第117話 リュー様がバカなことを言ったら、とりあえず全て肯定

前回のあらすじっ!

 やっぱり『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』には『SNSはじめました』という意味はないらしい……。どうやら俺は、店長と店員に騙されました。以上っ!




 店長がSNSの件を説明し、俺と店長は裏に戻る。


 そこには先程、俺に嘘をついた店員がいた。


「お疲れ様です!店長!」


「いえいえ!無事に説明できてよかったよ!あ、リュー様が何かバカなこと言ってませんでしたか?」


「はい!『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』って言葉に、『SNSはじめました』って意味があるのか聞かれましたが、店長の教え通り『リュー様がバカなことを言ったら、とりあえず全て肯定』を遂行するため、とりあえずその言葉に対して肯定し、誤魔化しました!」


「うむ!よくやってくれました!やはり、君にお願いして正解でした!」


「ありがとうございます!」


「……………………」


 どうやら、あの店員も店長の言いなりらしい。


「なら、俺があの言葉を言う必要はなかったと思うのですが……」


「そんなことないですよ!だってそっちの方が面白そうなので!」


「そんなことで変な言葉を言わせるな!」


(もう、店長の言葉を信じない方がいいのでは……)


 俺はそんなことを思った。





 リュー様のコスプレから制服に着替え終わると、店長から「時々この店に遊びに来てくださいね!」と言われたが、適当に返答する。


(この店にさえ来なければコスプレすることなんかないからな!俺はもう2度とこの店に遊びに来ないぜ!)


 そう思いながら店長との会話を切り上げて、理央たちの下へと戻る。


 その時…


「あー、これは『もう2度とこの店に来ることはないな』とか思ってるなぁ。ま、私は汐留さんの連絡先を持ってるので、なんの問題もないかな」


 との、店長の呟きを俺は聞き逃していた。





 あれから俺は理央たちと合流して、店長の店を出る。


「汐留さん!さっきリュー様が現れたんですよ!見ましたか!?」


 火口さんのテンションはMAXです。


「あ、あぁ。見たぞ。相変わらず変な言葉を叫んでたな」


(いやマジで!客観的に見たら変なやつだろ!いきなり現れて『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』って叫び出すんだぜ?通報ものだろ!)


「あれは変な言葉じゃないです!あれは4巻のリュー様の名言の一つで、私も初めて読んだ時は鳥肌が立つくらいでした!あのシーンには……」


「わかった!その言葉が素晴らしい言葉ということはわかったから!」


「あ、そうですか!?なら……」


「あ!火口さん!一つ聞きたいことがあったんだ!」


「はい?なんでしょうか?」


 このまま火口さんのペースで話されると、永遠に話が終わりそうにないので、俺は気になっていたことを火口さんに聞く。


「リュー様に直接会っただろ?どんな人だった?」


 俺は火口さんがリュー様のことを幻滅したか気になっていた。


(俺がリュー様として火口さんに会った時、火口さんから幻滅されるよう、わざと嫌われるような対応をしたが、その効果はあったのか!?)


「はい!あまり話さず、素っ気ない対応でしたが、すごくよかったです!」


 キラキラした目で話す火口さん。


(くそっ!やっぱりダメだったのか!)


「それで、話してて私が1番グッときたところは、リュー様の右手の甲に傷を発見して、私がこうやって絆創膏貼った時……」


 そう言いながら俺の右手を握り、実際に絆創膏を貼る動作をする。


 その時…


「ん?汐留さんも右手の甲に怪我してるね。ってあれ?汐留さん、いつ怪我したの?」


「!?」


(ヤバい!同じ場所に怪我をしてることからリュー様に繋がる危険性が!ってそんなことないか。たまたま同じ場所に怪我することくらいあるよな)


 そう思い、俺は動揺を隠して平常心で答える。


「あ、あぁ。さっき壁で怪我をしたんだ」


「へー!汐留さんって絆創膏持ち歩いてるんだ!」


「あ、あぁ。女子力の塊だからな」


(そんな塊持ってねぇけど!とりあえずどんな方法でもいいから、誤魔化すしかない!)


「かわいい熊さんの絆創膏ですね!」


「だ、だろ?結構気に入ってるんだ」


 そう言って俺は誤魔化すが、火口さんは俺に貼ってある絆創膏を凝視して…


「あれ?これ、私がリュー様にあげた絆創膏と同じものだね」


「そ、そうなのか?た、たまたまだろ」


「うーん……よく見ると背格好も似てる……。しかも、私があげた絆創膏ってこの辺りで売ってないもの……」


(ヤ、ヤバい!リューくんの正体が俺だという結論に辿りつこうとしている!)


「ねぇ汐留さん。もしかして汐留さんってリュー様?」


(ギャァァァァ!!バレた!?これはバレてもうた!?いや、まだ半信半疑か!なら、どうやって誤魔化すのが正解だ!?『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』って叫べば誤魔化せるかな!?)


 一人でパニックになる俺であった。

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