第82話 囚われの魔物狩り
「最後に少しだけ質問に答えて終わろうか。ちなみに次のターンが終わるまで僕には会えないから、今のうちに何かしら聞いておくのをお勧めするよ」
突然そう言われ、内野は慌てふためきながら聞きたい事を考える。
え!?じゃあ今質問しないといけないじゃないか、どうしよう…何を聞こう…やっぱり俺の前の強欲の人について聞きたいが、あいつは答えてくれ無さそうだし……
質問を受け付けると言われ、真っ先に手を上げたのは平塚(憤怒)であった。
「それでは聞かせてもらおう、蘇生石について。
蘇生石で生き返らない人間がいるのはどうしてじゃ?」
え?蘇生石で生き返らなかった?そんな…まさか新島達も…
平塚の発言で新島が生き返らないのかもしれないと思ってしまい内野の額に冷や汗が流れる。
「……あ!そっか~こんな説明文だから勘違いしちゃったんだね~」
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蘇生石 必要QP50
『この石を所持しながらとある死者の蘇生を願うと、その者の魂は再生され蘇る』
購入しますか YES/NO
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黒い球は数秒沈黙した後、皆の前に蘇生石の説明文を見せてきた。この文は以前内野がショップで見た文と一緒だ。
「とある死者って言い方が駄目だったね、じゃあ皆が勘違いしないように説明文変えとくよ」
そう言うと蘇生石の説明文の文字が一ヶ所変化していった。
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『この石を所持しながら
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蘇生石で生き返るのはプレイヤーだけって事か、良かった…それじゃあ皆は生き返るんだ!
内野は新島達を生き返らせる事が出来ると分かり安堵した、が、平塚の顔はより一層険しくなっていた。
「そうか…それじゃあ娘と孫は…」
「プレイヤーじゃないから蘇生石じゃ生き返らないよ」
「…」
黒玉のその言葉により、平塚は下を向く。微かに身体が震えており、涙を流しているのは誰が見ても明らかであった。
娘と孫…もしかして何かの事故で二人同時に亡くしちゃったのか…?
いや、次のクエストは現世で行われるみたいだし、もしかすると俺の家族や友人も死ぬかもしれない。俺も他人事ではいられない。
ここで内野は一つ聞きたい事が出来たので、手を挙げて黒玉に尋ねる。
「クエストが行われる場所って事前に分かるの?
分かるなら、家族にその場所に行かない様に言っておくのはアリなの?」
「クエストが始まる前に場所は分かるよ。
誰かにその場所に行かない様に警告を出すのは……アリでいいかな。他言無用というルールはクエスト関連の事をプレイヤー以外に話したらダメってだけだけだから、そこら辺を隠して言うのは別にいいよ」
「ん、それじゃあ僕がテレビとかで『明日は○○には行かないで下さい』とかって言うもアリなんだね」
「むむ……」
西園寺(色欲)がそう聞くと、黒玉は椅子の周りをグルグル周りながら悩みはじめた。
黒玉が悩み始めた事に内野は少し焦る。
「ちょ、やっぱりナシとか言わないよね!?」
「アリってそれを言ったらあのルールが無駄になるし…でもナシって言ったらアウトの線引きが難しくなるし……あ、限度を設けようか。
プレイヤーが1クエスト中に警告していいのは5人だけにしよう。ネットやテレビとかで大多数の者が見える所で発信するのはナシね」
「割とあっさりとルールを決めるんだな…」
簡単にルールを作る黒幕に驚くが、それ以上にあまりルールを深く考えられていなかった事に驚いた。
てっきりかなり詳細までルールが作られてると思っていたが、割と穴があるんだな。
もしかすると他にもあるかも…
内野と西園寺の質問が終わると、今度は川崎(怠惰)が手を挙げる。
「…質問だ。ターゲットを決めるのはお前らかなのか?」
「そう、君達が攻める時にターゲットを決めてたのは僕だったよ。人数とレベルを見て考えたんだけど、割といい感じだったよね?
でも次以降は『もう一人の主催者』がターゲットを決めるよ。
ま、僕は君達が勝つように導いて、『彼』は王達が勝つように導くって感じだね」
「そのターゲットって…
「うん、最後のターンだけ『七つの大罪』が強制的にターゲットになるけど、それ以外の回はプレイヤーじゃなくても選ぶことは出来るよ。大罪は選べないけどね。
あ…どうやら川崎君と内野君は重大な事に気が付いたみたいだね」
黒玉の返答に、川崎の顔からは余裕が消えて焦りが浮かび上がっていた。そしてそれは内野も同じであった。
川崎は内野の方を向く。
この時内野と川崎の考えは重なり合っていた。
「内野君も気が付いたみたいだな。
…蘇生石ではプレイヤー以外を生き返らせることは出来ず、ターゲットに大罪は選べない。そしてターゲットを決めるもう一人の主催者とやらは俺らの敵。
これが何を表すのか」
「…ええ。相手側の主催者は僕らの代わりに僕らの家族をターゲットに選ぶかもしれない…って事ですよね」
「そうだ…相手が本気で勝つ気満々ならそうしてくるはずだ」
俺が相手側の主催者ならそうする…だって俺達の大切な人達をターゲットにすれば、それだけで『七つの大罪』の動きを縛れるのだから。
俺って悪い方向に考えるのは得意だな…
「二人は気になっているだろうから先に言っておくよ。
選ばれたターゲットはクエストが始まると同時にクエスト範囲内にワープするようになってるから、何処に逃がしても意味無いからね。
あっ、でも一回選ばれたターゲットは同じターンでは選ばれないから安心して!」
ターゲットがクエストに参加するのは免れないと分かって動揺したのは、川崎と内野ぐらいであった。
残りのメンバーはこのルールをそこまで深刻視していないようだった。
川崎は下を向いて
「…質問だ。勝ったら何か褒美でも貰えるのか?
ただ世界が消されるのを免れるだけなのか?」
「ん、褒美か…」
「俺達を勝利に導くのなら、それぐらいあってもいいんじゃないか?
例えばどんなら願いでも一個叶えるとかっていうのがあれば、やる気が上がるぞ」
「まぁナシじゃないね、特に頑張らないといけない君達にはそれぐらいあってもいい気がする」
「だろ。で、お前はどこまでなら願いを叶えられるんだ?
金持ちになりたいっていうのは?」
「出来るね」
「若返りたいってのは?」
「出来るね」
「プレイヤー以外の死んだ人を生き返らせるっていうのは?」
「…もしかして川崎君。僕の力がどの程度のものか調べようとしてるね?
その
「…まぁ、本気で項垂れたくなる気持ちはあるけどな」
「ハハハ、七つの大罪に選ばれた人が面白い人で本当に良かったよ」
川崎の返しに黒玉は満足そうに笑う。
「それじゃあ次の質問だが…」
「あ、流石にもう川崎君からの質問は受け付けないよ。てかそろそろお開きにしようかと思うんだ。質問はここで閉め切ろう」
突然そう宣言する黒玉に、平塚は焦って尋ねる。
「ちょっと待っておくれ!これに勝てば儂の娘と孫を生き返らせる事も可能なのか!?」
「もう質問は閉め切っちゃった。あと何か聞きたいのなら
それ以外の詳しいことはお楽しみって事で!じゃあ頑張って!」
平塚の言葉を遮って黒玉がそう言うと、一同の身体が青く光り出してきた。転移の時の光だ。
「ちょ…」
そう黒玉を掴む様に手を伸ばしたが、内野の手は届く事なく内野の意識は途切れた。
この魔物狩りはまだ続く、しかも今度は俺達の世界でだ。一応終わりは見えたが、結局俺達は魔物狩りを強要される『囚われの魔物狩り』だ。
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