第30話 討伐対象:コアゴーレム11

狼が上を向いた瞬間にローブの男は接近し切りに掛かる。

黒狼はそれを躱し、横に走り出すと小さな雷を身体から放つ。


男はそれを全て避けながら狼への接近を試みるが、距離をとって戦う黒狼には追い付けておらず距離は縮まらない。


双方の動きは内野のスピードでついて行ける動きではなく、加勢などは一切出来ない事が分かった。


俺達が行っても完全に足手纏いだ…

今の状況は黒い狼が優勢に見えるし、恐らくローブの男には遠距離攻撃の手段が無い。このままじゃずっと距離をとられて一方的に攻撃されるだけだ。


このままではあの人も死ぬかもしれない…まだ何も聞けてないし、ここで死なれたらあの狼について何も分からずじまいだ。

やっぱりやるしかない…ゴーレムの核を壊す!


「新島!工藤!俺は近づいて核を攻撃するから、二人は遠距離からあの核を攻撃してくれ!」


「わ、分かったわ!」


「『ポイズン』はそんなに遠くまで届かないだろうから私も行く」


内野と新島は走り出した。

ローブの男も3人の狙いが分かっていたのか、黒狼を3人から遠ざけるように追いかけていた。


「アイス!」


工藤がスキルを唱えると掌から氷柱が現れ、核を目掛けて一直線に飛んでいった。

軌道は完璧で確実に核に当たる…と思っていたが、核に氷柱が当たる寸前で氷柱は砕けてしまった。


「な、なんで!絶対に当たったのに!」


工藤はすかさずもう1発スキルを使うが、またしても氷柱は核に触れることなく砕けた。


「分かった!あの核の周りにシールドみたいなのが張ってある!」


内野の少し後ろを走っている新島がそう言ったので、核の周りを見てみる。

すると核を包む透明の球体が薄っすらと見えた。


あれが氷柱を防いだのか!

どうする…もしかすると近づいても核に攻撃出来る手段が無いかもしれない…だがもう引き返せない。


「ポイズン!」


新島は走りながら毒を核に放つと、毒は核を包む透明な球体に付着する。


「毒も駄目…後はもう内野君のスキルしかない!」


二人の攻撃は核を包む球体には無効という事が分かった。そうなると残りは内野のスキルしかなく、これが効かねばどうする事も出来なくなる。


核まで残り数メートル。もうすぐで手が届くという所まで来た。


もう『強欲』に賭けるしかない!頼む…あの核を吞み込んでくれ!


そう思い走っていると、雷の音と同時に一瞬だけ背後が光った。何事かと振り返ろうとすると内野は何者かに背中を押され、前に飛ばされた。




何が起きたのか分からず咄嗟に振り返ると、そこには…


口周りが血だらけになっている黒い狼と、その下には下半身が無い新島が倒れていた。

そして工藤は階段の前で倒れており、ローブの男は黒狼の首に横から剣を突き刺していた。



その光景を見た瞬間。内野の思考は止まり、急な出来事に頭が真っ白になる。




「止まるな!彼女はまだ死んでない!!」


ローブの男は剣で黒狼の顔を切りつけながらそう叫ぶ。黒狼はその攻撃を避けるために距離を置き、その場から少し離れる。


この時の内野はもう何が何だか分からず、とにかく立ち上がって走り核に近づくと


「強欲!」


スキル名を叫ぶ。

だが身体から闇が現れたのを見た瞬間、内野の意識は途絶えた。




…!?


次に目を覚ました時、内野は家のベッドの上にいた。汗で服がびっしょり濡れていて、息も荒くなっていた。


あれ…な、何が起きたんだ…?



!?

そうだ!新島と工藤は無事なのか!?


ようやく何が起きたのか思いだした内野だったが、冷汗が流れ身体は小刻みに震えだす。


まさか…俺が無茶したせいで二人は死ん…


そんな事を考えていると、いきなり目の前にこんな画面が現れる。


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『クエスト成功』

1位梅垣 海斗 QP36 +SP5

2位松平 愛奈 QP25 +SP4

3位内野 勇太 QP21 +SP3

4位大橋 大吾 QP20 +SP2

5位進上 誠也 QP19 +SP1


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ターゲット討伐者

『内野 勇太』『工藤 鈴音』『新島 藍』+SP5

他のプレイヤー+SP1

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ボス討伐者の所に二人の…あと進上さんの名前がある…

よかった…生きてるんだ…間に合ったんだ…


そう安心すると、内野はそのままベッドで眠りについてしまった。

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