第20話 討伐対象:コアゴーレム1

転移が終わり青い光が消えると、そこは下を向いても自分の身体が見えない程の暗闇であった。


え?何か転移失敗したかのか!?

でも手足の感覚はあるし…地に足はついている感覚もある。


もしかして運悪く洞窟の中とか、外の光が一切届かない様な暗い所に転移しちゃったのか。

これじゃあ動こうにも動けない、それに今モンスターが襲ってきたらひとたまりもない。どうする…


そこでハッと何か思い出した内野は、急いでショップを開いて何かを探し出す。

--------------------------------

光の玉  必要QP5


『辺りを照らす玉。割れると効果を失う』


 購入しますか YES/NO

--------------------------

これだ!さっきショップを漁ってる時に名前だけ見たが、思った通り光を出すアイテムのようだ。


魔力水の為にQP節約だとか言ってる場合じゃないので、急いでYESを押し購入する。

アイテムが青の光と共に目の前に現れた瞬間、暗闇だった空間にいきなり大きな光が現れたので、あまりの眩しさに急いで目を瞑る。



眩し!まさかこんなに光が強いなんてな。でもこれで問題なく動けるぞ。


光の玉はソフトボール程の大きさであり、移動するためには片手で持ちながら動かなければならない。


懐中電灯だと照らした方向しか見えないけど、光の玉は全方位を照らしてくれるし助かるな。大体20m先までの道は見えるし光量に不満はない。


内野は右手に光の玉を持ち、左手に槍を持ちながら辺りを見渡す。案の定洞窟の中で、道幅2m高さ3m程だった。


狭い道だし槍が使い易そうな所でよかった。道幅が狭いから剣を振ると壁にぶつかりそうだが、槍の突きなら問題なさそうだ。

近くには魔物はいないし、まだQPに余裕があって助か…



…俺にはQPの余裕があった。だが他のメンバーはどうだ?

俺の他3人は光の玉を買えるQPは持ってない。それに他の人たちも、前回の帰還石に20QP使ってしまっている。


もしもかして…また大量の人が死んでしまうんじゃないか?

だとすると、光の玉を持っている一部の人が彼らの為にモンスターを狩らないといけない。



きっと今までの自分だったら積極的に魔物を狩ろうなんてしなかっただろう。


だが学校で皆から感謝され褒められ、それがどれだけ気分の良いものかを知ってしまった。

松平さんのお陰で、自分のスキルが特別という事を知った。

スキルを使えば自分は更に強くなれ、皆を助けられる力を手に入れられる。


…討伐対象のゴーレムは俺が倒す。そして皆を助けてみせる


内野はそんな自惚れた考えをし、積極的に魔物を狩る為に洞窟の中を走り出した。



数分程走っていると、前方で何かが動いている事に気が付いた。小さい生き物であったが油断は出来ないので目を凝らし、どんな魔物なのかを見る。

小さい生き物であったが油断は出来ないので、足を止め目を凝らし、どんな魔物なのか見る。


そこにいたのはコウモリらしき生き物で、地に足をつけ何かを貪る様にクチャクチャと音を立て食べていた。身体は現実世界にいるコウモリよりも大きく、中型犬程の大きさであった。

コウモリの身体で影になりよく見えないが、少なくとも食べられているのが人間では無いと分かり安堵する。


コウモリは内野の存在に気がつき振り返ると、牙を見せ威嚇してくる。


小さいし一匹しかいないし倒せるか?

前のゲジゲジみたいに遠距離攻撃の手段を持っているのか分からないが、出来る限り槍のリーチギリギリの所で距離を置いて戦おう。

ドッジボールのお陰で分かったが、ステータスの恩恵では動体視力が上がったりはしないので、あまり敏捷性を過信して近づいたら駄目だ。


光の玉を地面に置いてからコウモリに槍を向け、それに反応しコウモリも羽を広げ臨戦態勢になる。



先に仕掛けたのは内野で、相手の頭目掛けて槍を突き刺す。コウモリはその槍をギリギリの所で避け槍の上に乗ると、槍の上を伝って内野に向かってくる。


咄嗟に左手で向かってくる相手に殴りかかると、内野の拳を丸吞みにするようにコウモリは大きく口を開き嚙みついてくる。この時コウモリの頬が大きく広がり、拳が丸々敵の口中に入った。

そして牙が内野の手首辺りに突き刺さる。


「痛っ!」


牙が手首に食い込み痛みが走る。そしてコウモリは内野の血を吸い始める。

右手でコウモリの頭を何回も殴るが中々離れない。殴りでは駄目だったので槍の先端部分を持ち、コウモリの目に向かって突き刺すと


「キエェェェ!」


コウモリは苦しそうに声を上げて内野の拳から離れる。そしてコウモリは地面に背中から落ちたので、内野は右手に持った槍でそのまま相手の腹を突く。


「うおおおおお!」


「ギッ…!ギギギェ…」


暴れるコウモリの羽に足を掛け動けなくし、両手で槍を押し込む。すると槍はコウモリの胴を貫通し、槍は地面に刺さる。



「ハァ……ハァ…」


しばらくしてコウモリが動かなくなった事を確認し、内野は槍を抜いてその場で座り込む。

コウモリに嚙まれた左手首には牙が刺さっていた跡があるが、そこまで深くは負傷していなかった。ただ血を吸われたからか少し痺れる。


よかった…特に出血はしてないし、痛みも耐えられない程じゃない。少し休んだら進もう。

それより…コウモリにトドメを刺した時の感覚が手に残っているが…嫌な感覚だ。身体よりもメンタルへの疲労が貯まるな…


休憩しながらステータスを開きレベルの確認をすると、レベル4→5・SP8→13に増えていた。


SP13か…本当は『強欲』に振るつもりだったが、この腕の傷を見ると…やっぱり『物理攻撃耐性』も上げたい。ちょっと『強欲』を上げる為にSPを温存するのは止めよう。


SPを使い『物理攻撃耐性』をlv,1→3に上げ、そして残ったSP4も全て使い物理攻撃・防御を上げた。


この傷も『物理攻撃耐性』が無ければもっと酷い事になっていたかもしれないな。レベルが上がりどれ程の効果を発揮してくれるのか分からないが、役に立ってくれると願おう。

てか酸の身体ってスキルは役に立ったのか?


ふとそれが気になり、コウモリの死体の牙を見てみる。

すると内野に刺さっていたであろう牙のみ、他の牙と比べてボロボロになって抜け落ちていた。


もしかして『酸の身体』も凄い役に立っていたのか?牙がボロボロになったお陰で軽傷で済んだのかもしれない。気が向いたらこれのレベルも上げてみよう。


コウモリの牙を確認しする時に、コウモリが食べていた物が目に入る。それは小動物らしき死体であったが、コウモリに血を殆ど吸われたからか干物の様にぺしゃんこになっていた。


もしかしてあのコウモリに長い間血を吸われていたら、俺もこうなっていたのか?

魔物恐るべし…『酸の身体』『物理攻撃耐性』には頭が上がらないな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る