第114話 だよねー!わかるわかるー!

前回のあらすじっ!

 店長は俺の言葉を理解できないらしい……。以上っ!




 どうやら、俺のリューくんコスプレが酷すぎて、店長の店に迷惑をかけていることがわかったが…


「SNSにアップして、俺について聞いてくる人たちの対応をなくすことはわかりました。なら、今回SNSに、活動停止を発表するのはどうですか?」


「あ、それはナシです。私の店にお客様が来なくなりますので!」


「ここにきて店長としての仕事をするんかよ!」


 久々に店長として仕事をしているところを見る。


(てか、俺たちと話してていいのか!?周り見てみろよ!?火口さんが手当たり次第、店員さんの行動を阻害してるから、レジに行列できてるぞ!?少しは手伝ってやれよ!)


 火口さんを止めることは無理なので放置する俺たち。


「汐留さんがリュー様のコスプレをしてから売上が何倍にも跳ね上がってるんです!リュー様が現れるまで暇なので、この店の服を眺めていたら欲しくなってご購入される方が急増してるんです!なので、コスプレ活動停止は反対します!」


「嫌です!俺はこれ以上、俺の顔が全国の人たちに広まるのはマズイです!」


 こればかりは俺も曲げることができないため、店長の意見に賛同しない。


「いいでしょう。汐留さんが頷かず、挙げ句の果てに、リュー様としての活動を停止されると言うのなら、私も秘密兵器を出します!」


 そう自信満々に店長が言う。


「うっ!そ、それはなんでしょうか?」


「それはですね……」


 そう言って、店長はなぜか火口さんの下へと移動する。


 そして耳元で何かを囁くと、火口さんがものすごいスピードで俺の下に走ってきた。


「汐留さん汐留さん!リュー様をコスプレする方の魅力がわからないらしいですね!?私が教えてあげますよ!あの方はですね、なんと言っても人を惹きつけるオーラがあります!私もSNSで回ってきたのを確認した時、一瞬で惹きつけられました!そこから私はリュー様に会って一言言いたいことができたんです!あ!私の妹の美海も同じ意見らしくて、美海もその男性には言いたいことがあるらしく……」


(秘密兵器って火口さんかよ!いや、ある意味兵器だよ!マシンガントークが俺に炸裂してるからな!)


 火口さんのトークに俺や理央、先島さんが引いている。


「さぁ!どうですか!私の秘密兵器は!火口さんから解放されたいのなら、私の提案を受け入れるしかないです!」


「くっ!」


 俺は今の火口さんを見る。


 未だに何か話しており、興奮状態である。


(だが、店長が火口さんを落ち着かせる代わりに、俺にコスプレの提案をしてきた。つまり、俺が火口さんを落ち着かせることができれば、店長の秘密兵器は終了する!)


「ふっ!店長、失敗したな!俺が火口さんを落ち着かせることができれば、店長の手札はなくなる!今から、火口さんが落ち着くところを、そこで見ておくんだな!」


 俺は店長に向かって高らかに言い、火口さんの下へ向かう。


(さっきから何を言っているのかは一切理解できないが、リューくんを褒めてるんだろう!ならば!俺のとるべき作戦は一つ!)


「だよねー!わかるわかるー!」


(『だよねー!わかるわかるー!作戦』開始っ!)



 説明しよう!


『だよねー!わかるわかるー!作戦』とは、ひたすら同意し「汐留さんにも伝わりましたか!私の話は終わりです!」と、火口さんが言うまで辛抱強く、適当に同意する作戦だ!



「ですよね!汐留さんもようやく理解してくれましたか!」


「だよねー!わかるわかるー!」


「あのリュー様は他のどのコスプレイヤーさんとも違うんです!」


「だよねー!わかるわかるー!」


「SNSで皆さんが拡散したくなる気持ちもわかります!」


「だよねー!わかるわかるー!」


「私、思うんです!全世界の人たちが、みんなリュー様になれば、争いなんて起こらないと思うんです!」


「だよねー!わかるわかるー!」


(いや、理解できねぇよ!気持ち悪いわ!そんな世界!)


「お!汐留さんも理解してくれますか!やっぱり『全人類リュー様計画』は遂行した方が良さそうですね!」


「だよねー!わかるわかるー!……ってわかるかぁぁぁぁ!!!!」


 無理でした。


(なに!?『全人類リュー様計画』って!?さすがに同意できんわ!)


「えー!汐留さんならわかってくれると思ったのにー!」


 等々、何か俺に言っているが無視する。


 俺は渋々、店長にお願いする。


「店長、俺には無理でした。火口さん落ち着かせれるなら、今日くらいはコスプレします。なので、はやく『全人類リュー様計画』とか、アホなこと言ってる火口さんを落ち着かせてください。俺が変なことに同意したのが悪いです。今すぐ止めないと、この辺りの人たちに、計画のことペラペラ話しそうです」


「わっかりましたー!」


 そう言って笑顔で火口さんの下へと向かう店長であった。


 その様子を見ていた理央と先島さんは……


「ねぇ、先島さん。凛くんは、何かよくわからないことをしてたけど、あの何かよくわからない方法で火口さんが落ち着くって本気で思ったのかな?」


「うーん、汐留君のことだから、本気でそう思ったんじゃないかな?……バカだから」


「だよね……。バカだから仕方ないかなぁ」


(このやりとり教室でもされたんだけど!じゃあ、なんかアドバイスくれよ!)


 俺は2人にそう言いたかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る