第35話 弱さ
倒れてる4人を放っておいて、内野と工藤の二人は近くのファミレスに入った。
ちなみに女子と二人っきりで何処かに行くというのは初めてだったので、内野の心臓の鼓動は少し早くなっていた。
内野はハンバーグを、工藤はステーキを食べながら話す。
「何があったのか聞いてもいい?」
「…実は、初めて転移させられた時、あいつらとカラオケ行く予定だったの。転移する直前までスマホを弄ってて、少しスマホを手放していた時に転移しちゃったから、スマホは家に置きっぱなし。しかもLI〇Eのグループの画面でつけっぱなしだったから、皆に既読無視してる思われちゃったの。」
「え?それだけであんな事に?」
「いや、問題はその後。
クエストが終わった後、兜がどうしても取れなかったから部屋に引きこもっていたの。あんな姿誰にも見られたくないもの。
当然友達と遊ぶ約束も全部キャンセルする事になって…それで」
友達付き合いってやっぱり面倒臭そうだ。
でも、もしも兜の事を親とかには説明出来ないからな。だから引きこもるって選択以外は出来ないのは仕方ない。
「それで、前回のゴーレム時に稼いだQPで解呪石を買って、兜の呪いを解いたの。これでいつものように学校に行けるって思って、2日前の金曜日に学校に行ったら…」
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2日前
(工藤視点)
用事をキャンセルしちゃった事とかLI○Eでは皆に謝ったけど、学校でもしっかり謝らないと。
そう思っていたので、工藤は教室に入った後いつもの女子4人グループが集まっている所に真っ先に向かう。
「皆、急に予定キャンセルしちゃってごめん!」
工藤は明るい口調で軽い感じで謝る。
「でも、これからはいつも通り遊べ「は?そんなんで許されると思ってんの?」
え?
顔を上げると、グループの皆が工藤を睨んでいた。
皆が怒っている事に気が付き、さっきの様な軽い感じではなく真面目に謝る。
「ほ、ホントにごめん!」
「もういいわ、それに元々あんたの事嫌いだったからw」
「それな」
「少し顔が良いからって調子乗ってるし」
「じゃあねー」
そう言うと4人は工藤を置いて教室を出ていった。
それからというもの、その4人に授業中にゴミを投げられたり、教科書を隠されたり…工藤のメンタルがたった一日で崩れた。
今まで友達だと思っていたが、まさかこんな簡単に崩れる関係だとは思っていなかった。
でも、工藤はどうしても許して欲しくて、グループに連絡し続けた。
すると
[仕方ないな~、日曜日うちらと遊んでくれたらいいよ]
[場所は○○店の前ね]
と返信がきた。
それで私が今日待ち合わせの場所に来たら…
「あ、来た来た」
「この子が工藤ちゃん?」
「そうそう、あんたらの好みっしょ」
「可愛いじゃん」
そこにはいつものグループの2人と、同じ学校の同学年の2人いた。
「あんたもこの二人の顔ぐらいは知ってるでしょ?今日一日こいつらの相手してよ。そしたらまた私達のグループに居ていいよ」
え!?そ、そんな話聞いてない!
それにこの二人…あまりいい噂を聞かないし…
「ちょっと待って!そんなつもり出来たわけじゃ…」
「こっちに来て」
男の一人が工藤の腕を引っ張り路地裏に連れていく。
工藤がそれに抵抗すると
「それ以上の抵抗したらマジで学校からあんたの居場所無くすよ?」
「そ、そんな…」
そういわれた工藤は抵抗するのをやめ裏路地へと連れられていく。
通行人は何人かいたけど誰も工藤を助けようとしない。
裏路地に入った後もどうにか約束を破ってしまった事を謝るが、一向に許してもらえず問い詰められる。
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「で、その後俺が来たってこと?」
「うん、正直スキルを使えば何とか出来たかもしれないけど…手加減できなかったら大変だし、そもそも人前でスキルを使用したら…」
「他の人にバレたって事で、能力が没収されるかもしれない。だから使わなったって事ね」
「ええ。一応さっきのヒールは4人とも気絶してたからかペナルティを喰らわなかったけど」
どこまでがセーフなのか分からないから、それが正解だと俺は思う。
てかあの時は焦って工藤にヒールを使わせちゃったが、本当は危なかったよな…これからは気を付けないとな
「で、あんな事した俺が言うのはあれだが…これからはどうするんだ?もうあいつらと仲良くするのは無理だと思うが。」
「うん、もう私もあいつらと絡むつもりは無いけど…他に友達がいないから…」
「いいじゃん一人で、結構気楽だよ」
「でも一人だと…怖い…」
…工藤は一人でも気を強く持っていられると思っていたから意外だ。
「別に私って強くないのよ…いや、弱いわ。
一人じゃ何にもできないから、一人が怖いから、誰かとつるもうとしてるの…」
何だか松野と似ているな、弱いから誰かといるって
「意外だな…でも初めて転移して来た時とか凄い威勢良かったじゃん。飯田さんに詰め寄ったりして」
「内心ビビってたのよ!ただの虚勢!
てかあんたは「ヒィッ!」とか情けない声とか出してたのに、最近は何か妙に堂々としてるじゃない。何でそんな変わったのよ!」
「確かにな、能力が上がってからは何か余裕が出来た」
やっぱり変わった様に見えるのか。正直全部クエストで手に入れた力のお陰なんだよな…あっ、そうだ。工藤にクエストの事で聞きたい事があったんだ。
「工藤。話は変わるのだが、前のクエストの最後で起きた事って覚えてるか?」
「ああ…私は狼の雷のせいで気絶しちゃったから何にも分からない。
私が覚えているのは、新島が毒で核に攻撃した所まで。だから新島と内野のどっちがとどめを刺したのか知らないの。
どっちがあいつ倒したの?」
「それが…」
工藤にその後の事を全て説明した。
新島が俺を庇った事、強欲スキルを使った後の気絶の事。
「…それじゃあどうやってあいつを倒したのか定かじゃなくて、しかもあんたのスキルはこれ以上使えないって事?」
「使えない事はないけど…次使ったらどうなるか分からないからリスクが高い」
「まぁ…バリアと物理攻撃耐性ってやつとか強そうだし、これ以上あのスキルを使わなくても何とかなるでしょ。
防御系のステータスも上げれば飯田みたいになれるんじゃない?あの人が生きているのかは分からないけど…内野ならあの人みたいになれると思うわ」
「飯田さんみたいって…リーダーって事?」
「…そう。クエストの最中は…正直頼もしいと思ったわ」
「え…あ、そう///」
頼もしい…これを女性に言われて嫌がる男はいないだろう。ましてや工藤はかなり美人だ、これで嬉しいと思わない奴などいるのか?
かくいう俺も嬉しくて自然に口角が…
初めて掛けられる言葉に、赤面しながらつい笑みを浮かべてしまう内野であった。
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