欲lv,4 ()
・バリアlv,3(40)
・毒突きlv,2(20)
・火炎放射lv,5(90)
・装甲硬化lv,1(5)
・吸血lv,1(10)
【パッシブスキル】
・物理攻撃耐性lv,5
・酸の身体lv,3
・火炎耐性lv,5
・穴掘りlv,2
【アイテム】
・ブレードシューズ
・ゴーレムの腕
・鉄の剣
・鉄の槍
・光の玉×9
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SPは温存しておく予定だったが、そんな悠長な事は言ってられなくなった。今すぐこのSP34を何かしらに振っておきたい。ステータスに振っても1しか上がらないだろうし、上げるならスキルだ。
候補は直ぐに絞れた。
スキルは『強欲』『バリア』『装甲硬化』、パッシブスキルは『物理攻撃耐性』『酸の身体』『穴掘り』。
今の内野の必要な能力は援軍が来るまで時間稼ぎ。なので『バリア』『物理攻撃耐性』『酸の身体』などの耐久力を上げるものは当然候補に上がる。
『装甲硬化』『穴掘り』はまだどんなものなのか分からないが、耐久力を上げたり逃げるのに使えそうなので一応候補にのせた。
そして『強欲』、こればかりは耐久力がどうとかという話に関係なく候補に上がった。
俺が強くなれたのは『強欲』のお陰だ。だから早くスキルのレベルを上げておきたいけど…今はそれどころじゃないんだよな…
眠気に耐えながら悩み続け、ようやく出した答えは『バリア』と『物理攻撃耐性』を上げる事であった。相手の物理攻撃はパッシブスキルで軽減し、魔法系統のものはバリアで防ぐという考えだ。
そして最後に寝る前にやっておきたい事とは、先程確認した哀狼という名のついた装備の購入であった。
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哀狼の指輪 必要QP1
『主を止める為に自ら命を捨てる選択をした哀れな狼の魂。これは彼の選んだ道である』
購入しますか YES/NO
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消費QPが少ないけどあの黒狼のアイテムだ、何もないはずが無い。
今のQPは42だし1ぐらい使っても良いよな。魔力水は10QPだからQPが41になっても購入個数に変わりはないし。
購入すると目の前に黒い指輪が現れた。狼顔の装飾が掘っており目には赤色の宝石が埋まっている。
凄い…これ滅茶苦茶カッコイイ!
早速指輪を左手の人差し指に着けてみる。
が、特に何も変化は感じない。
今回は哀狼って名前のアイテムが二つだったし、もしかしてセットでそうびしないと駄目なのか?
『哀狼の雷牙』ってやつはQP50も必要だからそっちは暫く買う余裕は無いな。
ま、この指輪カッコイイから良いや!
突然襲われたりと嫌な事があったが、グループを作れたり、怠惰の川崎と協力関係を結べたり、センスが好みの指輪が手に入ったりと良い事も沢山あったので、この日内野は気分上々のまま眠りについた。
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