第118話 はぁ……仕事辞めよ

前回のあらすじっ!

 火口さんにリューくんの正体が俺だとバレかけてる!全力で誤魔化さなければっ!以上っ!




(くっ!まさか絆創膏から辿り着かれるとは思わなかった!俺がリューくんの正体だということがバレると「うわぁ、リュー様の正体って汐留さんだったんだ……」と言って、火口さんが引き篭もってしまう!どんな手段を用いても誤魔化さないと!)


 手段を選んでる場合ではないため、理央たちにアイコンタクトでhelpを送る。


 すると、何やら2人でコソコソと話して、先島さんが俺の耳元で…


「涼風さんと話した結果、これはもう、バラした方がいいという結論に至ったんだけど、どうするの?」


「そんなの全力で隠すに決まってるだろ?」


「そう言うと思ったよ」


 まるで答えがわかってたかのような素振りをする先島さん。


「いずれバレると思うから、ウチらはバレるなら、はやいほうがいいと思ってる。だから、誤魔化すの手伝わないから。ずっと黙っとくからね」


「くっ!先島さんたちは今日何しにここに来たんだよ!」


「少なくとも、誤魔化す手伝いをするために、ここに来たわけじゃないからね!?」


(先島さんたちは使い物にならない。ここは俺だけで誤魔化すしかない!何かいい案はないのか!?)


 俺は慌てて考えるが…


「汐留さん?先島さんと何を話してるの?」


 火口さんが俺に詰め寄ってくる。


(おい!まだ何も誤魔化す方法を思いついてないんだけど!ど、どうすれば……)


 内心パニックになっていると…


「汐留さん、知ってますか?」


「なんだ?」


「リュー様って高校生らしいですよ?」


「へー、そーなんだ」


(な、なんか質問されたがそれっぽい言葉で誤魔化そう!)


「そして芸能事務所に所属してないらしいです」


「へー、知らなかったなぁ」


(よし!この方法なら質問の嵐を乗り切れるぞ!)


「そして、小学6年生の女の子と来年、結婚の約束を交わす約束をしているロリコンらしいよ?」


「俺はロリコンじゃねぇ!」


(あれは火口さんの妹の美海が俺を揶揄うために言った言葉だから!俺はロリコンじゃないから!)


「あれ?私はリュー様の話をしてたのに、なぜ汐留さんは慌てて否定してるんですか?」


「……………へー、リューくんって小学6年生の女の子と結婚の約束をしたんだ。なかなかの変態だな。後で通報しとくわ」


(あぶっねぇ!なんとか誤魔化せたか!?)


 そんなことを思っていると…


「ちょっと!凛くん!小学6年生の女の子と結婚の約束したの!?も、もしかして、凛くんってロリコンなの!?」


「それはヤバイよ、汐留君。小学6年生の女の子と結婚の約束するなんて……」


「だから俺じゃねぇ!リュー様の話をしてるだろうが!」


 なぜか、理央と先島さんが火口さんの発言に食いつく。


「だから凛くんに聞いてるんでしょ!?」


「うるせぇぇぇぇ!!俺に聞くんじゃねぇ!俺がリュー様の正体だってことが火口さんにバレるだろうが!」


「いや、今、自分でバラしたんだけど……」


「…………あっ」


 先島さんに指摘されて自分の愚かさに気づく。


(俺のアホぉぉぉぉ!!!!って思ったけど、理央や先島さんが、リュー様ロリコン疑惑を俺に問い詰めたのが悪い気がするんだけど!)


 そうなった原因は理央たちだと思いながら、俺は誤魔化すのを諦め、火口さんにいろいろと説明しようとすると…


「や、やっぱり、リュー様って汐留さんだったんだ…。ど、どうしよ!『リュー様カッコいい!』とかものすごく恥ずかしいこと、汐留さんに言ってる!き、聞こえてないとは思うけど、私は汐留さんに、か、カッコいい……って言ったことに……」


 1人で顔を赤くしながら、ぶつぶつ呟いている。


「あ、あのぉ……火口さん?」


「は、はい!」


「えーっと、実は俺がリュー様のコスプレをした男の正体なんだけど………ごめん!黙ってて!」


 俺は火口さんに頭を下げる。


「俺がリュー様の正体ってことがバレると、リュー様の漫画のファンを辞めるかもしれないって思ったから、火口さんには伝えなかったんだ!だから、誤魔化してた俺のことは嫌いになっても、リュー様が登場する作品は嫌いにならないでくれ!」


 リュー様が登場する作品は嫌いになってほしくなかったため、火口さんにお願いをする。


「だ、大丈夫だよ?汐留さん。わ、私はこれくらいのことでリュー様の漫画を嫌いになることはないから。も、もちろん、汐留さんのことも嫌いになったりはしないから……」


「あ、ありがと!火口さん!」


(よかったぁー!やっぱり火口さんは優しい女の子だよ!)


 俺はそんなことを思っていたため…


「ど、どうしよ……。私の好きな男の子が、好きなコスプレイヤーさんと同一人物だったなんて……。こ、これからどんな感じで汐留さんと接すればいいのかな?」


 との火口さんの呟きを聞き逃していた。




 あれから、リュー様と出会うことができたのに、火口さんのテンションは上がらず、学校の時のような状態となる。


(よほど俺が正体だったことにショックを受けてるんだろう……。ホントにごめんね、こんな陰キャがリュー様のコスプレをしてた男で……)


 心の中で謝る。


 火口さんの本来の目的である、リュー様と出会うことは達成できたため、そのまま解散の運びとなる。


 俺は家に帰り、夕食を食べていると、舞から「SNSで有名人だね、お兄」と、小言を言われた。


(今回、舞が前回みたいに怒らなかったな。俺の顔がさらなる全国デビューすることに対して注意しても『読モ』で広まるから、時間の無駄とか思ってるんだろう。まぁ、俺にとっては怒られなくて済んだから、ありがたいんだがな!)


 俺はそんなことを思いながら、寝る準備を終え、布団に潜る。


 すると、俺を芸能界にスカウトした三神さんから電話がきた。


『もしもし、汐留です』


『汐留さん。お時間大丈夫ですか?』


『はい、大丈夫です!』


『なら、私の愚痴を聞いてくれますか?』


『な、なにがあったかは知りませんが、聞くだけなら……』


『ありがとうございます。今日ですね、私は汐留さんの『読モ』了承の件を嬉々として上司に説明したんですよ。そしたら『君、彼に結婚の申し込みをしたらしいね。高校生に手を出すのはやめた方がいいよ?』って言われたんです。はぁ……仕事辞めよ』


(これ、絶対先生の掲示板のせいだろ!あの先生、三神さんにものすごい迷惑かけてるんだけど!)


 俺はそんなことを思った。

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