第126話 あ、友達じゃないから無視していいよ!

前回のあらすじっ!

 理央と、理央に似た美人な女性が男に絡まれてたので、追っ払いました。そしたら、理央がもう一人の女性を放置して歩き始めました。後ろから何かを叫んでいる声が聞こえます。以上っ!




 俺の手を掴み、歩き始めた理央に聞く。


「おい、なんか後ろから、俺たちに向けて叫んでる女性がいるんだけど。一緒に絡まれてたから、友達とかじゃないのか?」


「あ、友達じゃないから無視していいよ!」


「いや、さっきからめっちゃ名前呼ばれてるぞ?しかも追いかけてきてるし」


 今も「ちょっと理央!待てよ!アタシを置いてくとか酷いぞ!」とか叫んでる。


「はぁ、ちょっとあの女と話したいことあるから、少しだけ待っててね」


 そう言って、理央は歩くのをやめ、理央に似た女性の到着を待つ。


「やっと追いついた……。おい、理央!なんでアタシを置いてくんだよ!」


「むしろ、なんで私と凛くんのデートについてくるの!?」


「いや、面白そうかなーって」


「…………ごめんね、凛くん。人生で1番無駄な時間を過ごさせてしまって…」


「おい!アタシとの会話は無駄な時間じゃないぞ!?」


「前回はアウトレットに行ったから、今日は……」


「無視するなよ!」


「………はぁ、そろそろ鬱陶しく感じてきたなぁ」


「おい理央、心の声が漏れてるぞ?」


「あ、ごめん、つい本音が……」


「それはわかってるよ!」


(それは誰でもわかるわな。でも、理央がここまで雑に対応するのは珍しい。理央に似てるからお姉さんとかかな?)


 そんなことを思ったため、理央に聞いてみる。


「なぁ、理央。この女性は誰なんだ?」


「ん?ただの知らない人だよ。さっき悪い男に絡まれる前に、私に絡んできた人」


「あ、知らない人なんだ。てっきり……」


「いや、確かに絡んできたけど、知らない人じゃないから!アタシは理央の姉の『涼風蓮奈すずかぜれんな』だよ!」


(やっぱりそうだったか。理央の親族の方だとは思っていたが、お姉さんだったとは)


 蓮奈さんは、理央と同じ水色の髪を腰まで伸ばしている。そして理央と同じくらい胸が大きい。多分、理央よりも大きい。


「ねぇ、凛くん。今、どこを比べたのかな?怒らないから教えて?」


「いえ、どこも比べてないですよ?」


「ふーん」


 理央からジト目で俺を見る。


 俺はジト目から逃げるため、蓮奈さんに話を振る。


「れ、蓮奈さんはなぜ理央と一緒にいたんですか!?」


「あぁ、午前中、家族と出掛けてたんだが、その時の格好がいつもより張り切ってたから、午後から何があるのか問い詰めたんだ。そしたら、デートとか言い出したから野次馬になろうかと」


「……………あ、そうですか」


(野次馬かよ!すごく迷惑な奴じゃねぇか!)


「ごめんね、凛くん。このまま放置しようと思ったけど、無理そうだから、もう少しだけ待ってて。早いとこ要件済まさせて帰らせるよ」


「あぁ、わかった。そろそろ立ってるのが疲れたから手短に頼む」


「おい、その会話を本人の目の前でしたらダメだろ」


 なんか言ってるが俺と理央は無視する。


「ねぇ、お姉ちゃん。ホントは……」


「あ!あっちでリア充共がイチャイチャし始めたぞ!ちっ!死ねばいいのに!」


「「……………………」」


(すごく帰ってほしい!)


「私と凛くんがデートするって聞きつけて絡みに来る。ね?さっきの悪い男よりも前に絡まれてるでしょ?」


「ホントだな。蓮奈さんも追い払うのが正解だったか……」


「なんで2人して、私を邪魔者扱いするんだよ!」


「野次馬なら邪魔者扱いされるよ!」


 理央から酷い扱いをされる蓮奈さん。


(まぁ、野次馬は迷惑だな。………あれ?理央のお姉さんだから割と常識人かと思ったけど全然そんなことないぞ?)


 そう思ったため、理央に聞いてみる。


「なぁ、理央のお姉さんだから割と常識人かと思ったんだが、全然そんなことないんだけど……」


「あ、それはね、最近彼氏に振られたんだって。だから、私たちが羨ましいんじゃないかな?」


「なるほど……って!俺たちは別にデートしてるわけじゃなくね!?」


「いやいや!なに言ってるの!男の子と女の子が遊びに行くことをデートって言うんだよ!」


「えっ!そうなのか!?俺、理央に強制的に連れてこられたんだけど、これもデートになるのか!?」


「きょ、強制的じゃないよ!私は普通に誘っただけだよ!『ちびっ子幼馴染とは遊びに行くのに、私とは遊んでくれないの!?』って凛くんに言っただけ!」


「そう言われたら断れんわ!だいたい……」


「ストーーーップ!」


 俺と理央は、いきなり叫ぶ蓮奈さんに驚き、会話をやめて蓮奈さんに注目する。


「なんで私を無視してイチャイチャし始めるのよ!私が惨めになるじゃない!」


「いや、私たちのデートの野次馬をしてる時点で、もうすでに惨めだよ」


「……………そ、そんなことないし!」


(はやく帰ってくれないかな!?)


 俺は本気でそう思った。

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