第85話 狂気の2-3

テロン♪


歩いていると何かの通知が届く。スマホの上画面を確認すると松野から連絡がきていた


〔休んでる場合じゃないぞ!早く来ないと体育祭で凄いことになるかもしれんw〕


体育祭って…確か来月か。その体育祭で凄いことに?一体何が起こるんだ?


何が起きているのか分からないが、内野は急いで学校へと向かう。

身体がいつも以上に軽くいつも以上のスピードが出るので、今後電車は使わなくてもいいかもしれないだとか、今なら校庭からジャンプしても2階の教室に届くかもしれないだとか、今の自分が本気を出せばどれだけ動けるのかを考えながら学校へと向かう。



内野が教室に入ると、授業時間のはずなのに何故か誰も教科書を開いておらず、委員長が先生の代わりに教室の前に出て黒板に何かを書いていた。

教室のドアが開いた瞬間に全員が一斉にこちらを向いてくる。そしてこの前までは有り得ない事であるが、ほとんど全員が挨拶してきた。

慣れないので驚きながらもそれに返す。


それにしても出席率高いな。前までは毎時間誰かしら授業に出てない奴がいたけど、今では綺麗に小西以外皆揃ってる。そうみると学校をサボろうとした俺が一番悪いじゃないか。

皆には問題起こすなってルール出しておきながら…いや、勝手に誰かが広めた噂だから俺が出したルールじゃないんだけど…


内野は自分の席に向かいながら委員長が書いたであろう黒板の文字を読む。



      男:女  男       女

100m走  5:5  内野

200m走  3:3  山田・内野

長距離走   1;1  内野

障害物競走  3:3  内野

借り物競争  2:2  内野

三人四脚  12:12  内野

団対抗騎馬戦 8:8  内野

尻尾鬼    5:5  山田・内野

団対抗リレー 3:3  山田・内野

クラス対抗リレー(全員)  

団対抗綱引き(全員)


おい待て…なんだこれ。遂に勉強のし過ぎで頭おかしくなったのか委員長


「あ、内野君。すっかり皆の人気者だね、取り敢えず何の種目に山田君と内野君を入れるかから考えてるよ」


「…授業はどうしたの?あてか何で俺の名前が…」


「今日の化学の授業は先生がいないから自由時間。何故か代理の先生も来なかったし、皆テスト勉強はしたくないらしいか今体育祭の出場選手を決める事になったんだ。

内野君の名前が沢山あるのは、『対戦相手は内野の機嫌を損ねたら鼻折られるって思って本気出せない』って皆が言ってるからだよ」


成程、おかしくなったのはクラスの皆か。

お前らこんな卑怯な手を使ってまで勝ちたいのか!?


「だけど体育祭のルールで、同一の人物が出れる個人種目の数は3つまでなんだ。

それでどの種目に内野君や山田君を入れるか考えてる最中。ちなみにもう山田君には好きなやつを選んでもらったんだ」


「僕は200m走、尻尾鬼、団対抗リレーだよ。団対抗リレーは配点が高いから皆からの推薦だけどね」


団対抗リレーとは1クラス男女6人選出し、他学年の同じ色の団で協力するリレーだ。俺達は2-3組だから、1-3組,3-3組が仲間だ。

これが体育祭で一番盛り上がるらしいが…去年までは特に興味も無かったから走る順番とか詳しいことは知らない。


確か去年は三人四脚にだけに出たな。全員一種目には出ないといけないルールがあるから消去法だ。


「内野君には長距離走、団対抗騎馬戦、団対抗リレーを頼めないかな?

小西…君がいたら多分この3つに出てたと思うんだけど…多分来ないからさ」


「ま、まぁ別に大丈夫だよ」


教室に入った時はてっきり全種目に出ることになるかと思ったから、別に3種目なら問題ないだろう。



いや、問題あるわ。今の俺のステータスで加減できるようにならないと…

俺TUEEEEEEEは憧れるが、騎馬戦で相手を飛ばしたり、長距離走とかリレーでヤバい記録とか出したら洒落にならないしな。


その後も種目決めは続いた。

松野は団対抗騎馬戦・団対抗リレー・借り物競争に出る事になり、後の種目は適当に何かやりたい種目がある人が優先して入れられ、余った人は三人四脚に入れられた。




5限目の自由時間、6限目の英語の授業が終わり放課後となる。

6限目の授業を受け今回のテストは終わったと悟る内野であった。初めて異世界に行ったあの日からの授業の内容が頭に入っておらず、教科書が何処まで進んでいるのかすら把握していなかった。


「松野、頼む…俺に英語を教えてくれ」


松野の席まで行き、手を合わせて頼み込む。

内野は松野に教えを乞うしかなかった。本当は学年トップの山田に教えてもらうつもりでいたが…

=====================

(数分前)


「春樹く~ん♡勉強教えて~♡」(春樹は山田の名前)

「私にも!」

「二人っきりがいいな~」


山田は数人の女子に囲まれていた。先輩後輩同級生、皆山田に勉強教えてもらうために来たらしいが、勉強よりも山田と一緒に過ごすのが目的なのは目に見えていた。


正直俺も山田に英語を教えてもらいたい、俺も山田に聞きに行こう。


内野は立ち上がろうと席から腰を浮かすが…すぐに腰を下ろす。


う、女子が沢山いる…あの中にずけずけと入っていく何て無理だ…

多分俺が行っても山田は一緒に勉強しようだとか言ってくれるだろうが、その時に女子からどう思われる事か…

今の学校の番長的なポジションの俺が誘えば、多分女子達は嫌な顔を表に出さないと思う。

でも裏で何か言われると思うと…やっぱ無理だ。それが出来るほどの度胸は俺にはない。

クエストの時はこんなじゃないのにな…

=================


「ほう…俺は山田の代わりだと」


「いやいや、そんなんじゃないって」


「さっき山田のことチラチラ見てて、何回も話しかけようとしてたの知ってるからな」


松野にはバレていたようで、情けない所を見られた事に少し恥ずかしくなる。



何だかんだで松野は内野に英語を教えてくれ、他の科目の分からない所までも教えてくれた。


ちなみに外ではクエストでの出来事などについて触れないように言ってあるので、学校ではいつも通りにくだらない事しか話してない。

話したのは、今日の夜に梅垣さんと話すという約束した報告ぐらいだ。




テロン♪


松野に勉強を教えてもらっていると、スマホに何かの通知が来た。内野はスマホをポケットから取り出して確認すると


〔お前の家族・友人全員ぶっ殺してやる〕


「…は?」


「ん?どうした?」


思わず出た声に反応し、松野がスマホを覗いてくる。


このメールはおふざけか?流石に洒落にならないぞ。


「それ、いたずらか?」


「分からないけど…これはおふざけで済む話じゃないぞ」


「もしかして小西関係の誰かかもしれないな…お前にやられたのに根を持って復讐しようとしてるとか」


「小西の場所分かるか?」


「詳しくは知らんが、お前に殴られて頭蓋骨にひびが入ったのがまだ治ってなくて入院中だ。警察の監視下に居るらしいし、あいつが命令を出したとは思えないな。

多分誰かが勝手に動いたんだろ」


俺が恨みを買ってるのは小西達ぐらいだし、多分あいつらなのだろう。

このメールがおふざけなのかは分からないが絶対に止めてやる。


それに関する話はこれで終わったが、結局それ以降はあまり勉強に身が入らなかったので早いうちの切り上げて帰ることにした。




今日は内野一人で下校する。

いつも佐竹と帰っていたが、今週の土曜日に試合があるので今日は部活に行っている。

たとえ部活が無くても、この前の出来事で少しギスギスしているので一人で下校していただろう。(62話)



帰る時、試しに本気で走って帰宅してみる事にした。

体育祭に出るならある程度加減出来るようにしないといけないので、その練習も兼ねて取り敢えず自分の全力を知りたかった。

普通なら学校から家まで走ると30~40分以上かかるが、今なら信号に幾ら捕まっても20分経たずで着くのではないかと予想する。


内野はスマホで時間を測れるようにし、全速力で走り出した。




が、僅か数分で足を止める。

それは全力で走るとあまりにも速く普通に車も抜かせるぐらいなので、とても歩道で出して良い速度じゃなかったからだ。


でも今ので全力で走った時のスピードは分かった。問題は加減が出来るかだけど…


さっきの悪質な内容のメール・来週のテスト・急にルールが変わったクエスト。これらの事で頭がいっぱいだったので、正直あまり余裕が無くて力の加減の練習に乗り気ではなかった。


はぁ~加減する練習か、何処で練習すればいいんだろう。家の周辺で練習してヘマしたらまた変な噂が付くだろうし、それだけは避けたい。

今日は良さげな場所だけ少し見つけて直ぐに帰ろ。


内野は走る加減の練習をするのに適してそうな場所を探しながら帰る。


歩きながら探していると、人がいなさそうな路地を発見した。スマホのGPSも見る限り、そこそこ道が長そうな所だ。


試しに入って確認してみると、そこには通行人が一人もいなかった。

100mは無けどが十分走れそうだな。走る加減と言っても、別に平均ぴったりだとかにするわけでは無い。

オリンピック出場選手並みの記録を出してしまわないようにする為だ。流石に大勢が見ている体育祭でそんなヘマしたら言い訳のしようが無い。

親にはスポーツクラブに通ったとか言っても、流石に噓だとバレる…か?

いや、俺が小西ボコったのも道場通ったと言ったら信じたもんな…



バッ!


突然の事だった。

何者かが内野の頭上から現れ、赤黒い剣で内野の背中を斬りつけてきた。


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