第22話 討伐対象:コアゴーレム3
先頭に光の玉と槍を持った内野。真ん中に小田切と、小田切に肩を貸す井上。一番後ろに木村という並びで行動する。
魔物と戦う時の為に三人の持っているスキルを聞いてみると
剣を装備してる井上は
-------------------------
井上 太一 lv,2
【スキル】
牙突lv,1(10)
【パッシブスキル】
頑丈lv,1
俊足lv,1
--------------------------
飯田さんには『牙突』というスキルについてだけ聞けたらしく、名前の通りに目の前に武器を突き刺す技らしい。
突くのなら槍の方が好ましいが井上さんは間違って剣を買ってしまったらしいので、俺の松平さんから貰った槍と交換した。
正直突くのはわざわざスキルを使わなくても出来そうな事だが、多分威力が違うんだろうな。
盾を持ち兜を被っている木村は
--------------------------
木村 空 lv,2
【スキル】
大楯lv,1(10)
【パッシブスキル】
装備効果上昇(頭)lv,1
--------------------------
なるほど、これで頭にだけ装備をしている理由が分かった。装備効果上昇で何が上がるのかはサッパリで、小田切さんも知らないようだ。兜が硬くなったりするんだろうか。
負傷している小田切は
--------------------------------
小田切 勝 lv,11
【スキル】
・ステップlv,2(10)
【パッシブスキル】
・俊足lv,2
--------------------------------
『ステップ』は名前の通りステップで素早く動けるというもので、咄嗟に回避する時に使えるらしい。やはりスキルなので普通に動くのよりも早く動けるようで、空中で使えば落ちる軌道を変えられるという。
普通に強くね?
『俊足』というのは足が速くなるようだ。
ステータスの敏捷性を上げると足の速さは勿論の事、身体が軽くなってジャンプや武器を振れる速さなども上がる。
この『俊足』は足の速さ上昇にのみ特化しているものだという。
どうやらこの二つのスキルのお陰で素早く動け、殆ど魔物からの攻撃を喰らった事がないらしい。
暫く何事も無く歩いていると、地面に横たわる見覚えのある背中が見える。そしてその者は三匹の兎に囲まれていた。
「新島さん!?」
「あっ…う、内野君…?」
兎に囲まれていたのは新島であった。だが何処も怪我しておらず、辺りは紫色の液体で囲まれていた。そして新島もその液体を被っていた。
そうか、新島は毒を被っていたから兎に攻撃されなかったのか!
自分には毒が効かないと分かっていたから出来た作戦…賢いな。
三匹の兎は内野達に気が付くと一目散に壁を前歯で堀り、そのまま壁の中に入っていった。
「壁に潜っていったぞ!気を付けるんだ!」
小田切さんのその声を聞き、一同は壁から離れて道の真ん中で兎を警戒する。三匹いるから分かりにくかったが、確実に音は内野達に近づいて来ていた。
三匹同時に来るのか…俺は防御力が上がっているから多少攻撃を受けても大丈夫だろうが、後の皆は不味いぞ。特に小田切さんはこれ以上負傷すれば危険…
あいつらが現れた瞬間に『強欲』を使うか…?
片手には光の玉を持っていたので、兎が襲ってくる前に地面に光の玉を置く。
光の玉を置いて顔を上げようとした瞬間、内野の右横の壁から兎が一匹飛び出してくる。兎は内野の顔と同じぐらいの高さから現れ、体勢が悪かったので防御や回避は間に合わない。
「ッ!ごうよk…」
「大楯!」
内野が『強欲』と唱えようとした瞬間に、木村が内野の前に出て別のスキルを使用した。
すると木村の前に青の半透明な大きな盾が現れる。その盾は兎の鋭い前歯を通す事なく止めた。
「先輩!後ろは任せます!」
「あ、ああ!」
こっちの方から壁を掘る音が二つ聞こえる…木村君が俺を守ってくれたように、俺も彼の背中を守らないとな。
だが二匹同時に現れたらきついぞ…バラバラに来てくれたらまだ何とかなるかもしれないが…
そんな内野の思い虚しく、木村の抑えている逆かの方から二匹同時に現れた。一匹は内野の目の前から、もう一匹は井上の近くから飛び出す。
内野は少し態勢を低くし、敵の硬そうな前歯ではなく胴に攻撃が当たる様に剣を振る。刃は腹を搔っ捌く様に当たり、兎は空中で勢いを無くして落ちる。
「牙突!」
一方井上は兎の前歯に向かって『牙突』を使用する。高速で槍を突き出し、槍の刃が前歯と接触した瞬間
敵の前歯は槍の硬さに勝り、槍は横に逸れる。前歯と刃が擦れた事により火花が散りながらも、兎の勢いは止まらない。
兎の前歯が井上の眼球に突き刺さりそうになった所で
「オラァ!」
小田切さんは脇腹を抑えながら兎に向かいタックルし、兎は横に吹っ飛んだ。
そして吹っ飛んだその先には新島の作った毒の水溜りがあった。
毒の貯まりに全身で漬かってしまった兎は狂い悶えるように暴れるが、僅か数秒で動かなくなる。
残りは木村の抑えている一匹だけで、壁の中に逃げようとする。
その背を向けた瞬間に木村は盾で兎の身体を殴る。そして内野が剣で身体を両断した事により絶命する。
「ふぅ…全員死んでるな。こっちは誰も負傷しなくて良かったよ」
内野は兎の死亡を確認し、全員の方を見てそう言う。
「またしても小田切さんに助けられました、ありがとうございます!」
「いいんだ。俺も君に助けられてるしお互い様だ」
「俺は木村君に助けられたよ。本当にありがとう」
「先輩のお役に立てて嬉しいです!」
井上は小田切に礼を言い、内野は木村に礼を言い、とても近くに魔物の死体があるとは思えないほど良い雰囲気になった。
「私も助かりました…皆さんありがとうございます」
新島も立ち上がり内野達に向かって礼を言う。
「内野君が来てくれなかったらいずれMPが尽きて死んじゃってたかも…」
「新島さんはクエスト開始からずっとここにいるの?」
「そうだよ。明りになるものを持っていなかったから、無暗に動くの危険だと思って横になってたの。
少し経つとモゴモゴと何かの音が聞えたから、念の為自分で毒を被っていたの。前のクエストでこの毒を掛かっても自分には害が無いのが分かってたから出来たんだ。
そしたらさっきみたいに囲まれて、真っ暗だからどんな魔物なのかとか分からないし、鳴き声で魔物が近くにいるのは分かるけど、いつ攻撃してくるのか分からなくて…もうダメかと思って諦めちゃってた…」
張りつめていた心が溶けたのか、新島の目からは少し涙が出ていた。
暗闇の中いつ襲われるか分からない状況…そんなの誰だって怖い。それでも新島は頑張って耐えてたんだな…
「そ、それは大変でしたね。でももう大丈夫です、俺達と一緒に行きましょう!」
内野はそう言いながら新島に手を伸ばす。
「…うん。ありがとうね」
新島は目に涙を浮かべたまま内野の手を取ろうと手を伸ばす。
…あ
とある事に気が付いた内野は咄嗟に差し伸べた手を引っ込めた。
「…え?」
「あ、その…毒のせいで触れない…」
「あっ、そうだね」
…しまらんなぁ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます