第92話 グループ

仮面の奴らに追われているのを他の人に見られていないか、動画などを撮られていないかなどを確認してみると今の所はそれらしきものは無かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何か最近の事件やばくね?


ヒグマを素手でなぎ倒したやつヤバ


最近人外多くね


不良の奴はスカッとしたわ


あの学校でヤンキーボコったやつお気に入り


あれ好き


日本で一体何が起こっているんだ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とあるサイトのコメントや掲示板などで反応を見てみると、最近起きた珍事件のお陰か内野の事件の事を話している者は以前よりも少なくなっていた。


ヒグマ倒したり車を体当たりで止めたのは人外事件とか言われてるけど、幸い俺のはその中に入ってないな。

でもこのままこんなニュースが続いたら怪しいし、俺の事件とも結び付ける人も出てくるかも…



テロン♪


自分の事件の世間の反応などを見ているとスマホの通知が鳴る。


〔グループに招待されました〕


それは松平からのメッセージをやり取りするグループのお誘いだった。グループの名前は無いが、入っているメンバーは全員プレイヤーだからなんのグループなのかは分かった。


グループを作るのは危険だから作らないんじゃなかったのか?

ここでの出来事はプレイヤー以外にバレてはいけないってルールがある以上は、迂闊にグループで何か話せない。もしも誰か一人でもプレイヤー以外にトーク履歴を見られたら終わりだ。


グループを作って大丈夫なのか尋ねるとすぐに返信が返ってくる。


松平〔心配しないで!どうやらグループとかのトーク履歴を見られても大丈夫らしいの。詳しいことはグループに貼ってあるからそれを見て〕


どうして大丈夫なのかだとかは分からなかったが、詳しく話を聞くために内野はグループに入った。この段階では40人ぐらい招待を受けていたが、グループに入っているのはまだ数人であった。


グループにあるタイムラインの様なものに色々記載されていたので、取り敢えずそれを全部読む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今から書くのは全部『怠惰』の川崎さんからの情報だよ!


・あそこでの出来事が書かれているメッセージをプレイヤー以外に見られたとしても、能力を失うのは見られた本人のみ


・見られたとしても、相手に全く信じられなければ何も起きない(どの程度かは分からない)


・プレイヤー以外の前でもスキルは使ってよい


以上の事から、自分の口から話さない限り能力を失うことは無いらしいの。だから自由に連絡しても大丈夫だって!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


怠惰って…川崎さんの事だよな?どうして松平さんが彼の情報を知っているんだ?


内野がグループで尋ねてみると直ぐに返信がくる。


慎二〔実はあれ、僕の兄なんです〕


!?

返信してきたのは知らない人だが、凄い衝撃的な事を言ってる人がいるぞ!


慎二〔どうも内野さん、この前助けてもらって共に行動させてもらった者です〕


あ、慎二って…確か前回一緒に行動したあまり目立たないタイプの子か!(73話)

そう言えば名前は「川崎 慎二」だったし、兄の「川崎 賢人」さんと同じ名字だ!


内野〔君だったんだね、てかあの人が兄なのって本当!?〕


慎二〔はい、これツーショットです〕


慎二と兄の賢人が肩を並べているツーショットが送られてきた。賢人は少し照れくさそうにしており慎二は笑顔。とても微笑ましい写真だ。


慎二〔本当は皆さんと白い部屋の様子を見てる時に言うべきでしたが、あまりにも見た目が変わっていたので本当に兄なのか疑わしくて言えませんでした。

もう5年は会っていなくて、身なりも兄らしくなかったので…〕


5年も会ってなかった内に身なりが変わったというのは何か事情があるのだろうが…流石にここでは聞けないな。

でも他の大罪の人と繋がりが出来たのはデカい。あの人は俺達の知らない様な情報を持っているだろうし、是非とも仲良くしたい。


大橋〔前からグループ作りたいと思っていたしな、あんたの兄に礼言っといてくれ。有益な情報感謝する!〕


尾花〔おっと…見かけねぇ顔だな〕


工藤〔@尾花 あんた誰よ〕


尾花〔尾花です〕


工藤〔それはアカウント見れば分かる、クエスト何回目の人?〕


尾花〔まだ一回。俺も慎二君と同じで内野君と同行していた者だ〕


あ、この人はあのチャラい見た目してる人か。やっぱ新規プレイヤーの名前は一回じゃ覚えてられないな。


泉〔あ、尾花って言うんですね。ごめんなさい…名前覚えるのが苦手で忘れてました(´;ω;`)〕


内野〔申し訳ないですが俺も…〕


尾花〔大丈夫大丈夫。俺もあんな状況だと人の名前なんか覚えられないだろうし気にしないで!〕



続々と色んな人がグループに入って来てチャットが賑やかになっていく。これでもう顔見知りで入って来てないのは進上ぐらいであった。


そして…


飯田〔皆久しぶり!

僕が居なかった間に起きた事は大体聞いてるよ。これからもクエストは続くらしいけど、共に協力して頑張って生き残ろう!〕


皆のリーダー飯田もグループに入ってきた。飯田が帰ってきた事に歓喜し、更にグループは盛り上がる。


だが内野は飯田の帰還を皆の様に純粋に喜ぶ事は出来なかった。それは松平から聞いた飯田の心を知ってしまったからだ。(53話)


…このまま飯田さんにリーダーを任せて良いのか不安だな。早いうちにリーダーなんてもの無くすって話をするべきか?

いつもは個人でのみやり取り出来なかったけど、グループで話す事で仲間って意識が更に強くなった気がする。これを機に皆の前で本心を打ち明けて新しい道を進むべきなのかもしれない。



このままグループでの話は盛り上がっていったが、いい方向へのみ進んだわけじゃなかった。47人の生還したプレイヤーのうち新規プレイヤーは10人ほど。そしてほとんど新規プレイヤーは前回騙された事を根に持っており、その者達の怒りは当然グループにまで広がる。


〔リーダーが生き返ったとか知らねえよ。お前らのせいで何人死んだと思っているんだ?〕

〔騙されたこっちの身にもなって下さい〕

〔あの黒いローブのやつ出てこい、あいつと話をさせろ〕

〔しっかりとした謝罪が欲しいです〕


まだ騙した事への謝罪は出来ていないのでそれは当然の怒りであった。

元々新規プレイヤーを騙すのに躊躇っていた木村や松平はすぐに謝罪のコメントを残しており、それに続いて内野や他のメンバーも謝罪する。


だが新規プレイヤーの怒りは収まらないのか、特に梅垣の共犯者と思われている内野には非難が殺到した。


〔あの黒ローブと一緒に前に出て俺を騙したお前は絶対に許さん。責任取って早く死ねや〕

〔平気で人を騙せる人だったなんて残念です。もしかしてあの事件も貴方が原因なんじゃないですか?〕

〔学校・顔・名前は分かってるんだ。お前の家の特定なんか容易だぞ?〕


やっぱりそうなるよな、この人たちの怒りは分かる。

でもこれにどう返せば良い…謝った所でこれだ。きっと何を言っても…


内野が返信に困っていると一人のメッセージがグループに発信される。


〔一つ言わせてもらう、彼らは俺の言う通りに動いただけだ。

まず、あそこで皆を支配できるのは一番強い者。法など無いあそこでは強者に従うしか無いからな。

そしてあの場で一番強かったというのは俺だ。

ここまで言えば無知のお前らでも分かるだろ?

彼らは俺の言う通りに動くしかなかったって〕


この発言したのは梅垣であった。梅垣が新規プレイヤー達の怒りを更に爆発させるような発言をしたことに驚くが、すぐに次のメッセージが送信される。


〔飯田が復活したからもう俺の好き放題には出来ないが言っておこう。俺はお前ら新規プレイヤーを含め、他のプレイヤーも駒としか思っていない。だからお前らとは協力するつもりなんて無い〕


梅垣の発言に焦っていた内野だったが、この発言で何となく梅垣の意図が分かった。


…梅垣さんは今俺達に抱かれている悪い印象を全て被り、まるで飯田さんが梅垣さんを止める事の出来る凄い人の様に見せるのが目的なのか。

これなら新規プレイヤー達は梅垣さんを目のかたきにし、梅垣さんに対抗する飯田さんの言う事なら聞くようになるかもしれない。

でもこれじゃあ飯田さんがリーダーの座から解放されるのがさらに遠くなってしまう気がする…

それにこの方法じゃ梅垣さんと新規プレイヤー達の軋轢は更に深まるばかりだし…



そのあと飯田と梅垣の言い争いになり、梅垣をグループから抜かす事で飯田は見事に新規プレイヤー達の信頼を勝ち取った。

勿論これは新規プレイヤー達にのみ見せる演出であり、梅垣がそんな酷い事を考えていないというのは個別に松平と飯田から皆へ伝えられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る