第54話 追われる学校生活
その後内野は松平に聞きたかった事を尋ねる。
『やっぱり気が付いたんだね。クエストでいくら死者が出ても、こっちでは何も報道されてない事に』
「ええ、松平さんは何か知っているんですか?」
『いや…どうして全く騒ぎになっていないのか何も分かってないんだ。
普通なら一人行方不明者が現れただけでも、その人の家族だとか近所の人が不審に思うはずなのに』
これまで死んでしまったプレイヤーの総数は分からないが、騒ぎになってないのは明らかにおかしい。
…あくまで俺の想像にはなるが、このクエストを行っている黒幕が何かしてるとかか?
例えばクエストで死んだ場合、クエストに関する記憶が消えているその人が普通に生活してるだとか、周りの人の記憶がいじられてその人の存在が消えてるだとか。
漫画だとかで見た設定だが、あり得なくはないよな。現に俺達はあり得ないことに巻き込まれてる訳だし。
「松平さん、これまでに死んでしまったプレイヤーの家の場所を知ってたりしますか?」
もしもその人の家を知っていたら話は早い。そこに確かめに行けばいいだけだ。
『何県に住んでるかは知ってるけど住所までは知らないって人が多い。
実際に待ち合わせしてこっちで会った人もいるけど、住所だとかは流石に聞いてなかったんだ。
実は飯田さんともこっちでは一度も会ってないんだよね…お互い住んでる場所が遠くて。
でも最古参の人達はこっちの方でもよく会ってたらしいんだ。だから梅垣さんなら何か知ってるかも。
次いつ話せるかは分からないけどね…』
「そうですか…分かりました」
こうして松平との通話が終わった。
その後両親が帰宅し、内野は普段通り過ごして夜を迎える。
ゲームをして時間を潰したりする気にはなれず、眠くはなかったが取り敢えずベッドの上を寝っ転がる。
先ずは梅垣さんと話す必要がありそうだ。
さっきも松平さんが言ってた通り死者がどうとかの話も彼に聞きたいが、やっぱり一番は協力して黒狼を倒そうという相談をしたい。
どうにかして俺達の前に姿を現してくれないだろうか…
結局内野は4時間ほどしか眠れず、特に良い案も思い浮かばないまま次の日を迎える。
連日休むと親を心配させてしまうので今日は普通に登校をすることとした。
いつものように公園に行くと、真子が公園のベンチに座りノートを眺めていた。
真子は嬉しいそうな表情でノートを見ており、すぐそばに来るまで内野には気がつかない。
「真子ちゃんおはよ」
「ブラッ…お兄ちゃん!おはよ!」
ニコニコしながらいつも以上に元気良く挨拶する真子を見て、真子のいじめが終わったという事を察する。
「お兄ちゃんのお陰で元に戻ったの!昨日久しぶりに友達と一緒に絵を描いたんだ!」
真子はそう言うと先程まで眺めていたノートを見せてくる。
それは3人の女の子が手を繋いでる絵であった。
真子ちゃんが友達と仲直り出来て良かった。
いじめが無くなったとしても友達と仲直り出来るどうか分からないし、前に真子ちゃんは「学校にいるのは皆悪者」と言っていたから、ひょっとするともう仲直りするつもりが無いのかもしれないという心配があった。
でも杞憂で済んで良かったよ。
その後学校に向かうと、案の定小西の仲間と思われる者達が3名ほど校門へ行くための道に
裏門に回るか?
でも…正直もうこいつらに振り回されるのは嫌なんだよな…
取り敢えず黒狼の事が解決した後、この小西と小西の仲間達をどうするか考えよう。
今はクエストの事で頭がいっぱいで騒ぎは起こしたくなかったので、仕方ないが裏門に向かう。
が、やはり裏門の方にもヤンキー達はいた。
どちらの門も塞がれてるのか…別にもう門から通らなくてもいいか。
仮に誰かに見つかっても、ヤンキーに見つかるのを避けるためって言えば許してくれるだろ。この学校にいる全員が校門前のあいつらを知ってるだろうし。
学校裏に繋がる、比較的人通りの少ない道に回る。道路から塀の高さは3m以上あるが、今の内野なら鞄を持ちながらでも軽々と塀を越えられた。
その後は校舎裏から昇降口まで行き教室まで向かう。
教室に向かうまでに通り過ぎる人からジロジロ見られ、ヒソヒソ何か言っているのが分かる。
「あの人がヤンキー達に追われてる人…?」
「そうそう。先輩から写真送ってもらったけど、確かあの人」
「鼻折りの内野だったっけ?」
「てかどうやって学校に入ってきたんだ?」
「可哀想に…まだお若いのに…」
「同じ年だぞ」
そんな声が耳に入ってきた。
以前はヤンキー達にだけ顔を覚えられていたが、今はもう学校中で広まっているのか。
写真って聞こえたが、もしかし誰かが俺の写真を撮ってばら撒いてるのか?
内野が教室に入ると、先週と同じ様に教室内は静まり返った。
小西の取り巻き達は内野が教室に入ってきたことを驚いていて、他の人は内野から目を逸らす。
「あいつ何処から入ってきたんだ?」
「もしかして外の連中サボってるんじゃね?」
小西の取り巻き達は内野の方を見ながらそんな事を言っているが、それを無視して席に着く。
そろそろ一時間目が始まるという所で、何者かが大きな音を立てドアで開ける。
それは小西であった。鼻を包帯とテープで固定されており、それが顔の4割を占めていて
だがそれを笑えるような状況で無いのはクラス全員が理解できた。
そして包帯越しでも分かるぐらい小西は凄まじい
「内野…ここに居たのか!」
そりゃ教室だからここに居るわ。
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