第31話 早起き
「勇太!起きなさい!」
そんな声で内野は目を覚ます。時計には6:20と表示されているので、いつの間にか寝ていた事に気がつく。
目の前には内野の母が立っており、口調からして怒っている様子だった。
「あんた昨日何処に行ってたの!?
昨日晩御飯の時に呼びに行ったら部屋に居ないし…外に出掛けたのかと思ったけど、スマホも財布も部屋にあるから心配したのよ!」
そうだ、昨日から父ちゃんと母ちゃんがいるんだった…これはなんて言い訳すれば良いんだ
ガチャ
「お、勇太。いつの間にか帰って来てたのか」
父が母の声につられてか、俺の部屋に入って来る。
「お前昨日スマホも持たずにどこ行ってたんだ?親に話せないような所か?」
「あ、いや…」
俺が居た所が誰にも話せないところっていうのは正解だ。だからって黙り込むわけにもいかない…何て言えば納得してくれるかな…
…!?思いついた!
「き、昨日は彼女に会いに…それでちょっと夜に抜け出して…」
「あんた彼女出来たの!?」
「家に連れてきなさい」
よしきた!
両親は昔から俺が女子と仲良くしてるところなんて見たことない。そんな俺が女の子と会っていたと言ったら、俺が昨日家に居なかったことよりも、その女の子の事についての話に移るだろうと考えたのだ。
父ちゃんは日頃から「死ぬ前に孫が見たい」と、俺に言い続けていたし。
我ながら完璧な作戦、見事に話を移せた。
「どんな子なの!?」
「家に連れてきなさい」
…ん?もしかして
「その子との写真とか持ってないの!?」
「家に連れてきなさい」
あ、やらかした。多分これしばらく問い詰められるやつだ。それに父ちゃんは壊れたのかさっきから同じ事しか言ってないし…
「あ、もう時間だ。俺が学校行ってくる」
「まだ6時半にもなってないのよ。あんたいつも8時頃に家出てるじゃない」
「家に連れてきなさい」
俺は朝飯も食べずに、制服に着換え急いで学校に向った。この時、鞄の中にスマホと財布を入れ忘れていて、駅まで着くいた段階でようやく気が付いた。
まだ時間にかなり余裕があるのと、昨日の事を考えたかったので近くの公園のベンチでゆっくりする事にした。
朝はドタバタしてたから考えられなかったが…考えるべき事が多過ぎる気がする。
気絶の理由、ローブの人の目的、黒い狼の存在、何者かが造った地下、飯田さんの安否…これぐらいか?
だが、先ず最初に調べないといけない事がある。
「ステータス」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【レベル8】 SP25 QP36
MP 110
物理攻撃 24
物理防御 28
魔法力 18
魔法防御 52
敏捷性 16
運 6
【スキル】
・強欲lv,3 ()
・バリアlv,1(20)
【パッシブスキル】
・物理攻撃耐性lv,3
・酸の身体lv,2
ーーーーーーーーーーーーーー
やっぱりそうだ…SPを使ってないのに魔法力と魔法防御が上がってるし、『バリア』というスキルを手に入れてる。てか魔法防御が凄い上がってるな…
つまり、俺は強欲を使った直後に気絶したものの、スキルは発動しておりゴーレムの核を呑み込めたいう事か。
これでターゲット討伐者の所に俺の名前があった理由が分かったな。
だけど気絶の理由はさっぱり分からん…スライムの時はMPが0になっただけだ。それに比べて昨日は2回とも気絶したし、最後に使った方はスキルを発動した一瞬で気を失った。
…『強欲』を使えば使うほど、スキル反動で良くない事が起きるのか?
一回目:何も無し
二回目:スキル使用から数秒後に気絶
三回目:スキル使用時に即気絶
今の所そうとしか考えられないな。それじゃあ…4回目はどうなる?まさか死んだりしないよな?
試すのは危険すぎるしな…まぁ、あのスキルをもう使わなければ良いか。
これからはあのスキルが無くても戦える様にSPを割り振ろう。
先ずは使えそうな二つのスキルを上げてみた。
ーーーーーーーーーーーーーー
【スキル】
バリアlv,1→3(20→40)
【パッシブスキル】
物理攻撃耐性lv,3→4
ーーーーーーーーーーーーーー
この二つのスキルレベルを上げて、残りのSPで普通にステータスに割り振ったら…
ーーーーーーーーーーーーーー
MP 110 →120
物理攻撃 24→25
敏捷性 16→17
ーーーーーーーーーーーーーー
それぞれ1SPずつ使うと、やはりMP以外のステータスは1ずつしか上がらなかった。
それにスキルのレベルを3にしても、新しいスキルが手に入る事は無かった。
松平さん…話が違う…
スキルレベルが3,6に上がると何かしら新しいスキルを獲得できて、SP1使うごとにステータスが+3~5になるんじゃ…(17話)
この事に落ち込んだ後、ローブの人の目的・黒い狼の存在について考えてみるが、やはり何も分からなかった。
やっぱり鍵を握っているのはローブの男だな。
あの人なら何か知っているはずだ。次また会えるかどうかは分からないけど。
そして飯田さんの安否が心配だ。
工藤と新島は最後のランキングに名前が載ってたから生きていると思う。だけど飯田さんの名前は無かったから分からない…
強欲を使った瞬間に俺は気絶したから分からないし、工藤と新島もあの様子だと多分見ていないだろう。
だとすると…生存確認出来るのは次のクエストの時か。
最後に、何者かが造った地下への階段。
あれに関しても今の俺が考えても分かることはないだろうが、やっぱり異世界にも人間…の様な知的生命体がいるのかもしれない。
じゃあ俺達はいつかそいつらとも戦わないといけないって事か?
正直俺は人型の生き物を殺せる気がしない。人間に似ていたら殺すのをためらってしまうだろう…
昨日魔物を切り殺した時の感覚がまだ手に残ってる。あの時は必至だったからあまり思わなかったけど…嫌な感覚だ。
でもこの感覚に早く慣れておかないと、いざという時に困るのは俺と仲間達だ。もっと生き物を殺すのに慣れなきゃ…
「お兄ちゃん。そんな顔してどうしたの?」
気が付くと隣にランドセルを背負った女の子が座っており、内野の顔を覗き込んでいた。
あっ、もう小学生の登校時間か…
「そんな顔って…何かおかしい顔してた?」
「なんか辛そうな顔してる。学校嫌なの?」
どうやら俺は全く知らない女子小学生に心配されるぐらい酷い顔をしていたらしい。
「いや、学校の心配じゃないんだ。心配してくれてありがとね」
「そうなんだ…私と一緒って訳じゃないんだ…」
女の子は内野がそう言うと、少し落ち込んだ顔をする。
この子…学校に行くのが嫌なのか。
見る限り高学年だと思うが、勉強が嫌ってだけか?もしかして…イジメられてたりするのか?
「何で学校に行きたくないの?」
「…クラスの皆が悪者だから」
後者の方っぽいな…
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