第44話 討伐対象:フレイムリザード2

「いや~、君達のお陰で助かった!」


地面で横になってると土の男が話しかけてくる。その男は身長が190㎝程あり、半袖半ズボンでムキムキの男であった。


「大橋さんも無事でよかったです!」


「おう、あいつの尻尾攻撃を受けても怪我一つせずピンピンしてるぞ。やっぱり『サンドウォール』は凄いだろ!」


大橋さんっていうのか、声も身体も大きくて元気な人だな。

でもその名前…何処かで見覚えがあるのだが…何処で見たんだ?


進上と大橋の二人は面識があるので、お互いの紹介がてら休憩する事になった。


「僕の名前は内野勇太です、よろしくお願いします。」


「お、君が前回のターゲットを倒した子だったのか!

俺の名前は大橋おおはし 大吾だいご。よろしく!

俺の身体が大きいからってあんま堅苦しくならんで良いぞ、もっと肩の力を抜いて大丈夫だ」


内野が大橋を前にして緊張しているのが分かったのか、大橋は内野の背中を強く叩いてそう言う。

それで気さくな人だと分かり内野は少し安心出来た。


「二人は前回のクエストで知り合ったんですか?」


「そう、途中でこの人に合って一緒に行動したんだ。大橋さんって確か前回のランキング4位でしたよね?」


「ああ!因みに俺はレベル23で、クエストは今回で12回目。因みにさっき使ったスキルは砂で壁を作る『サンドウォール』と、砂を纏える『サンドアーマー』だ」


さっきのを見たところ二つとも防御スキル、それなのにランキングに入れたのか。

てか俺・進上さん・大橋さんの前回ランキングに入った5人の中の3人がここに集まったのって凄いな。俺と進上さんはまだレベルに不安があるけど。



「あの、さっき大橋さんは何で一人で突っ込んだんですか?」


俺たちがいたから良かったものの、下手したら死んでいたかもしれない。それとも工藤の様に絶対的な自信でもあったのか?


「ああ、眼鏡を忘れてしまってな!辛うじで動く物体が見えたから、人かと思って走ってしまったんだ」


大橋は胸を張り腕を組んで余裕そうに言う。


危な!もう12回目ならしっかり準備する癖をつけていて欲しい。

2,3回目寝てた俺が言える事ではないかもしれないけど…


「でも結果的に一匹討伐出来たなので良かったですね。この調子なら10匹なんて直ぐに終わりそうですし」


進上さんの言う通りだ。俺らの他にもフレイムリザードと戦ってる人もいるだろうし、そこまで時間が掛からなそうだ。

それに、早くクエストが終われば黒狼に殺される者も減らせる。


「敵と場所的に、今回は松平がランキング一位を取りそうだな。視界が開けているし、敵の攻撃は弓ほどの射程が無い。前線で魔物を止めるタンク役と合流できればどんどん魔物を狩っていけるだろう」


前線で魔物の攻撃を受け止めるタンク役…そう言われて真っ先に思いついたのは飯田さんだ。

一緒に魔物を倒す事において、多分二人は相性バッチリだったのだろう。



「取り敢えずこの3人で、もう2匹くらい倒した頃にはクエスト終了後してるかもしれないですね」


「だな!俺が防御と共に敵の動きを止めよう!攻撃は2人に任せたぞ!」


タンクが大橋、アタッカーが進上と内野、この3人パーティーが結成された。


相手に武器が飛ばされた時に思ったけど、複数武器を持っていた方が良いかもしれない。どうせショップで買った武器はいつでも取り出し可能だし、QPに余裕があるからもう一つぐらい買ってみよう。


それを進上に話し、二人共武器は二つ持つ事になった。二人はショップで売っている武器を見る。


ん?なんだこれ。

ショップを見ていると、前は無かったはずである物が売ってあった。


『ゴーレムの剛腕 QP25』


前はこんなの無かったぞ、俺がゴーレムを倒したからか?取り敢えず大橋さんに聞いてみるか。




「あ、そうか!君らはまだ新入りだもんな!

実はクエストの討伐対象を少人数で倒すと、討伐対象に関連するアイテムがショップで販売されるらしい。俺はまだ手に入れたことは無いし、少人数がどれくらいなのかも分からないがな」


「へ~、因みにターゲットのアイテムを最初に手に入れたのは誰なんですか?」


「松平だ!確かトレントを4人で倒して、何とかの樹みたいな弓を手に入れていたな!」


あ!あの弓か!でもボスを少人数で倒すなんて、中々出来る事じゃないよな。ゴーレムの核はイレギュラーだし。今後も達成できるか分らない。

でも松平さんはレベルが上がると買えるものが増えて、それであの弓を買ったと言っていた。どうして一体どうして噓を?



あ…何となく分かったかも。


「大橋さん、もしかしてこの話って…松平さんとかに内緒にしておいてって言われませんでしたか?」


「言われたな!……言われたな。言っちゃったな…」


大橋は口を滑らせてしまった事に気が付き、大きかった声がみるみるうちに小さくなる。


松平さん達がこの事を黙っていた理由はある程度思いつく。この事を知って少人数でターゲットに挑む者を出さない為だろう。人によっては無理して挑む可能性もあるしな。


てか前回のターゲットを倒したのは俺以外に工藤・新島の2人だ。って事は二人もアイテムが買えるのか


「いやぁ…つい流れで言ってしまった…

と言っても、君は既にターゲットのアイテムを持っているわけだし、いずれバレる事だったんだ!そうだ!俺は悪くないな!」


そう呟きながら大橋のテンションは回復していった。


確かにそうなのだが、随分と立ち直りが早いな…


「でも松平さんも3人がゴーレムを倒した事知ってますよね。

なのに内野君達にそれを説明をしてないのって、それほど飯田さんの事で頭がいっぱいだったからなのでしょうか」


内野はさっきまで進上に『内野さん』と言われていたが、今は『内野君』呼びになっていた。

呼び方なんて何でも良いという人はいるかもしれないが、内野は『さん』付けされるのに少し距離を感じていたので、それが変わった事を少し嬉しく思う。


「そうだろうな。二人は同期だし、お互いがリーダーと副リーダーとして支え合ってもいた。そんな相方が死んだとなったら…普通冷静ではいられない。彼女はよく耐えていると思う」


やはり彼女の今の支えになっているのは『蘇生石』だろう。松平さんが今回でそれを買えるといいな…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る