第27話 討伐対象:コアゴーレム8
先回りして魔物を倒していた事を責められた内野だったが、新島によりその後直ぐに話が戻される。
「それで腕が壁に埋もれてた理由は?」
「いつまで経っても前の奴に追いつけないから、もう壁を壊して隣の道に移ろうと思ったのよ。魔物のお陰で壁の奥に道があるのが分かったし、穴が開いてるから行けるかと思って」
ぶっ飛んだ考えだが…壁が崩れてるって事は壊すのには成功したのか。
「それじゃあこの壁の奥には道があるのか。良く壊せたな」
「いや…これ私がやったわけじゃないのよ。二人も洞窟の中にいたのなら分かると思うけど、洞窟が崩れるような大きな音がしたじゃない。それのせいなの。
片手を穴に向けて『アイス』を使おうとした瞬間に大きな音がして、床が揺れたから壁が崩れたのよ」
じゃあ洞窟が崩れる音がした段階から、工藤は腕が埋まってここから動けなくなっていたのか。動けない時に魔物に襲われなくてよかったな。
「で、あんたらは魔物を狩る為に戻ってきたの?」
「私達は工藤さんと進上さんを探す為、あと地下に繋がる階段を探す為に戻ってきたの。何か進上さんや階段について…は知らないよね、だって暗闇の中一人だったわけだし…」
「進上の事は知らないけど、階段らしきものがある場所は何となく分かるわよ。てか今も青の光(人)がどんどん下に向かって進んでいるのが見えてるし、多分それ」
「え!」
「それだ!場所は何処!?」
二人はまさか工藤が情報を持っているとは思ってなかったので、新島は驚きの声を上げ、内野は工藤の肩を掴んで詰め寄る。
突然の二人の反応に驚いた工藤だったが、壁の方を指差し答える。
「え…この壁の向こう側の道を進んだところにあるけど…どうして階段何か探してるの?」
「クエストを終わらせる為だ。実は地下にゴーレムの
「なるほど、確かに地下に全く動かない大きな魔力の反応があるわ。じゃあ今からそこまで行くの?
どうせ今地下に向かってる人達は私達よりも強い人達だし、核ってやつを壊すだろうから私達は行かなくてもいいと思うけど。てか私は適当に魔物を狩ってQP稼がないと…」
工藤曰く他の人が地下に向かっているらしいし、別に俺達が行かなくても大丈夫か?
なら洞窟の魔物を倒すのに集中した方がいいのかもしれないな。
「我が儘言ってごめんなさい。でも私は…どうしても地下に確かめたい事があるの」
「確かめたい事?何それ」
「…確証が無いから今はまだ言えない」
新島は工藤と内野の意見と反対で、地下に向かいたいという。それが何なのか工藤が聞くが、新島は何故かそれを話したがらない。
もしかして…新島が洞窟探索を推したのと、俺に何か隠してるような反応をしたのと関係があるのか?
先ずはその確かめたい事が何なのか聞かないと
「話さないなんて無責任。何でも良いから言いなさいよ」
工藤は少し強めに新島に問い詰める。
俺もそう思う。新島が何を考えているのか口にしてくれないと何の判断も出来ないしな。
「確証がなくても大丈夫だから、取り敢えず話してくれない?
そうじゃないと俺はどうすればいいのか判断出来ないし」
「…そうだね、話さない方が無責任だよね。二人には話すよ」
それから新島は崩れた壁の瓦礫を除けながら話し始めた。
「先ずは前回のクエストで起こった事を話すね。これは前回のクエストで内野君に会う前の事なんだけど…
クエストが開始すると私は森の中に一人でいた。見えるのは森の植物・地面・空だけで、これだけ見るとただ外に出ただけにしか思えなかった。
でも20時なのに空が明るくて、昼間の様に太陽の光が射していたから、本当に異世界に来たって事は分かった。
私は生き残る為に出来るだけ体力を使わず、魔物に見つからない様に地面に横になっていた。
すると数十分後、背後から葉が擦れる音が微かにしたので、その音の方を向くと…
そこにいたのは巨体で黒色の狼だった。黒色の毛に覆われ全長は5m以上ありそうなぐらい大きくて、黄色の瞳が私の目と合う。
その黒い狼は低い唸り声を上げるけど、その瞳は微かに潤んでた。
私と目が合っても狼は中々襲って来なくて、今のうちに逃げようと立ち上がろうとした瞬間
知らない人が突如現れて、狼に向かって剣を振り下ろした。狼はそれを避ける為に後ろに引く。
私の前に現れた人は黒いローブを着ている男の人で、両手に持つ2つの剣を持っていた。
「向こうに逃げるんだ!」
男の人は左手の剣である方向を指しながらそう言う。
この時の私は何が起きているのか分からなかったけど、とにかく男の人に言われた方向に走って逃げた。
私は元々飲み物を買う為にコンビニに向かう所で、適当に選んだ靴だったから走りにくく、ステータスの恩恵を受けてはいるけど足は遅かった。
ある程度走った所で後ろを振り返って、さっきの魔物が追いかけてきてないか確認する。
久々に走ったというのもあり息が上がってた。
魔物が来ていないのを確認して、休む為にその場で横になる。
でも次襲われたら最後…逃げ切れない。折角私を助けてくれる人がいたのに無駄にしちゃうな…ごめんなさい…
多分あの黒いローブの人にお礼も言えずに今日死ぬんだろうな…
あっ、でも…最後にスキルっていうのを使ってみたいな。
こんな状況じゃなければ、多分スキルだとか異世界って展開にワクワクしてたんだろうし…
そう思った私は仰向けにながら手を空に向け、自分の持っているスキルの名前『ポイズン』と呟いてみた。
すると右手から紫色の液体が噴出した。
仰向けになりながら空に手を向けていたので、当然噴出したものは落ちてきて私に返ってくる。
咄嗟に左腕で自分の顔を守るけど、顔にも少し掛かってしまう。
普通ならこうなる事をある程度予想できたはずだけど、この時の私は色々混乱しててそれすら考えられなかった。
幸い液体が掛っても体には何事も無く、本当にあの液体が毒なのか疑わしい程だった。
これじゃあ護身にも使えない、動けないし身を守る手段も無い。やっぱりここで終わりかな…
もう寝よう…どうせ今の私に出来る事なんてないんだから…
もう諦めてしまおうと、私はここで寝る事にした。
「この後内野君に踏まれて起きたんだ」
俺が知らない所でこんな事が起きてたのか…だがこの話が地下の探索がしたい理由にどう繋がるんだ?
「そんな事があったのね。でもその話って今関係あるの?」
「…多分その狼がここの地下にいるんだ」
え、前回のクエストの所にいた魔物が今回もいるって事?
「今回のクエストで合流した時、私って地面に横になってたでしょ?
それで耳を地面に当ててたから聞こえたんだけど、下から…前聞いた狼の唸り声と同じものが聞こえたの」
「それじゃあ新島さんは、その狼に会う為に地下に行きたいって事?」
「…そう」
「何でわざわざ魔物に会いに行くのよ。そんなの危険なだけじゃない」
「実は初めて黒い狼を見た時、その狼に対して妙な懐かしさを覚えたの。たまにあるデジャブみたいな既視感じゃなくて、はっきりその狼を知っているような…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます