第84話 夜更かし
念の為に工藤と進上に新島を生き返らせるむねを伝えてから蘇生石の購入画面を出す。
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蘇生石 必要QP50
『この石を所持しながら死んだプレイヤーの蘇生を願うと、その者の魂は再生され蘇る。』
購入しますか YES/NO
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前のクエストから丁度一週間になるな。だがこれでようやく新島は生き返る。新島から見れば、生き返ったらいきなり2ターン目だとかクエストのルールが変わったりだとかで戸惑うかもしれないけど、黒狼の事含めて全部丁寧に説明しよう。
取り敢えず内野は蘇生石を50QPで一つ購入してみた。帰還石はスマホくらいの大きさの青色の半透明の綺麗な石であったが、蘇生石は緑色であった。
買ってみたのは良いが…今使って良いのか?
もしここで生き返ったら、肉体だけが作られて裸とかじゃないよな?説明文には魂が再生されるってあったが…物は試しだ、使ってしまおう。
内野は蘇生石を手に持ち、新島の事を思い浮かべながら生き返る事を願う。すると蘇生石は手の中で砕け散った。
え!?まさか力加減が…
蘇生石を握る力が制御できなかったせいかと思ったが、砕けた蘇生石からは緑の光の塊が出てきた。そしてその光は天井を通り抜け、何処かに向かっていく。
もしかして…今の光が新島の魂?
それなら…
内野は急いで新島に通話を掛けてみた。
『………ねぇ、今何が起きたのか分からないのだけど。あなたはこの状況分かる?』
聞き覚えのある声だ。最後に聞いたのは一週間前、つい最近だが、それでも今の内野にはとても懐かしく感じた。
そして新島の声が聞こえた瞬間、内野の中にあった不安やが一気に無くなっていった。新島が死んだと分かった時に感じた胸の痛みも完全に消えていく。
内野は少し声が上澄みながらも新島に経緯の説明を始める。
「何が起きたのか分からないのも無理はない。
実はフレイムリザードのクエストの時に死んだ新島を生き返えらせたんだ。蘇生石ってアイテムがあって、50QPと高額だけど…
『フレイムリザードのクエスト…って何の事?
まだスライムとゴーレムのクエストしか受けて無いのに…』
「…え?いや、そんな訳が…」
一瞬新島がふざけているのかと思ったが、声のトーン的に本気で分かっていない様だった。
『いや、本当にフレイムリザードのクエスト何て知らないよ。それに私が死んだなんて……からかってるの?』
おかしい、話が合わない。新島は確かに3回目クエストに参加している、ロビーでも新島と話したぞ。でも何で…今の新島はそれを覚えていないんだ?
新島と話した事で分かった。どうやら新島の記憶は、三回目のクエストがあった日のロビーに転移する直前の19時半まではあるらしい。
しかしそれ以降の記憶は無く、新島からしてみれば〈一週間前のロビーに転移する瞬間→今〉まで突然飛んだ感覚らしい。
一瞬のうちに部屋の物の場所や服、それと外の明るさが急に変わったので困惑したそうだ。
内野は新島にこれまでにあった事の全てを話した。説明が難しくて数時間かかったが、ようやく新島は納得できたようだ。
『一応何が起きたのかは分かったけど…すぐに吞み込める自信は無いな…』
「そうだよな、取り敢えず今はもう寝て頭を休ませた方がいいかも。もうそろそろ深夜3時越しちゃうし」
『君もね。さっきようやくクエストが終わったばかりなんだし休んで方がいいよ』
新島がそう言うと一言返す間もなく通話は切られる。そして内野はベッドで横になり目を閉じる。
もう3時過ぎか…眠い………明日は学校休んじゃってもいいかな…?
(火曜日)
内野が目を覚ました時にはも12時過ぎ。
スマホの画面をつけっぱなしのまま眠っていたのでスマホの充電はほとんど無くなっていた。
8時間以上寝たお陰で疲れはあまり感じないな、てかもう学校には間に合わんか。今日は休もう…って、あれ…なんで母ちゃんは起こしに来なかったんだ?いつもなら無理にでも起こしにくるのに…
取り敢えず一階に下りてみると、そこにはいつも通りに家事をしている母がいた。
「おはよう、やっと起きたのね」
「おはよう…俺のこと起こした?」
「今日は起こしてない。昨日夜遅くまで彼女と電話してたんでしょ?
無理に起こしても二度寝するだろうと思って起こしてないわ。学校には体調不良だって連絡入れておいたから、今から行くか休むかは選んでいいわよ」
彼女…?
内野は母の言っている事が分からず首をかしげる。
「朝起こしに行ったらスマホの画面が付いてて、藍ちゃんっていう子と昨日の夜に数時間通話してたトーク履歴が見えちゃった」
藍って…新島のアカウントの名前だ。母ちゃんは新島が俺の彼女なんだと勘違いしてるのか。
この前父ちゃんに工藤と歩いている所を見られた時「遂に我が息子に彼女が出来たぞ!」って家でもうるさかったし、それを聞いていたから母ちゃんは勘違いしたんだな。
「息子が彼女と電話してたからって、学校を休むのを許すのは…」
「この前あれだけの事があったんだし無理に学校に行かせる必要なんて無いと思ってね」
「…なるほど。ならお言葉に甘えて今日は休む」
母として、小西との騒動があっても平然と学校に通う息子に少しは休んで欲しいという気持ちがあるんだろうか。
今日は学校を休む事にして部屋に戻りスマホに手を伸ばそうとすると、カレンダーのとある日が目に入った。
あっ来週のテストやば。
最近クエストだとか色々あって全く勉強してないぞ…それに教科書とか全部学校だ…
結局内野は遅れて学校に向かう事にした。
登校中は、黒玉が言っていた事に関する考察だとかよりも先に、まずは自分のステータスを確認する。黒狼の奇妙な行動についての考察は梅垣と相談しながらの方が良いと考えたからだ。
ステータスボードを開いて歩いていても自分にしか見えないので、周りから見たら変な所を見てる変人に見えてしまう。なので内野は歩きスマホしてるふりをしながら自分のステータスを開く。
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【レベル19】 SP46 QP52
MP 200
物理攻撃 85
物理防御 87
魔法力 56
魔法防御 84
敏捷性 55
運 6
【スキル】
・強欲lv,4 ()
・バリアlv,3(40)
・毒突きlv,2(20)
・火炎放射lv,5(90)
・装甲硬化lv,1(5)
・吸血lv,1(10)
【パッシブスキル】
・物理攻撃耐性lv,4
・酸の身体lv,3
・火炎耐性lv,5
・穴掘りlv,2
【アイテム】
・ブレードシューズ
・ゴーレムの腕
・鉄の剣
・鉄の槍
・光の玉×9
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相変わらず凄いスキルの数だが…吸血とか穴掘りってスキルは何処で使えば良いんだ?
それにサソリから手に入れた毒突きってスキルは、本来なら尻尾で突き刺すスキルなのだろうが、尻尾が無い人間の俺が使ったらどうなるんだろう。
てかやっぱり運のステータスだけは上がっていないのも気になる。
ゴーレムを呑み込んだ時は、魔法力と魔法防御の二つが上がっていた。他の所は一切変わっていなかったし、多分1体吞み込んでもステータス項目のうち2つしか上がらない仕様なんだと思う。
その上がるものは恐らくランダムだから、偶然として片付けるには無理ある気がするが、偶然という可能性も少しは残ってる。
この運ってやつは謎が多いステータスだ。
松平さん曰くSPを使って上げても運の値だけは必ず1ずつしか上昇しないらしい。明らかに他のステータス項目とは違う扱いなわけだし、それが何か関係してるのかもしれない。
極めれば最強だとかという可能性はあるけど、貴重なSPを使ってこれを上げるのはリスクが高過ぎる。今度あの黒い球と話せる時に聞いてみよう。
運についての考察を終えた所で、昨日の黒玉の言葉を思い出した。
『もう質問は閉め切っちゃった。あと何か聞きたいのなら自力でここまで来てよ』
あれって…自力であそこに行く方法があるって事だよな?
今はどうすればいいのか全く分からないけど、他の大罪のグループの人と話せれば何か分かるかもしれない。
本当はあの白空間で他の七つの大罪の人にも話を聞きたかったな、50回もクエストを経験してるらしいし俺よりも色々知ってるだろう。
あの空間にいる時に連絡先でも交換しておけば良かったと後悔していると、適当にいじっていたスマホのとあるネットニュースの記事が目に入る。それは内野の学校で起きたあの事件の事だ。
うわぁ…森田さん(前クエストで知り合ったメガネの人)が言ってたけど、やっぱり色んな情報が出てるんだな。
幸いこの記事には俺の名前は無いけど、小西達の名前は全部載ってる。それに学校名も完全に出てるし…
あ、そういえば今の俺は有名人だ。それに他の大罪の人達もこの事件について知っていた。
もしかすると…彼らの方から接触があるかもしれないぞ!
有名になったお陰で他のグループのプレイヤーと接触出来たら、小西達に殴られた甲斐もあったってもんだ。
ようやくあの事件で話題になった事がいい方向へ動き、内野は上機嫌になった。
取り敢えず今はSPが沢山あるが、今後他のプレイヤーから運の情報が手に入るかもしれないし、今はどれを上げるべきか分からないのでSPは温存しておく事にした。
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