迫り来る異世界
嫉妬の仮面編
第83話 自殺?
「ッー!」
意識が戻り咄嗟に周りを見渡す、いつも通りの自分の部屋だ。家の時計を見ると23時頃でまだ日を跨いでいなかった。
まだ色々と聞きたいことがあったのに…次にあいつに会えるのは2ターン目が終わってからって言っていたな。
何カ月先になるか分からないが、次は予め聞きたいことを整理しておこう。
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1位 内野 勇太 QP77 +SP5
2位 松平 愛奈 QP50 +SP4
3位 進上 誠也 QP37 +SP3
4位 松野 悠大 QP30 +SP2
4位 梅垣 海斗 QP30 +SP2
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ターゲット討伐者
『内野 勇太』『松平 愛奈』
『松野 悠大』『梅垣 海斗』
『進上 誠也』 +QP20,SP10
他のプレイヤー +QP10,SP5
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いつも通りランキングが目の前に現れたが、使徒という強力な魔物を倒したからか今回の報酬はかなりものになっていた。
梅垣さんも生きてるみたいだし、強欲で黒狼を吞み込むのが間に合ったのか。
てか松野がQP30も稼いでるのは倒す前に黒狼に攻撃したからか。あまりダメージ食らってなさそうだったけど、あれでも倒した判定になるんだな。どこまでが魔物を倒した事になる攻撃なのか今度調べてみ…
あっ、てか皆が無事か確認しないと!
自分のスマホを取り出して連絡が来てるか確認しようとすると
♪~
内野がスマホを手に取った瞬間に着信が来た。どうやら松野からだ。他の人からも何件か通知が届いているが、取り敢えず最初に通話に出る。
『内野!あれって現実だよな!?』
「え…ああ、そうだぞ。夢じゃなくて現実だ」
夢でも見ていたのかと思ったのか開口一番にこの言葉である。だが松野は暗い様子ではなく、むしろ少しワクワクしている様な声色であった。
「それよりもあの黒い球の話って、そっちもロビーで聞いてたんだよな?」
『うん、俺達も最初の集まってた場所で聞いてたぞ』
「って事は他の皆は…」
『皆…といっても俺はあまり分からないけど、迷彩服の人が一人一人確認してて、見知った顔の人は全員居たらしいくて喜んでたぞ』
松平さんか…松平さんが一番顔が広いだろうし、あの人が喜んでたなら大丈夫って事だな。少なくとも俺の知人は死んでないだろう。
『そうだ内野。お前は途中で倒れたから覚えてないと思うけど、お前がスキルを使った後の事を話させてくれ。
あれを見ていたのは俺と進上って人だけだったんだけど…明らかにおかしい事が起きたんだ』
さっきより松野の声のトーンが低くなったので、この語り出しで本当に何か異変が起きたのだと分かった。
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「強欲!」
そう内野が黒狼に近づきスキルの名前を叫ぶと、身体から闇を放ちながら突然地面に倒れた。
黒狼は内野から闇が溢れ出るのを見ると、さっきまでの動かずに止まっていたのが噓のように飛び上がり、内野から現れた闇から距離を置く。
だが無理矢理動いたせいなのか、その後は苦しそうな声を上げながら内野を見つめて止まっていた。
「…おい。どうしたんだ内野!?」
身体から闇を出しながら倒れる内野を心配し、急いで松野が駆けつけようとすると、何者かに腕を掴まれてそれを止められる。
松野を止めたのは進上であった。
「あれに触れちゃダメだ!君もあれに吞み込まれるかもしれない!」
「じゃ、じゃあどうすれば…」
「どうして内野君が倒れたかは分からないけど、今動けるのは僕らだけだ。僕らだけで黒狼を倒す!」
自分達であの魔物を倒すと言われても、自分がそれに役立てるとは松野は思えなかった。
「どうするんですか?僕に出来る事なんて…」
「後一回テレポートを使える?
使えないなら魔力水を一つ渡すから、僕を黒狼の喉元までテレポートさせて。今テレポートで喉元までいければ、僕でも確実に攻撃を当てられるはずだ!」
進上はショップで買った力のポーションを飲み、物理攻撃力のステータスを上げながらそう言う。
まださっきの一度しかスキルを使っていなかったのでもう一度スキルを使えるはずであるので、松野はすぐに頷く。
だがそんな話をしている間にも周囲の魔物達は動き出していた。もはや数秒も時間は残されてなく、進上に言われるままにスキルを使用しようとしていた。
松野がスキルを使用した時、二人は黒狼から出来るだけ目を離さない様にしていた。
それ故、二人同時に黒狼の異常な行動が目に入り困惑する事となった。
なんとさっきまで足を止めていた黒狼が、自分の舌を嚙み切っていのだ。口元から更に大量に血を流し、その直後横に倒れる。
そこに進上はテレポートし、一瞬戸惑うも黒狼の首に刺さっていた梅垣の剣をそのまま突き刺した。
力のポーションのお陰か剣を更に奥へと突き刺す事に成功し、その数秒後にはクエスト終了の合図、青色の光が周囲にいたプレイヤーをそれぞれ包み込んでいった。
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『これがお前が気絶した後に起きた事だ。
この後ロビーで進上さんと話をして、お互い見たものが同じなのは確認済み。あの黒い狼は確実に自分の舌を噛んで自殺した』
「…」
内野の中には当然黒狼が自殺しようとした事に対する驚きもあったが、何より大きかったのは自分の愚かな行動への後悔だった。
俺が無理に強欲を使って黒狼を吞み込もうとしたからこんな事になったのか…
あの時黒狼がわざと動けない振りをしていて、俺が強欲を使うのを誘っていたのだとしたら、危うく全員助からなかったかもしれないぞ。
俺があの時もっと冷静になれてれば、連続の使用にリスクがある可能性のあった強欲なんか使わずに黒狼を倒していたはずだ…
『そうだ、後はロビーでどんな話をしたかも教えておくわ。梅垣さんからの頼まれごともあるしな。
でも俺も把握しきれてない所があるから、詳しく聞きたいなら他の人に聞いた方がいいかも』
次は松野から、自分がいなかった間のロビーでの話を簡単にしてもらった。
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クエスト終了後ロビーに転移し、そこには最後まで生き延びたプレイヤー達がいた。全員の怪我などは治っており、ボロボロになった服も治っていた。
最初は全員戸惑っていたが、あの白い空間での映像が広間の真ん中に映し出されて黒玉が話を進めていっていた事で、クエストが終了したと分かり広間は安堵の声に包まれる。
その後広間に映し出されるモニター?を見ながらも松平が生存確認をし、少なくとも顔見知りの者の犠牲者が出てないのが判明した。
だがそこで問題が起きた。
「おい…犠牲者ってなんだよ!あそこで死んでも死なないんじゃねえのかよ!噓ついてたのか!?」
一連の話を聞いていた新規プレイヤーの一人が声を荒げる。梅垣の付いた噓に騙されていた者が真実を知ってしまったのだ。それに釣られ、生き延びた数人の新規プレイヤーに梅垣は詰め寄られる。
「君達を騙してしまったのは申し訳ないと思ってる。でもあれが最善の方法だったんだ」
「最善って…ふざけんなよ!誰かを犠牲にする様な作戦が最善なわけないだろ!?」
「情けない事に、俺には他に良い案が思い浮かばなかった。少しでも早く黒狼を見つけるのには、誰かに発煙筒を上げてもらう必要があったんだ。
その為には無知な新規プレイヤーを騙さなければならなかった」
「ッ!てめぇ!」
一人の男が梅垣に向かい殴りかかる。だが当然新規プレイヤーの力では、幾ら梅垣を殴ろうともビクともしない。
男が梅垣の頭を殴ったその時、梅垣の掛けていたフードがとれた。黒狼と戦っていた最中もフードは外されていたが、その時は素早く動いていなかったので、一同が梅垣の顔をしっかり見れたのは初めてであった。
梅垣の顔は美形そのもので、飯田と肩を並べられる程で芸能界の人と言われても不思議じゃない位に顔立ちは整っていた。
「悪いがまだ聞かなきゃならない事がある。この中の誰が黒狼を殺したんだ?」
梅垣は新規プレイヤーを無視して一同の方を向き、そう尋ねる。そこで松野と進上が手を上げ、黒狼を倒すに至った説明をする。
強欲の使用により気絶した内野、黒狼が自殺しようとした事など全て話した。
それが終わると梅垣は松野の方を向く。
「自殺しようとした…か。
内野君達がいるとあいつの行動はおかしくなる…直ぐにでも彼と連絡したい」
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『って事で梅垣さんと連絡先を交換してきたんだわ。もうフレンド依頼送ってあるから、これからすぐに梅垣さんと話してくれ』
「え、ええ!?
そんな急に言わなくてもいいだろ!?てかこれでロビーで起きた話終わりなの!?」
『後は俺が分からない事を誰かに聞いたぐらいで一通りは終わり…あ、白い空間で蘇生石の話が出てから、松平って人が蘇生石で誰かを生き返らせるって話はしてたな。なんか家に帰ってから使うらしい』
松平さんは飯田さんを生き返らせようとしてたもんな。今回でそのQPが貯まったのか、良かった。
これにて松野との通話は終わり、そのままメッセンジャーアプリのフレンド依頼を確認する。
そこには梅垣と思われるアカウントからのフレンド依頼があり、直ぐに承諾する。
だが今の内野は梅垣と話すよりも先にやりたいことがあったので、話すのは明日にしようとメッセージを送ると、梅垣からは『分かった』と返信がきた。
さっきの話を聞いて、俺もやらないといけない事を思い出した。今回で貯まったQPで蘇生石を買い新島を生き返らせる。
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