第81話 2ターン目
内野を最後に自己紹介は終わり、そのまま黒玉は説明へと入る。
「強欲を最後に持ってきたのには理由があるんだ。さっきの内野君の前任者が死んだという話ね」
「俺もそこで一つ気になっていた。
前任者って言い方から察するに、一度全滅する前にも大罪スキル持ちの者がいたのか?」
内野の隣に座っている川崎(怠惰)は顎に手を当てながら、何か思考しながら発言する。
「おお、川崎君は察しが良いね。
そういう事。全滅する前にも、しっかり『強欲』のスキルを持つ者がいたんだよ」
俺の前にも強欲を持っていた者がいたのか。30回もクエストを受けていたのだろうから、今の俺なんかよりもよっぽど強かっただろうにどうして全滅してしまったんだ。
川崎は黒玉の返答に対し、更に質問をする。
「で、今そこにいる彼も強欲スキルを持つと…そうなるとおかしくないか?
ルール的に、大罪スキルを持つ俺達7人が死んだら終わりなんだろ。
それなのに新しく大罪スキルを引き継ぐ者が現れたら、プレイヤーの敗北条件の意味が無いよな?」
「そうそう、だから言っておかないといけないんだ。
そもそも、『七つの大罪』の君達は
ん?待ってくれ…二度と生き返れないってことは…
「俺達は蘇生石を使っても生き返れないの?」
「そうそう!
相手からしてみれば君達がラスボスだからね、そんな敵が何回も復活するなんて嫌でしょ?」
誰かが生き返らせてくれるから大丈夫という甘い考えは出来ないのか…別にするつもりはないけども…
次に涼川(暴食)が手を挙げて黒玉に質問をする。
「で、二人目の強欲が現れた理由は?」
「詳しく教えられないけど……システムの穴を突かれたって所だね」
「それだけじゃ分からないよ~もっと教えてよ♡」
「ダメ!絶対にそこは教えないよ!」
涼川が上目づかいで黒い球に聞くが、重要な事なのか強く否定し話してくれない。
そして黒玉は別の話を進めていく。
「じゃ、話の本筋にいくよ。
君たちが今まで戦ってきた場所、あそこが君達のいる世界とは全く別の所だって事は分かってるよね。その世界を異世界と言おうか。
この世界と異世界でゲームが行われてるんだ。世界の命運を掛けたゲームだよ。負けた方の世界は消滅し、勝った方の世界が残るというシンプルなゲームだね」
「え!?って事は…俺達が負けたら…」
「うん、君達のいる世界は消えるよ」
いきなり話のスケールが大きくなり、流石に今まで平静を装っていた者達にも驚きが見えた。
「これはこれは…随分と大きい話じゃな」
「それじゃあ負けられないね」
「僕が輝くための世界が無くなったら困るからね、魔物には悪いけど勝たせてもうよ」
正直世界が消えると言われても、あまりに話のスケールが大きいからか焦りだとかは湧かないな。
「でもね、あまり悲観する事は無いと思うよ。
もしもこのゲーム、いや戦争って言った方がいいかな。この戦争で勝つことが出来たら、君達はこの世界の英雄になれるんだからね。
今まで並み以下の人生を送ってきた人が多いと思うけど、そんな君達が英雄になれるんだよ。チャンスだと思わないかい?
全人類の上に立てるんだよ、昔君達を見下していた奴らの上に立てるんだよ?
既に手に入れた力で好き勝手やってる人もいるようだけどね」
この言葉は大罪に向けてというより、これを見ているクエスト待機所の人に向かって言っているものの様に感じた。
「なぁ、このゲームを始めたのって誰なんだ?
そもそも何が目的でやってるんだ?」
内野は気になっていた黒幕の目的を尋ねる。
「僕と、あともう一人の主催者が始めた…って言えるかな。このゲームの目的はまだ内緒ね。
取り敢えず質問しようにも今後どうなるのか気になって仕方ないと思うし、2ターン目以降のゲームがどうなるのか説明しよう。
全50回のクエストで1ターンが終わって、次は2ターン目に移る訳だけど一旦異世界での魔物狩りはお終いだよ。攻守交代するだけだけどね!」
「え、それって…」
「あー待って、取り敢えず説明を終わらせたいから、質問は全部話してからね」
疑問を口にしようとした内野の言葉を遮り、黒玉はそのまま説明を続ける
「1ターン目は君達が攻める番だったけど…次はこっちが防衛する番!
攻める方(魔物)はターゲットを殺すのが目的、防衛側(プレイヤー)はターゲットを守るのが目的。
今までは君達全員バラバラに分かれて攻めてたけど、今回は全員で1か所の範囲内でターゲットの防衛をしてもらうよ。
防衛側の場合は、ターゲット以外はいつでもクエスト範囲から出られるから危なくなったらクエストから逃げるっていうもの出来る。
でも全員が防衛に参加しないっていうのはあまりオススメしないよ、最後だけは『七つの大罪』が全員ターゲットになるからね。そこで全滅したら負けちゃうから、レベル上げとかないと大変な事になっちゃう。
それにターゲットを全員殺されたらその回のクエストは終了するけど、ターゲットが死ぬと魔物が強くなるから気をつけてね。次以降のクエストでもっと辛い目に合うのは嫌でしょ?
あ、あとこっち側が攻めるときは1ターン50回だったけど、こっちが防衛する時は1ターン10回ね。といっても、クエストの数が少ない+7グループ揃ってるって事でその分範囲の面積は広くなるけどね」
黒い球は一気に説明したが…聞きたいことが滅茶苦茶ある。まず魔物が攻めてくるのなら、一般人にも被害が出るってことだよな?
何の力を持たない人が魔物に太刀打ちできる訳がないし、クエストの範囲的に相当な被害が出るぞ…
「聞きたいことが沢山あるだろうけど、取り敢えず説明を続けるよ。
今度は君達の敵側について説明しようか。クエストの時、一匹だけ他のクエストにも現れたりする、異常に強い魔物いなかった?」
「あいつの事か、たしか10回ぐらい前に倒した」
「いたな、あいつには僕ですら苦戦したよ」
川崎(怠惰)と西園寺(色欲)がそう言うが、他の人も心当たりにもがある様子だ。当然内野にも心当たりがあり、黒狼が頭に浮かんだ。
「実は敵チームには『七人の王』と、その王の『使徒』っていうのがいるんだ。その異常に強かった魔物は『使徒』って奴。
最終クエストの討伐対象になったから、内野君だけは名前を知ってるよね。
使徒は王1人あたり4体いるから全部で28体。それぞれが1ターンごとに増えていくから、次に防衛クエストが出た時には使徒がまたいるよ。
もし2ターン目の間に使徒を倒せないと、次のターンにもその使徒が出てくることになる。そうなると3ターン目に二体同時に現れちゃうって事になってしまうよ。
だから頑張って使徒を倒さないと…後半は恐ろしいことになるかもね。
さっきも言った通り使徒は4体…4ターン目まで使徒は現れるんだけど、5ターン目からはいよいよラスボス登場!
5ターン目からは『七人の王』が君達の前に現れるよ!そこで王を倒す事が出来れば君達の勝ち!この説明で分かったかな?」
一応ルールは分かったし、黒狼の謎も分かった。
だが、その七人の王は一体どんな奴なんだろうか。あの黒狼を従える『無冠の王』…その使徒があと3体もいるのか。
早く俺も周りの大罪の人達ぐらい強くならんと皆を守れない…
その為には俺の…俺だけのスキル『強欲』を使わないと。
どうやら魔力水でMPを回復しても連続で使うと気絶するみたいだが、1クエスト1回とか悠長な事は言ってられないぞ。
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