第116話 『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』

前回のあらすじっ!

 火口さんにリュー様の格好をして会いました!めんどくさそうに対応したから、リュー様のコスプレをした男に幻滅しただろう!以上っ!




 火口さんに会い、俺と店長は本来の目的を遂行する。


「火口さんともお話が出来ましたので、さっそく、コスプレする日を、SNSでお知らせする旨を、ここにいらっしゃるお客様に伝えましょう!」


「了解です!」


「では、作戦会議に移ります!この後、私がリュー様のコスプレをした男性がこの場にいることを伝えます!」


(お!その言葉で俺に注目してもらうんだな)


「その言葉を聞いたら、君は表へ出てきて下さい!」


「わかりました!」


「そして、君はこう叫ぶのです!」


(なるほど、このタイミングで俺は、コスプレする日を、SNSでお知らせする旨を伝えるんだな)


「『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』と!」


「アホかぁぁぁぁ!!!!登場して最初の言葉がそれって頭おかしいだろ!このタイミングで、伝えるんじゃないんかよ!?」


「…………………??」


「相変わらず俺の言葉が理解できねぇな!」


(どんだけ都合のいい頭してんだよ!)


「まぁまぁ!落ち着いてください!この言葉の真の意味は『SNSはじめました』って意味なんですよ!」


「知るかぁぁぁ!!!」


「えっ!知らなかったんですか!?それなら試しに言ってみるのもアリだと思いますよ!」


「ナシだわ!『まぁ、試してみてもいいかな?』って思えるレベルのセリフじゃないから!」


「はいはい、そんなこと言わずにやりますよ!大丈夫です!必ずみんなにSNSの件は伝わりますから!」


「あっ!ちょっと!」


(なんか、前にもこんな展開を繰り広げた気がする!)


 そんなことを思いながら、俺は強引に表へと連れていかれた。




 俺は店長に連れられて、表にいつでも出れるように待機させられてる。


 他の店員さんに見張られて……。しかも、前回と同じ女の子に見張られてる。


 俺は、店員さんに一つ質問をする。


「なぁ『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』って言葉に『SNSはじめました』って意味があると思う?」


「え?そんな意味あるわけ………はっ!そ、そうなんです!その言葉には『SNSはじめました』って意味があるんです!」


「まじかぁ……」


「はい!ちなみにその言葉は『SNSはじめました』だけでなく『冷やし中華はじめました』って意味もあります!」


「冷やし中華はいらねぇよ!俺、冷やし中華を宣伝しに来たわけじゃないから!てか、そんな意味がほんとにあるんかよ!?」


「えっ!知らないんですか!?最近、飲食店の旗で『ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!』って書いてる店が増えてるんですよ!?」


「初めて聞いたわ!」


(どこにそんな店があるんだよ!そんな店があったら入店なんかせんわ!)


「どうやら『SNSはじめました』というのぼりと、『冷やし中華はじめました』というのぼりを2つ準備しなくても、1つののぼりで意味が通じる、この言葉が結構人気らしいです!」


「そんな豆知識いらねぇよ!」


 店員さんとそんなやりとりをしていると…


「なんと!今、巷を賑わせてるリュー様のコスプレをした男性がこの場にいます!それでは表へと出てきていただきましょう!」


 店長の言葉が聞こえてきた。


「さぁ!店長さんがお呼びです!はやく行かないと店長さんに迷惑がかかりますよ!?」


「くっ!言うしかないのか!」


「頑張ってくださいねー!」


 俺は店員さんの声を聞きながら、表へと歩いた。




 俺が店に現れると…


「「「「キャァァァァァ!!!!」」」」


 悲鳴が聞こえてきました。


(もういいよ!悲鳴は!悲鳴あげるくらいなら帰ってくれないかな!?)


「今日はリュー様が、皆様に言いたいことがあるらしいです!」


 そう言って、店長は俺にウインクをしてくる。


(なるほど、このタイミングか。店員さんも『SNSはじめました』って意味があるって言ってたからな。ここは言うしかない!)


 俺はそう決意して…


「ここは俺に任せて先に行けぇぇぇぇ!!!!」


 大きな声で言う。


「「「「キャァァァァァァァァ!!!!」」」」


 そして登場よりも大きな悲鳴をいただく。


(もういいよ悲鳴は……)


 俺は相変わらずの悲鳴に落胆したが、周りの人たちは……


「ヤ、ヤバい!あれは!“俺執事”の第4巻で『お嬢様が悪い人に捕まってしまった時、他の執事にお願いするシーン!』それを選択するとは…………グッドです!」


「カ、カッコ良すぎる!しかも第4巻のあの名シーンのセリフ!生で聴けるなんて……死んでもいい……」


「あれから、毎日リュー様に会うために、この店に開店から閉店時間まで長居し続けてるが、その甲斐があったよ!この動画も全国のリュー様ファンに拡散しなければっ!」


 そんなことをどこかの人たちが話していたが、叫び声によりかき消されていった。




 周りの人たちの落ち着いた頃を見計らって店長が…


「皆様!今日のリュー様はいかがでしたか?カッコ良かったですね!ここで、私から重大発表があります!いつリュー様が現れるか分からず、長居されてる方が現在、たくさんいらっしゃいます。そこで、今後、リュー様が現れる際は事前にSNSで連絡させていただきます!よろしくお願い致します!」


 そう言って店長は頭を下げる。


(店長が伝えるんかい!やっぱりあのセリフで伝わらねぇじゃねぇか!)


 店長に、また騙されたことを理解した俺だった

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