第19話 影の者

「とにかく君のスキルは特別だから、後でリーダーにも相談してみるね!」


「ねぇ、あのリーダーって呼ばれてる人の名前ってなんて言うの?」


工藤は年上である松平に対してため口でそう言う。


「リーダーの名前は飯田いいだ 武道たけみち。さっきも言ったけど私達は私と同じ回に参加して、ここの中だと結構古参だよ」


「なら一番古くからいるのは誰なんですか?」


続いて進上さんが聞く。


確かに気になる。やっぱり最古参の人が一番レベルが高いのか?


「…最初のクエストから生きている人が一人いるんだけど、彼については…あまり分からないの。でも今も何処かにいるとは思う」


「え?分からない?」


「うん、確かに最古参で今回18回のプレイヤーなんだけど…どうやら認識阻害が出来るスキルを使っているっぽいの。だから姿が見えなくて…

でもしっかりモンスターは倒していて、いつも最後のランキングで1位を取ってるし、多分レベルは一番高いと思う」


そんな人がいるのか。姿を見せないって…何で協力せずに一人で戦うんだろうか。


「そんな人がいるのね、名前はなんて言うの?」


「彼の名前は『梅垣うめがき 海斗かいと』。私が覚えている限りでは、寡黙で美形な人だったよ」


寡黙・美形・一匹狼…なんかカッコイイな!



…って『梅垣海斗』?何処かでその名前を…


「…梅垣。前回のクエストが終わった時のランキング1位にいた人ですね」


既視感がある名前にモヤモヤする内野・進上・工藤だったが、新島が指摘したことにより思いだす。


そうだ!梅垣ってランキング一位にいた人だ!


「あ~僕はクエスト終わる寸前まで必死に走っていたから、クエスト終了後もその名前を覚える余裕は無かったけど、確かそんな名前載っていましたね」


「私も全力疾走してたからそんなの覚える余裕なかったわ」


俺も進上さんと工藤の様に覚えてなかったな。

新島は前回の最後の方は待機していたから、冷静にその名前を覚えていられたのか。



「あっ、あと数分でクエスト始まっちゃうけど…その前に新規プレイヤーが全員無事だったって伝えにリーダーの所に行かないと!

多分まだ新規プレイヤーにルールとか説明してると思うけど、みんなも付いてくる?」


「私は暇だし行こうかな~」

「剣の事もあるし僕もついていきます」

「私も行きます」


「…僕は少しやりたい事があるので大丈夫です。武器とか魔力水だとか…今の内にアイテムについて調べておきたいので」


3人は即決で松平についていくと決める。だが内野だけはその場に残る事にした。


「なら私のお下がりでよければ…」


そう言いながら松平は両手を前に出す。するとその上に青色の光と共に鉄の槍が現れる。柄が3m程あり、その先に刃がついている単純な構造の槍である。


「この槍を上げます。これより強い武器を既に持ってるから遠慮しなくて大丈夫だよ」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


松平から槍を受け取り手に持つと、内野は槍をまじまじと見つめる。


「…そんな槍を見つめてどうしたの?」


「いや、お下がりの割に…傷一つ無いのに驚いて…」


柄に傷がないのは分かるが、見た限り刃にも傷や汚れが無い。まるで新品だ。


「あ…そうだ、言い忘れてた!

ランダムガチャから手に入った『』表記のアイテム以外は、壊れてもクエストが終わると元の状態に戻るんだ。

流石に帰還石とかは一度使えば無くなるけどね」


「なるほど…それでこんなに綺麗なんですね」


話を聞くにつれ、どんどん新しい発見があるな。

松平さんは丁寧に教えてくれたけど、多分あれはほんの一部なのだろうし、俺の知らない事がまだまだありそうだ。



皆と別れの挨拶をし、内野はその場でステータスボードを開いて地べたに座る。


さて…ショップにどんなアイテムがあるのか見るか。

本当はここに来る前にやるべき事だろうが、学校で色々あって忘れていたから仕方ない。


その前に新島から貰ったこの靴について調べるため、一旦【インベントリ】欄を開いてみると


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【所持アイテム】

・ブレードシューズ

・鉄の槍

--------------------------------------

この様な表記になっており、名前の横にはそのアイテムの画像があった。タップなどしても、持っているアイテムについて詳細などを見ることは出来なかった。


てかこのブレードシューズってやつ…普通の靴にしか見えんな。ブレードってつくから刃でもついてるのかと思ったが、何処をみても刃らしきものは無い。

この靴について松平さんに聞いておくべきだったな…


次に【ショップ】と書いてある所に触れると色々なアイテムの名前が出てくる。

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所持QP15

<ショップ>       QP

 スキルガチャ      50

 パッシブスキルガチャ  50

 蘇生石         50         

 帰還石         20

 装備限定ガチャ     20

 アイテム限定ガチャ   20

 魔力水MP50       10

 ポーションシリーズ   10

 ランダムガチャ     5

 10万円        1

 運向上         10

              [2ページ目]

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これは前に帰還石を買おうとした時にみたページだ。

探し物の魔力水が見つかったのでタップすると


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魔力水MP50  必要QP10


『一瓶飲むとMPが50回復する』


 購入しますか YES/NO

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これが魔力水か。所持QP15に対して10使うのは痛いな、一先ず他の物を見てから買うか決めよう。必要になったら買えばいいわけだし焦る必要はない。


武器とか防具はなかったのでそのまま次のページを見ていく。

すると鉄の武器という名前が目に入り、タップしてみる

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鉄の武器  必要QP7


『鉄製の武器。剣・短剣・槍・弓・斧・杖の内1つを選択して購入できる(購入必要レベル1以上)』


 購入しますか YES/NO

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なんか色んな種類の武器があるんだな。周りを見る限りほとんどの人が剣と槍だし、松平さんがくれた槍も多分これだろう。

てか購入必要レベルというのがあるってことは、レベルが上がるともっと良い武器が手に入るのか。


一応鉄の防具がQP5で買えるという事も確認したが、ショップあさりに時間をかけすぎたせいでクエスト開始まで残り1分になる。


内野の中にはクエストに対する不安と、クエストを楽しみにしている気持ちが混在していた。


大丈夫。今回は100人以上いるし、前回と違い俺の能力も上がってる。

それに俺のスキルは特別だ。魔物を沢山倒しレベルを上げ、強欲でステータスを奪えばもっと強くなれる。

あわよくば俺がボスを…



内野がそう考えていると、全員の身体が青く光始める。

クエスト開始まで秒読みだ。


5,4,3,2,1



全員の身体は青い光に包まれ、そして消えた。

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