第59話 修行?
次の日、昨日出来なかった事情聴取のために内野は家族と共に学校へ向かう事となった。
学校の中に車を止めようとすると、門の前に今回の件で学校に訪れてきた記者達がおり、数人の先生が対応していた。
車に乗ってたからバレなかったが、もし俺が普通に歩いて来てたら大変な目に遭ってたかもな…
「内野!よ!」
3人で廊下を歩いていると、内野と同じく学校に呼び出された松野と廊下で鉢合わせる。昨日の怪我のせいで右腕に包帯を巻いているがそれ以外の所の怪我は酷くなさそうで、内野を見ると普通に走って向かってきた。
松野は後ろにいる内野の両親に気がつくと礼儀良く挨拶し、二人もそれに返す。
「君のような子が息子の友達でいてくれて嬉しいよ」
「これからも勇太と仲良くしてね。それにいつでもウチに来て良いからね
両親二人が松野にそんな事を言い、内野は少し恥ずかしくなり話を逸らす。
「腕を骨折したって聞いたけど、安静にしてなくて大丈夫なのか?」
「いやそれは俺のセリフ…だけど…やっぱりお前何処も怪我して無いんだな」
昨日あれだけ殴られた者とは思えないぐらいピンピンしてる内野に松野は驚くが、そこに関して深くは聞いて来なかった。
松野は後ろにいた内野の両親に気が付くと挨拶をする。
「ところで松野の親は何処にいるんだ?」
「会議室で話をしてるぞ。実は今日来る時間を1時間くらい間違えちゃって、既に昨日の事を警察と先生達に話したんだ。後は内野の証言が聞ければ俺も今日は終わりだとさ。
ちなみに小西の仲間の中で、怪我が酷くない奴らは昨日取り調べを受けたらしいぞ」
「警察まで動くほどなのか…」
「そりゃあいくらお前に怪我が無くても、あれだけバットで殴る映像があったら警察来るわ。明らかにあれは殺す気満々だったからな」
昨日取り調べがあったのか…そうだ、ならあの動画を取ったのが誰なのか分かったのかもしれない
「松野、あの動画は誰が撮ってたのか分かったのか?」
「…凄いなお前。小西が殺す気満々でお前を殴ってた話をしてたのに、そっちの方が気になるのか…
まぁ、今のところは誰がやったのか分かってないらしい。小西もその仲間も誰が仕掛けたのか分からないらしい。勿論俺も違うからな」
小西達があの配信を付けたとは思えないし、多分その証言は本当だ。…やっぱり俺や小西達とは違う第三者が仕掛けたものなのかもしれない。
だとすると、予め小西達があの部屋で俺を待ち構えているのを知っていた者でないとカメラは仕掛けられないだろう。
「松野、俺達と小西達以外にあの部屋の事を…」
「だぁー!お前質問多いな!さっきも色々警察と先生達に聞かれて質問されんのにウンザリしてるんだ。今はさっさと会議室行こうぜ」
内野の質問をかき消すように声を上げると、松野は骨折してない方の腕で内野の手を引っ張る。
二人が仲良くしているその光景を見て、内野の両親は黙っていたがにこやかな表情をしていた。
会議室には校長・担任・学年主任の先生がおり、1時間ほどかけてそこで事の経緯を説明する。
噓をついたのは負傷してない理由ぐらいで、「衝撃は全部受け流した」という一点張りで内野はどうにか難を逃れた。
だがやはり警察や先生達からは怪訝な顔をされる。衝撃を受け流したのならバットは折れないだろと言われても、そこは当たり所が良かっただとか若干受け流すのを失敗した苦しい言い訳をする。
本来ならば有り得ないが、あれがフェイクの動画なんかじゃないのは分かっているので警察達は内野の証言を信じるしかなかった。
あの配信の動画と今までの小西達が起こした問題から、内野が彼らを怪我させた事は罪には問われない可能性が高いという話もされる。
その後も色々とあったが話は割と簡潔に終わり、内野一家は松野一家と共に会議室を出て各々家に帰る。
来週の月曜からはいつも通りに学校に通って良いらしいし、これで小西との問題もほとんど解決したと思った良さそうだな。後はクエストの心配だけだ。
でも…今クエストに向けて出来る事って何かあるか?
確か前のクエストのロビーで松平さんに聞いたものの中だと、今俺に出来るのは武器に慣れる事ぐらいだ。
今俺が持っている武器は『ゴーレムの腕』『鉄の剣』だが、正直どうすればいいのか。公園や広い所でこれらの武器を振り回しみる事ぐらいしか思い浮かばないな…剣なら適当な素振りでも良いのか?
午後23時。内野は夜遅くに近くの公園のど真ん中に一人で突っ立ていた。
左手には鉄の剣、右手にはそこらで拾った葉っぱを数枚持っている。
その葉っぱを上に放り投げると、葉っぱはひらひらと不規則な動きをしながら下に落ちていく。
今だ!
目の前に葉が来たタイミングで剣を振る
が、葉は剣に全く当たる事なく地面に落ちた。
…やっぱり漫画で見た修行方法を実践するのは無謀か?
松平さんは弓の訓練しかしたことないって言ってて、剣の練習って何をやればいいのか分からないから取り敢えずやってみたけど…難し過ぎて出来る気がしない。
その1時間ほど繰り返し試してみるが、葉を剣をで切ることは一度も出来なかった。
はぁ…そろそろ日を跨いじゃうし、次でラストにしよう。
1時間も経過しており、内野の集中力は既に尽きていた。
半分やけくそ気味に葉を放り投げ、剣を振う。
すると内野は振っている途中で剣を放してしまい、剣は横の後方側に飛んでいく。
ヤバッ!
咄嗟の事に焦るが、剣は木に当たった事でそこまで遠くに飛ばずに済んだ。
剣が綺麗に刺さったのは直径10㎝程の細い木の幹で、それを見て内野の中に一つの考えが浮かんだ。
もしかして…剣とか槍を投擲して攻撃出来たら強いんじゃないか!?QPがあれば武器は沢山買えるし、インベントリに収納出来るから荷物にもならない!
それから一晩中、内野はひたすら木に向かって剣を投げ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます