第115話 『全人類リュー様計画』
前回のあらすじっ!
俺ではどうやら火口さんを落ち着かせることはできないらしいので、店長に渋々お願いしたところ。以上っ!
俺が店長にお願いすると、嬉々として火口さんの下へ向かう。
今もなお「なんで『全人類リュー様計画』が理解できないんだろう?リュー様の良さが分かってないのかな?」とか言ってる。
(さすが、この状態の火口さん。言ってることが理解できねぇ……)
「ねぇ、火口さん!私も『全人類リュー様計画』には賛成です!」
「ホ、ホントですか!?店長さん!?」
「はい!ですが、ここでこの計画のことを皆さまに話すのは控えた方がいいです。もしかしたら、リュー様の迷惑になってしまうかもしれません」
「た、たしかに!リュー様の許可なく、みんなにお話するわけにはいきませんね!」
「その通りです!なので、皆さんには内緒ですが、コッソリと今から本物のリュー様に会ってみませんか?」
「えっ!お、お会いすることができるのですか!?」
「はい!あ、今日、リュー様が来られてますが、皆様にはナイショでサプライズ登場する予定ですので、お静かにお願いします。周りの人にリュー様が来ていることがバレれば、サプライズができなくなり、リュー様が帰ってしまう可能性がありますので!」
“コクコク”と、頷く火口さん。
「そろそろリュー様が来られてコスプレの準備をされると思いますので、準備ができたらコッソリと火口さんと会うことができるか相談してみます!その時に『全人類リュー様計画』のことを話して実行してもいいか聞いてみてください!」
“コクコク”と、頷く火口さん。
「なので、このまま、リュー様が今から登場することを悟られないようにお願いします!」
“ビシッ!”と、敬礼ポーズをする火口さん。
「…………………」
(ビックリするくらい静かになったんだが!?)
店長は火口さんの下を離れ、俺に…
「どうですか!?これで、今日はコスプレしてくれますね!?あ、ちなみに、火口さんが言ってた『全人類リュー様計画』は、リュー様が『ダメ!』と言ったら辞めるようにも仕向けてきました!」
「…………ありがとうございます」
(この店長、普通に頭いいよな!?俺のミスまでカバーしてくれるし!……まぁ、普段の行いからは一切感じないがな!)
俺は本気でそう思った。
店長は火口さんを大人しくするだけに留まらず『全人類リュー様計画』のフォローまでしてくれたため、店の裏にある部屋で、約束通り、リュー様のコスプレをする。
「準備できましたかー!?」
「あ、はい!」
俺は返事をして部屋を出る。
「はい!今回もバッチリですね!」
「いつもお世辞ありがとうございます」
「お世辞ではないのですが……言っても無駄ですね。では!さっそくですが、火口さんを呼びます。準備はできてますか!?」
「はい!俺だとバレないように、接する予定なので大丈夫です!」
「りょーかいしました!」
そう返事をして、店長は火口さんを呼びに行く。
少し待つと、緊張した顔で火口さんが俺の前にやってくる。
「リュー様、こちらが先ほど話しました火口さんです」
店長が俺に火口さんを紹介する。
俺は、火口さんにリュー様の正体が『汐留凛』だということに気付かれないよう返答する。
「なに?忙しいから手短にして」
俺はボロが出ないよう、短文で喋る素っ気ない人を演じることにした。
「あ、はい!な、なぜ芸能界デビューされないのですか!?」
「興味ないから」
「で、でも!私も他の方たちも、デビューされるのを心待ちにしております!機会があれば、是非デビューしてください!」
「はいはい。で、他には?」
「あ!あと1つだけお願いします!」
「なに?」
「は、はい!私『全人類リュー様計画』を計画してるんです!実行した方がよろしいでしょうか!?」
「そんなことはしなくていい」
「わ、分かりました!この計画は中止に……あ!リュー様、右手の甲から血が出てます!」
「ん?あぁ、さっき机の角でケガしただけ。君が心配することじゃない」
「ダメです!血が少し出てるじゃないですか!ちょっと待ってくださいね!」
火口さんは持っていた小さなカバンから、可愛らしい熊がプリントされている絆創膏取り出す。そして、俺の手を握り、右手の甲に貼ってくれる。
「あ、ありがと」
俺は火口さんから手を握られ、照れながらの返答となってしまう。
「いえいえ!すみません、お忙しいところ、お時間いただきありがとうございました!今後も頑張ってください!応援してます!」
火口さんはそう言って、店長と一緒に店の方へと出ていった。
(ふぅ、なんとかなったかな?この対応なら、コスプレしたリュー様に幻滅するだろう!)
そんな理由で、あえて素っ気ない態度を取ったのだが……
店の裏手から出た火口さんは…
「や、ヤバい!リュー様の格好で素っ気ない対応……。すごくよかった!癖になりそう!しかも、絆創膏貼った時の照れた表情……。ますます虜になってしまったよ!また、リュー様に会うことが出来るよう、店長さんにお願いしないと!」
火口さんをさらに虜にするだけだった。
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