最終話 幼馴染を愛で隊
◇
うっすらとロウソクの灯りに照らされた会議室。
そこで、俺と絵里香はどこから持って来たのかわからないクラッカーを打ち鳴らされていた。
「「隊長、絵里香ちゃん! 両想いおめでとう~!!」」
咲愛也ちゃんが、満面の笑みでパチパチと拍手する。
「幼馴染で恋人同士とか、やっぱり最高だよねぇ! 夢だよねぇ!」
「今僕らがいるこの空間が、マジもんの夢だけどな」
「泉くん、まだ拗ねてんの~? いいじゃん、隊長も泉くんのせいで身バレしたこと許してくれたんだし、かえってハッピーエンドになったじゃん。もう誰も怒ってないんだしさぁ~」
「う……アレを『ごめん』で許しちゃう隊長も、お人好しが過ぎるっていうか……せめてなんでもいいから要求して欲しかった……『殴らせろ』とかさぁ……」
「別に。俺は泉を殴ったところでなんにも嬉しくないよ」
「あ~も~! そういう態度だよっ!! か、帰らせて! 恥ずかしいし、申し訳ないしっ、もう居られないっ……!」
「まぁまぁ、隊長に先を越されたからといって無粋なのはよくないですよイズミくん。皆でお祝いしましょう。ほら、いつかきっとイズミくんもうまくいきますようにって、隊長に爪の垢を煎じて飲ませてもらいなさいな」
「クラウスのおっさんはさぁ、真面目な顔してそーゆーこと言うのやめてくんない!? わかってるよ、僕が隊長と違って性格悪いことなんて。でも、今更どうこうなるもんでもないの! けど、真顔でそう言われると割とガチで心にズキズキくるからさぁ……!」
「……? すみません。私はただイズミくんを励まそうと……それと、訂正してください。私はまだ二十代。断じておっさんではありません」
「えー、それ天然なのぉ?」
「とにかくっ! よかったねぇ、隊長!!」
咲愛也ちゃんに上手にまとめられて、『幼馴染を愛で隊』のメンバーは皆一様に笑みを浮かべた。
(ああ……俺、隊長業をしていて本当によかったな……)
その輪の中に、もうキューティの姿はない。
仕事を終えた神として、天界かどこかへ帰ったのだろうか。
それとも、新たな愛――獲物を探しに、今も世界を彷徨って……?
ただ、キューティは女神の力を使って、俺にこの空間を残してくれた。
夢で会えるというだけの、ちっぽけで不安定な集団かもしれない。
けど、今では俺の大切な居場所……
――『幼馴染を愛で隊』。
周囲を見回すと、ふとアリーシアちゃんと目が合う。
ぐしゅ、と涙を拭って、悔しそうに精一杯に俺たちを祝福してくれている。
「アリーシアちゃんも、ありがとうね」
声をかけると、アリーシアちゃんは「声が弩級に優しい~! もうヤダ~! 隊長のタラシ~!」とか言って、これまたどこかからあらわれたブドウジュースを一気飲みしている。
(ああ、なんだか……)
「楽しいね」
(!)
隣で、絵里香がふわりと笑った。
その表情の柔らかさと声のあたたかさに、どうしようもなく涙腺がゆるくなる。
どうやら人は、幸せすぎても泣いてしまうものらしい。
「ははっ。今だけは、また仮面が欲しいかも……」
なんて。こっそりと目尻を拭って、俺は笑みを浮かべた。
「さぁ、皆グラスの用意はいい〜?」
「挨拶は、もちろん隊長がやるんだよねぇ?」
メンバーの視線が集まり、俺は手にしたグラスを掲げた。和やかな雰囲気に背を押されるように、ちょっと恥ずかしい気持ちをおさえて。
「じゃあ、ご期待に添えるかわからないけど……皆さん、乾杯!!」
「「「かんぱ〜い!!」」」
そうして俺は、『幼馴染を愛で隊』ではお決まりの言葉を告げる。
「すべての世界の幼馴染たちに、幸あれ!!」
(完)
(あと少しだけ、エピローグがあります。引き続きフォローいただけると嬉しいです!)
※あとがき
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!中編ということもあってかなりの駆け足でしたが、少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。
またこの作品は現在、カクヨム『お仕事コンテスト』応募中です。
よろしければ感想を、作品ページのレビュー、+ボタンの★で教えていただけると嬉しいです!
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★★ まぁまぁ
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今後の作品作りのため、何卒、よろしくお願いいたします!
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