第79話 七人の大罪人
七つの黒い椅子があり、椅子は黒い浮かんでいる球体を囲むように置いてあった。
他の6人は全員椅子付近にそれぞれ立っていたが、内野のみ椅子から少し離れたところにいた。
1人だけ離れてる内野が気になったのか、6人は内野の方を見る。
着物を着ている渋い老人
髭が中途半端に生えている身なりの悪い男
だらしなく白いシャツを着ている目つきの悪い男
イケメン高校生
ゴスロリ服を着ている女の子
綺麗なお姉さん
なんだ…さっき誰かクエストがどうとかって言ってたけど、この6人もプレイヤーか?でも誰一人知らないぞ。
てか黒狼はどうなった?皆は助かったのか?
「内野君、取り敢えず君も空いてる席に座ってよ。君だけ少し遠くに転移させちゃってごめんね~悪気はないんだ」
6人がいる方からそんな若い男の声が聞こえてくるが、6人の中の誰も口を開いていないので、いったい誰が自分を呼んだのか分からなかった。
分からない事だらけで頭が上手く回らず、取り敢えず言われた通りに椅子へと腰をかける。
隣の席の者は、着物を着ている渋い老人と、30代ぐらいの髭が中途半端に生えている身だしなみの悪い男であった。
内野が今の状況について質問しようと、するとまたしてもさっきと同じ声が響く。
「お疲れ様!これにてやっと1ターン目終了、クエスト50回もお疲れ様!」
椅子に座りようやく声の発生源が分かった。喋ったのは目の前に浮かんでいる黒い玉であった。
「…お前が俺達にクエストを行わせてる黒幕って事か?」
その黒い玉以外に最初に口を開いたのは、内野の隣に座っている身なりの悪い男性であった。
「そう、僕が君たちを異世界に送ってるんだよ。
君達とはこれから長い付き合いになると思うし、第一印象は大切だからしっかり挨拶でもしておこうか。
はじめまして、僕の名前は………って、あ、どうしよ。名前考えてなかったよ」
気の抜けている様なふざけている様な声であったが、この声の主こそが黒幕だというのはこの状況からして噓では無いと分かった。
こいつが!?クエストを俺達にやらせてる張本人なのか!?
クエストの黒幕という者が現れた事に驚いていると、もう片方の隣に座っている老人が手を挙げて質問をしようとする。
「ほう…それじゃあ黒幕殿。聞いてみたい事が山ほどあるのだが…」
「あ、ちょっと待ってね。今のまま説明しても頭にあまり入らないだろうなって子が一人いるから、少し説明させて」
そう言うと黒い玉は内野の前にまで移動した。
「内野君。君は意識が無かったら今がどういう状況なのか分からないと思うけど、取り敢えずクエストはクリアしたんだよ。『使徒』討伐対象おめでとう!」
「ほ、本当!?」
「うん、そこら辺は帰ったら仲間に聞けば色々分かると思う。分からない事も増えるだろうけどね」
最後のは一体何を言っているのか分からなかったが、ひとまず黒狼を倒せた事が分かり安堵する。
黒玉は内野が質問する暇無く元の位置へと戻っていき話をする。
「クエストが終わった後にわざわざ君達をここに呼んだのは理由があるんだ。
今回で50回目のクエストが終わり、以降クエストが少し変わるから君達7人の顔合わせが必要なんだよ。
ここにいる全員がお互いに面識が無いと思うけど、全員同じくプレイヤーで、これから共に戦う仲間になるわけだから仲良くしてね」
「え…50回目クエスト?」
『50回目のクエスト』という言葉が出てきたことに、つい内野は疑問を声にする。
おかしい…だって最古参の梅垣さんだって20回ぐらいだったはずだ。
「50回?20回の間違いじゃ…」
「そうそう。内野君だけ知らないんだよね。
簡単に言えば、最初からいた人達は全滅したんだよ。そこで色々途絶えちゃったんだ。
だからこれも知らないよね」
黒い玉の少し上あたりに文字が浮かび上がった。
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〈プレイヤーの皆へ、チュートリアルの案内〉
ステータスと呟いて自分のステータスを確認しよう!
ステータスボードに触れて能力を上げよう!
ショップと呟いて武器とかを買おう!
クエストボードを確認しよう!
クエストが始まったら魔物を倒そう!
名前を叫んでスキル発動!
家に帰ってもここでの出来事は内緒に!
これは『七つの大罪』か『七人の王』が全滅するまで続くよ!
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「え、なにこれ?」
「これは皆が1回目のクエストの時に見た表示。1回目のクエストの時にしか出さなかったから、君の前任者が全滅した時にこの情報が途切れちゃったんだ」
上の説明文はチュートリアルって分かるけど…『七つの大罪』か『七人の王』が全滅するまで続く?
なんだこれ、訳が分からない。
「ここにいるのは憤怒・嫉妬・色欲・暴食・傲慢・怠惰・強欲の七つの大罪の名を持つ強力なスキルを持っている者。『七つの大罪』の全滅っていうのは君達の全滅を表す事だと思って。
『七人の王』ってのは魔物側にいる強い奴ね。彼らの情報はあまり明かせないけど、とにかく君達の目標は王を殺す事だ」
「…やはりこれがプレイヤー側の勝利条件という事か」
「そういう事」
またしても内野の隣に座っている男が発言し、その問いに黒玉は返す。
「今までこれが何の事かは分からなかったけど、これで理解出来たよ。分かりやすいルールだね」
「私達が死なずに王を殺せば良いって感じなのね」
「ほう…老人にも理解できるぐらいシンプルじゃ」
向かい側の方に座っているイケメン高校生と綺麗なお姉さん、それと隣に座っている老人も納得したような声を出す。
内野もだんだん状況を吞み込みてきてはいた。そして取り敢えず頭の中を過った疑問を口にする。
「それじゃあプレイヤーが勝ったら何かあるの?逆に負けたら何か…」
「ああもう!この話いつになったら終わるのよ!私は早く帰りたいの!早くしゅん君の所に帰らないといけないの!」
内野が発言している最中、突然異様な雰囲気を出していた一人が突然立ち上がり内野に怒りだした。
それは中学生ぐらいのゴスロリ服を来ている子。凄い形相で、可愛い顔が勿体ないぐらいに崩れてしまっている。
「私がここにいる間に他の女共がしゅん君を汚すかもしれないのよ!私をしゅん君の所に戻すか、しゅん君をここに連れて来て!」
「大丈夫大丈夫、他の皆ならいつものクエスト待機所にいるから。君の恐ろしさを知っている人なら俊太君に手を出さないでしょ?
それにここで起きていることは全て待機所の皆に見えてるけど、そんなヒステリックになっても大丈夫なの?」
「しゅん君は私の全てを受け入れてくれるし…」
黒い球が女の子を宥める。女の子は落ち着いた様だが、それでもまだ内野の方を睨んでいる。
え?お、俺が悪い…のか?
恐らくこのゴスロリの女の子は、ヤンデレとかメンヘラの類のやばい奴だ。
それに50回もクエストを経験していて、確実に俺よりも強いはず。これ以上怒らせないように大人しくしよう。
それよりも、他の皆んなはロビーに集まってるのか。どうなってるか気になるな…皆無事だろうか…
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