第28話 討伐対象:コアゴーレム9
「私が地下に行きたい理由は狼に関する事だけじゃなくて、私を助けてくれた男の人について調べるためでもあるの。
私の予想だと、多分その黒ローブの人が最古参の『梅垣 海斗』なんだと思う」
ああ…松平さんが言ってた人か。名前ぐらいしか分からなくて、色々謎に包まれた男の。
「それでね…黒い狼の所にその人がいるんじゃないかと思ったんだ。明確に言えば、そこ以外にローブの人のいる場所が絞れないだけなんだけど。
何故か今回のクエストでもいる狼、姿を消している黒ローブの人。双方には何か繋がりがありそうな気がするの。
少なくともローブの人は黒い狼の存在には気が付いてる。だけどその情報を皆で共有しようとはしない…
その人が人見知りじゃない限り、意図的にその情報を隠してる様にしか見えないんだよね」
だとすると新島はローブ人に会うのが目的で、その人と話す為に狼の所に行きたいって事なのか。
だけど新島は狼の唸り声を聞いただけであり、同じ種類の魔物が今回も居ただけって可能性もある。同種の生き物の唸り声に個体差なんて無いだろうし。
そもそも工藤が地下を見てもゴーレムの核以外の魔力を見えてないって事は、もう地下にはいないと考えた方が良い気がする。
「魔力が見えないなら、やっぱりその狼ってここには居ないんじゃないか?
仮に狼がスライムと同じく魔力が見えない敵だとして地下に居ても、この地下にいる狼が前回のクエストにいた狼と全く同じ個体かどうかは分からないし、別にそんな深刻に考えなくてm…
「いや、今その狼が地下にいるのか確信は無いけど、私が聞いた唸り声をあげたのは絶対に前回の狼と同じ個体。
…自分でもどうしてここまで言い切れるのか分からないけど、初めて会った時と同じ様に地下からの唸り声を聞いた時にも懐かしさを感じたの」
内野の言葉に食い気味に被せ、自信満々に言う新島であった。
全く確信の無い情報なのにそれだけ自信満々に言われたら…なんか本当にそうなのかと思ってしまうな。
内野がそう考えていると、崩れた壁の瓦礫をどかす作業が終わり、一人が通れるくらいのスペースが出来た。
「…ごめんなさい。そもそもこんな話を聞いて判断しろって言うのはおかしいかもしれないけど、決めてくれないかな?
私は光の玉を持ってないし、階段の場所も分からないから二人に判断を任せるしかないの」
…元々ゴーレムの核を壊すのが目的で地下に目指していた訳が、その目的が変わるだけだから俺は地下に行ってもいいと思う。
でも地下には他の人が向かってるし、俺達が行く必要があるのかは疑わしい。それに工藤はQPを稼ぎたいだろうし賛同するとは思えないな…
「俺はいいけど、工藤が…」
「私は別に良いわよ。
階段まではそこまで遠くないし、どうせならワンチャン狙ってボスの所に行くのも良い気がするわ。ボスを倒せば確実に10QPはゲットできると思うし」
「…あ、二人共ありがとう…」
思いの外あっさりと決まった事に新島は驚いていたが、二人に礼を言う。
その後は工藤に先導してもらい、地下の階段のある方へと進んで行った。どうやらこの道を真っ直ぐ行けば辿り着けると言うので、それを信じて進む。
「あれが地下に続く階段ね」
暫くすると地下へ続く階段が見えてきた。
川柳から聞いた通り階段は石レンガで出来ており、自然形成された洞窟のゴツゴツとした壁には似合わないものだった。
「この下か…底ってどの位深いんだ?」
「そこそこ深い…ぐらいしか言いようが無いわね。でも今の所はまだ人も核も残って………あっ」
工藤は急に言葉を止めると「あっ」と言い黙り込む。
「どうした?」
「減った…地下にあった青色の光が少し減ってる…」
「「!?」」
光が消えてるって…今地下にいる人達が魔物に襲われ殺されてるって事か!?
「それってゴーレムの核がやってるのか?それとも他の魔物がいるのか?」
「…この先にはゴーレムの核しか魔物の反応は無いわ。だけど核の光の大きさは一切変わってないから、核はMPを使ってないし動いてもいないわ」
それじゃあ今回も前回のスライムみたいに魔力の反応が見えない敵がいるって事だろうか。
そういえば川柳さんの話だと、魔力探知スキルのお陰でゴーレムらしき反応が地下にあると分かったと言っていた。(24話)
工藤が核の魔力が見えるように、その時に探知した魔力は恐らく核だ。
川柳さんは魔力の反応が複数あったなどという事は言ってなかったので、ゴーレムの体の方の魔力は見えなかったという訳になる。
だとすると…今工藤が見えてないだけで、下で誰かをを襲っているのはゴーレムという可能性がある。
それ以外には新島が言っていた黒い狼って可能もあるな。
「その消えた青の光は私達よりも大きいものだったの。だから私達が行っても何も出来ないわ!もう戻りましょ!」
工藤は内野と新島に向かいそう投げかける。
どうする…俺達よりも強い人達が死んでいるのなら行くべきじゃないとは思うが…
「俺は…今も下に生きてる人がいるのなら助けたい…」
「ちょ!危険だって言ってるでしょ!」
工藤は階段を降りようとする内野を止める為に腕を引っ張る。
「危険なのは分かってる。この先に目的の黒ローブの人がいるかも分からないし、今戦っている魔物がゴーレムなのか狼なのかも分からない。
それでも…今動けば助けられるかもしれないんだ」
「工藤さん、本当に自分勝手で悪いけど…私も行く。危険だったら戻ってくるから、工藤さんはここで待ってて。QPの事は申し訳ないけど、次会った時に相応の物は渡すから…」
内野と新島の二人は工藤にそう言う。
「はぁ…もういいわ、二人が行くなら私も行く。下にどんな魔物がいても遠距離から核とやらをぶっ壊してやるわ。
そして手に入ったQPで解呪石を買って、余った分のQPをお金と交換して豪遊してやるわよ!」
その二人の言葉を聞き、工藤はため息をつきながらも降りる覚悟を口にする。
こんな事に巻き込んでしまい申し訳ない…今度QPで何か買って工藤にプレゼントしよう。
こうして3人は急いで階段を降り始めた。少しでも早く下の人を助ける為に。
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