第16話 新たな生活
俺の名前は『内野 勇太』、現在高校二年生。
これから花のような高校生活を送るつもりの者だ。
俺は勉強も運動も出来ないし顔も地味、その上人見知り。
当然異性から言い寄られる事もない。
だが今の俺ならリア充になれる可能性があるんじゃないかと思っている。
ほら、小学生の頃は足が速い奴がモテたように、ドッジボールで数人を相手に勝ったという功績を持つ俺ならいけると思う。
これからの学校生活が楽しみになってきた。
だが一つ不快の事がある。
朝来て廊下を歩いていると、廊下で会話してたヤンキーにいきなり睨まれた。こいつらは小西の取り巻きだ。直接何かしてくるわけじゃなかったが、あまりいい気はしない。
それに休み時間になると
「小西殺しの内野って誰!?」
って他のクラス人が来てたりした。そしてその度にヤンキー達がこっちを睨んでくる。
てか噂に尾ひれ付き過ぎ。絶対面白半分に噂流してる奴いるだろ。
そんないつもとは少し違う学校生活だったけど、休み時間にクラスの人と話せるようになったし、いつもより楽しく過ごせた。
でもヤンキー達が大人しいのは意外だった。睨んではくるが他に何かしてくるわけでもない、小西がいないからか?
学校の授業が終わり、山田達と少し話してから内野は早足で帰る。
実は今日は内野の両親が沖縄旅行から帰ってくる日で、内野はお土産を楽しみにしながら帰宅する。
「ただいまー、お土産買ってきた?」
「おう。勿論買ってきたぞー」
「あら、おかえりなさ……いや、数日ぶりに帰ってきたからただいま…あれ…どっちが正しいのかしら」
リビングには既に内野の母と父が帰って来ており、机の上には大量のお土産があった。
これで面倒臭い家事をやらずに済むし、美味いお土産を食えるぞ!
俺の父ちゃんは普通の商業会社で働いていて、気さくな性格をしている。
母ちゃんは専業主婦で、家事は普通にこなすが少し抜けてる所があるので危なっかしい。
兄弟はおらず3人家族で、家族仲は良い方だと思う。
内野は両親が買ってきたお土産を食べながら、旅行の話を聞いた。
両親の話を聞き終わり、お土産を大量に食べて腹が膨れた後、自分の部屋へ行きベッド横になる。
「ねぇ君、こんな所で寝てたら踏まれちゃうよ?」
突然誰かに声をかけられ目が覚める。
内野は目を擦りながら上体を上げ周りを見渡す。
ここは………あの場所だ!
という事はまたクエストが始まるのか!
俺が寝る前はまだ17時ぐらいだった…寝ちゃったか…
「ねえ君、クエストがあるかもしれないっていうのに…よくそんなに眠れたね」
「あ、お腹いっぱい食べたら眠くなってしまって…」
内野を起こしたのは30過ぎ位のおじさんであった。下半身と頭にのみ鎧を纏っており、胴と腕は普通の服であった。
胴の部分はどうした…奇妙な格好だな…
「あれ、君は!?もしかして前回初めて召喚された子!?
良かった…生き残れたんだね!」
おじさんは内野の顔をまじまじと見ると、前回初めてのクエストに参加した者だと気が付き、興奮気味に問いかけてくる。
そっか、昨日のクエストの生き残りなんていないと思っていたのか。
「はい、僕以外の昨日召喚された3人も生き残りまし「本当に!?」
内野が喋っている途中で後ろから女性の声がする。振り向くとそこには迷彩服の女性がおり、驚いた顔でこちらに近づいてくる。
「前回の新規プレイヤーが全員生き残ったの!?」
「は、はい。運良く4人とも生き残れました」
「よ、よかった~」
迷彩服の人は心底安心したような顔をして胸をなでおろす。
きっと俺達を見殺しにしたのを気に病んでいたのだろう。
「あ、なら前回説明できなかったここについてのルールとか説明しないとね。まずは前回の新規プレイヤーの人を探しましょう」
そう言うと迷彩服の女性は残りの3人を探しに行った。
「いや~初めてのクエストで、しかもあの状況で生き残るなんて…君達は凄いよ!もしも分からない事があったら何でも聞いてね」
そう言うと、おじさんは他の仲間の元へ向かってい行った。
口調がおっとりしたおじさんも迷彩服の人も良い人そうだし、分からない事は後で色々聞こう。
数分で前回の4人は集合した。
進上はスーツでは無くジャージを着ている。
新島は前回と同じ服を着ているが、ぼさぼさだった髪は治っている。あまり良くなかった顔色も少し良くなっている。
工藤は相変わらず兜被っていた。
兜は中世の騎士が被っているもので、クエストでは顔は隠れていた。だが今は顔を守っている部分を上げ顔が見える。
って脱げないから3日間あの格好で過ごしたのか!?
「皆無事で良かったよ!前のクエストが終わる瞬間、スライムが僕の視界に現れたから内野君が無事だったのか心配だったんだ!」
「私も皆にまた会えて嬉しい…」
「うん。四人全員が五体満足に生還出来てよかった」
「…」
進上、新島、内野の順に安堵の声をあげるが、工藤だけは黙ったままうなだれていた。
「工藤…結局その格好で3日過ごしたのか?」
「ええ…そうよ」
内野の言葉に反応はするが、少しテンションが低くい。
あ、もしかして兜のせいで風呂に入れなかったからか?
それか外へ一歩も出れなかったとか?
「じゃあ皆、今日こそルールだと色々教えるね。
でもその前に、皆もしも武器とか防具を持っていたら今の内に装備しておいて欲しいんだ」
「ん、どうしてですか?」
「今回も前の君達と同じ様に初めてのクエストって人が来て、リーダーが説明しているんだよ。
その時に皆が鎧だとか武器を持っていると、この光景を見せるだけ新規プレイヤーの人がよく話を聞いてくれるようになるんだ」
なるほど、でも俺は特に何も持ってないから関係無いn…
そこでようやく気が付いた。
ベッドで寝ていた所で呼び出されたので、今の内野は手ぶらであり、裸足である事を。
ヤ、ヤバイ…もしかして…今回は裸足でクエストを受けないといけないのか!?
「ね、ねぇ…余ってる靴あげようか?」
内野の顔に焦りが顔に出ており、それに気が付いた新島がそう言う。
だが、見る限り新島が余っている靴を持っているようには見えない。
「いや…あるならお言葉に甘えて貰うけど…持ってないでしょ?」
「ううん、あるよ」
新島はそう言うとステータスと呟き、ボードを少しいじる。すると新島の前に青の光と共に革の靴が現れた。
「私が前回ガチャで手に入れたアイテムだけど…君にあげるよ」
「待って。アイテムって自由に取り出せるの?」
「え…知らなかったの?
てっきり君の事だからそこら辺は既に分かってるかと思った」
平然とアイテムを出した新島に驚く内野だった。
新島の中では、内野は冷静で頭の切れる人だという認識があったのか、啞然とする内野を見て新島も驚いていた。
ああ…そういえば昨日今日は学校の事で浮かれててあまり調べて無かったな…
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